notobira_部屋_01

超短編小説 001

『ノトビラ』

思い描いた世界に行ける扉が目の前に現れた。
6帖一間の狭い部屋にドンと真ん中に現れた。

目線の高さに「ノトビラ」と書いてある。
その下に「あなたが思い描いた世界がこの扉の向こうにあります、
開けたら最後もう戻っては来れません。」と説明がある。

邪魔だ。押してもびくともしない。
異次元すぎるが、そんなことよりも
引きこもり歴2年の僕の部屋に(城に)土足で上がり込んだこの扉が
とにかく邪魔だ。

あと五分後に毎日欠かさず見ている押しの「生配信」が始まってしまう。
僕の「特等席」は扉が邪魔して背もたれが回らない、座れない。

僕は決心して扉の前に立ってドアノブを握る。
心に扉の向こうの世界を想像して、勢いよく扉を開けた。

そして、「特等席」に座り、
押しの「生配信」の開始と同時に「おかえりなさ~~~い♡」とチャットをすることができた。

最高の幸福感を味わいながら、
「部屋に扉の無い世界」を思い描いて扉を開けた自分の機転の良さに悦に入った。

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《最後まで読んで下さり有難うございます。》

僕の行動原理はネガティブなものが多く、だからアウトプットする物も暗いものが多いいです。それでも「いいね」やコメントを頂けるだけで幸せです。力になります。本当に有難うございます。