横断歩道01

超短編小説 017

『後ずさり』

ここはふたりがさようならをするいつもの場所
信号を待つ間に気持ちを整理する場所

横断歩道の向こう側にはわたしの知らない
あなたの場所があること

離れてしまえば、次また会える保証は
どこにもないこと

歩いて行くあなたの背中を見れば
胸が苦しくなること

別れた瞬間に、もう会いたくなっていること

青信号が点滅すると走り出して
あなたにしがみつきたくなること

そんなことはできずに、信号が赤になり
魂が抜けてしまうこと

全てあたりまえのこと

「青になったら渡る」ってことと同じくらい
あたりまえのことなのに

もうずっと、一歩も先へは進めない

体に残るあなたの温もりを抱きしめながら
わたしはひとりで後ずさり

《最後まで読んで下さり有難うございます。》
最新作はこちらでどうぞ ➡ https://ameblo.jp/notobira

僕の行動原理はネガティブなものが多く、だからアウトプットする物も暗いものが多いいです。それでも「いいね」やコメントを頂けるだけで幸せです。力になります。本当に有難うございます。