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塞の神の手伝いに行った感想

 住宅の半分は空き家、”市”単位ではなく、集落でみると”限界”が付く地域。年始の催しである塞の神の設置も大変だ、という声が上がり寺泊で活動している「波音」にお声がかかりました。正確には、何かできることがないか押し掛けたというほうが正解に近いですが。

山田地域について

 マツコ・デラックスが出演している「マツコの知らない世界」で寺泊山田地域のレンジでチンできる「曲げわっぱ」が紹介されたことでお店を出している「足立茂久商店」が知れ渡りました。曲げわっぱの注文がひっきりなしで1年待ちという話もあります。ネットショップを見てみると再入荷待ちのところもチラホラ。新潟の伝統工芸を紹介する「タクミクラフト」にも取り上げられていて新潟市江南区にある「北方文化博物館」にイベント参加で出店していたり、新潟市中央区にあるギャラリー「新潟絵屋」でも曲げわっぱが販売されたりギャラリーで展示が開催されたりしています。

 山田地区はとなりの出雲崎に一番近い集落でもあります。寺泊でも一番端っこにある地域。昔は駄菓子屋や宿泊施設なんかもあったりしたようですが…今ではもうなくなってしまいました。
 あとはちょっとした砂浜、消波ブロックの内海部にある遊水地があります。こちらは知る人ぞ知る、というところです。お店もなく浜茶屋もないのでお客さんは来ない代わりに砂浜は比較的きれいで川が近くにないこともあり水質もよいです。消波ブロックに囲まれているので波も穏やか。釣りをするにも適しています。

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塞の神建立

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 うまく意思疎通ができておらず、集落の方々は竹を切りにもう出てしまっていたようでした。とりあえず塞の神会場はわかったのでその近くで待つことに。作業がはじまると、集落の方々の動きはテキパキとされていました。勝手知ったるというやつでしょう。

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 我々は、怪我をするから危ない、ということで、周りにカヤを敷き詰める作業をしました。数年前まではカヤでなく藁で囲っていたようなのですが、すぐに燃え尽きてしまうということでカヤに代わりました。去年の10月あたりに小屋の2階に溜め込んでいたようです。カヤまで刈に行くのかな、と当初思っていたのでちょっと安心しました。カヤ狩りはなかなか大変です。

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 小さい集落での塞の神なので規模や高さもそこそこなのだろうなあと高を括っていましたが、出来あがってみれば立派な塞の神です。ほかの地域だと前日に準備を整えておくのですが、こちらでは当日に竹を取りに行き櫓を組みます。なので点火は午後からです。たいがいは9時とか10時に点火しスルメやお餅を焼いて無病息災を願いお昼に食べるのが一般的と思っておりました。地域によっても差があるのは面白いですね。寺泊内でも知っている限りで7か所ありますが(実際はもう何か所かあると思います。)ちょっとずつ作法が違っています。
 海岸、砂浜での塞の神も珍しいと感じます。だいたいは田んぼの近くとか近くに家のない空き地などに櫓を立てているようです。

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 作業自体は2時間ほどで終わりました。午前中ずっとかかるかと思っていましたがそんなことはなく。集落の方々の「いつものこと」のような流れ作業で出来上がっていきました。

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 点火は午後から。塞の神を立て終わってから一時休憩し再集合。

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 火が付くと一気に燃えていきました。
 「龍が登っていくみたいに燃えないとな」な~んて言っていたので、なんだかんだいってこの塞の神にはコダワリがあるのです。大切にしていきたいのだなと感じました。

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 とりあえず櫓を組んで歳神様を焚き上げればよい、最低限それさえクリアすればよいところに注がれている個人的な思い入れや執念(とは言い過ぎか)に私はとても興味を抱いてしまうのです。

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 アルミホイルがまかれているのは中に酒が入っていて煤が入らないようにしている為です。「かっぽ酒」と言うらしい。モチよりスルメより、これがメインイベントなところがあるようです。私はハンドルキーパーでしたので味わうことができませんでしたが、甘みがますようで、今度個人的にやってみようと思いました。クヤシイ!
 このあと集落の方々だけで打ち上げと称した御神酒の瓶を綺麗にする会(飲み会)もあるようなのでそういう楽しみもないとな、と思ったり。酒は命の水なのはどこも同じなのだなあ。

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鎮火

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 あらかた皆さんのモチやらスルメが焼きあがると、散らかった燃えがらの周辺から砂をかけて鎮火させていきました。

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 慣れているなあと思うのは、こういう細かいところ、些細な、見逃されてしまうようなちょっとした作業に丁寧さや経験の積み重ねを感じます。周辺から砂をかけていくことで万が一のまた火が付いた時の延焼を防ぐ目的もあるのでしょう。本日は風もそこまで強く吹いていないので砂を完全にかけることはせずこのまま解散となりました。

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 初めて立てるところからの参加はとても興味深いことばかりでした。来年は竹を切るところから参加してみたい。そうなるともう少し早めに集合する必要があるとのこと。聞けば5時とか6時とかいうレベルではないので一安心。最初はつっけんどんだった集落の方も作業を通じて打ち解けてくださっていました。なんだかんだで一緒に作業をすると打ち解けていくものですね。最初は竹に近づくことが禁止事項として言われていました。何かで押さえつけているわけではない立てた竹が、倒れてくる危険性もあるからです。どちらかと言えば、我々が怪我をしないようにするための措置なのでした。

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 お子様たちはずーっと走り続けて元気だなあと見ていました。気温が低いところでしたが、一度火が付けば暖かく、近くにまで近寄れないくらい。モチやスルメもおいしかった。お酒は残念ながら、でしたが・・・。
 来年は材料を切り出すところから。モチやスルメがなおさらおいしくなることでしょう。

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