超短編小説 017
『後ずさり』
ここはふたりがさようならをするいつもの場所
信号を待つ間に気持ちを整理する場所
横断歩道の向こう側にはわたしの知らない
あなたの場所があること
離れてしまえば、次また会える保証は
どこにもないこと
歩いて行くあなたの背中を見れば
胸が苦しくなること
別れた瞬間に、もう会いたくなっていること
青信号が点滅すると走り出して
あなたにしがみつきたくなること
そんなことはできずに、信号が赤になり
魂が抜けてしまうこと
全てあたりまえのこと
「青になったら渡る」ってことと同じくらい
あたりまえのことなのに
もうずっと、一歩も先へは進めない
体に残るあなたの温もりを抱きしめながら
わたしはひとりで後ずさり
《最後まで読んで下さり有難うございます。》
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