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Accendere第四回公演「粛々と運針」を観てきた感想

5月1日の回を観に行きました。

「運針」とは並縫い、ぐし縫いの事。
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 スタジオに入ると、雑な絵で申し訳ないですが、こんな感じでした。
手前の一段目の両側には布と針と針通しと糸、運針の時に使う指貫がおいてありました。2段目の左にはテーブルとイスが、なんとなくフローリングの部屋なのかなと言う装い。右には茶の間によくあるテーブルがあり、こちらは畳のある部屋でちょっと年数がたっていそう。そんな印象を受けました。
 その中心は線が引いてあり、それがバッテンで縫いつけられています。
 舞台の周囲には上からヨレタ糸が下げられていました。
 と、言うようなセットでした。

 2017年に演じられたもののリメイクのようで、私はこちらを観ていませんが、サイト内の画像を見ると舞台が若干の変更が加えられているようです。

 ・子供は作らないという約束で結婚した「夫婦」に妊娠の疑いが出てきた
 ・見舞いに来た「兄弟」と膵臓ガンを宣告され尊厳死を選択したい母
 この別々の二つのストーリが交互に、また、同時に進行していました。

 その手前の段に腰掛け、粛々と運針を続ける関係性のわからない「二人」。

 関西弁で執筆されている台本が「新潟弁」に修正されていることもあり、なんだか身近なことのように感じました。題材も、自分自身にも起こりうる、起こったことでもあったのでさらに感情移入して観てしまいました。
 その間にも運針は続く。

 夫婦と兄弟、交互にライトアップされまるで布の表から並縫いを観ているようにお話が進んでいきました。
 別々の話だったはずが途中ごちゃまぜになり、各々のわだかまりがもう片方のしこりを溶解させたり沸き立たせたり。手前二人の針子の関係性が明らかになるにつれ、なぜ糸を紡ぎ続けているか、傍観者で無関係だと思っていた会話が実は当事者そのものの切実さがあると気づかされた時、くさびをうたれたような息苦しさを感じました。

 演者さんたちもとても自然にそこにいたように思いました。とても感情的でとても冷静で、悟ったような焦っているような。

 生と死を扱うお話。
 針子の運針が遺伝子の二重らせんのように思えてきました。夫婦と兄弟、そして針子の二人。無関係ではなくお互いに影響を及ぼし合う間柄なのだなと感じました。夫婦と兄弟が途中で同じ空間にいるような状況になったときもありましたが、重なり合うことはなく、元の空間に戻っていきました。ただすこし、お互いに影響を与え合っていました。

 劇後感は、スッキリ!というわけでもなく、ただ起こりうるであろう身近な問題に対して他人ごとではなく自分事として考えるところが多かったなと感じます。「面白かった」と消費することができないものでした。
 しかし、「観に行ってよかった」と自信を持って言えます。
 次の公演も楽しみです。

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