見出し画像

RIP SLYMEと私

RIP SLYMEというヒップホップグループがいる。
RYO-Z、ILMARI、PES、SUという4人のMC(ラッパー)と、大半の曲のトラックメイクを手がけるDJ FUMIYAからなる5人組だ。「RIP」はオリジナルメンバーであるRYO-Z、ILMARI、PESの頭文字からとったものだが、後から加入した4人目のラッパーの名前がSUで、偶然にも4文字目も一致しているのだ。一致しているのだ!
2018年から活動休止中だが、個人的にこのグループには人生を狂わされたと思っているので曲紹介がてら思い出を書き連ねてみようと思い立った。

RIP SLYMEといえば世間的には、『One』と『楽園ベイベー』だろう。
「それぞれひとつのLife」と「常夏の楽園ベイベー」である。
その認識は大正解だ。日本語ラップを20年ほど聴き続けている僕にとっても、この2曲が大名曲であることは間違いない。

もしかしたらラップミュージック好きかもしれない、というか自分にフィットしてるかもしれない、と思ってから飽きることなく聴き続けてきた。そのきっかけをくれたのがRIP SLYMEだ。10代の頃には、まさか30歳を越えても聴き続けているとは思わなかった。

ということでRIP SLYMEのお気に入り曲を今から20曲紹介する。普通は好きなアーティストの曲って5曲とか10曲紹介するぐらいだと思うんだ。あとnoteってそんなに長い文章を書く場ではないと思うんだ。馬鹿野郎、足りねぇよ。あとRIP SLYMEの曲紹介してる記事をいくつか見たけど、シングル曲がほとんどなんだ。ふざけんじゃねぇ。というわけでちょっと長くなります。6,000文字だ。
発売順になっていると思うけど、間違ってたらすいません。(長年のファンが言うこととは思えない)

1. 白日

白日といえば、King Gnuではなくこれだ。インディーズ時代の曲。SUが加入する前なのでまだMCは3人だし、DJ FUMIYAが本格始動する前でトラックはPESが作っている。RIP SLYMEマニアが見ているとアレなので一応書いておくが、上の動画の白日はALBUM VERSION。

なんだか最近「チル」という単語と概念が一般的になってきたようだが、もともとヒップホップ界隈ではずっと使われていたものだ。概念としてはもっと危ないものだけど。「ディスる」という言葉が市民権を得たときの感じと似ている。
この曲は日本語ラップ史に残るチル曲のひとつで、かのBUDDHA BRANDのDEV LARGE氏もトラックをベタ褒めしていた。トラックだけをね…

個人的にはこの曲のPESのラップが好みで、
「無いなら無いでなんもしないのはもったいないからまず」
の部分はどう頑張っても舌が回らない。

MCが3人時代の曲ということもあってメジャーデビュー後はライブでの披露機会も限られたが、もっと世の中に知られて欲しい1曲。収録されているアルバム『talkin' cheap』も名盤だ。

2. UNDERLINE NO.5

これまたインディーズ時代の曲。なんだけど、この曲については後年のライブでも披露される機会が多かった。歌詞はそのままだけどトラックは原型をとどめてなくて、とにかく踊れる曲としての役割を最後まで全うしていた。
色んなダンスミュージックからサンプリングをしててライブのたびにトラックが違って印象も違うが、オリジナルのトラックもやはり好き。

シングルでも発売されていたけどちゃんと聴けたのはインディーズベスト『YAPPARIP』を買ってから。ほぼ聴いたことある曲で埋められたベスト盤を買うのは、金が無い学生にはかなり勇気のいる行為だった。

3. &&&

マイナーすぎてなんか音ゲーのプレイ動画しかなくて、いらない音がいっぱい混じってる。悔しい。

これもメジャーデビュー前の曲。『マタ逢ウ日マデ』というシングルのカップリングで、とりとめない日常の風景を曲にしている。これは今も昔もRIP SLYMEにしかできない芸風だと思う。

4. STEPPER'S DELIGHT

メジャーデビューのシングル曲。ただしデビュー時点でRIP SLYMEの活動をリアルタイムでは追えていなくて、この曲を知ったのも『One』の後だった。

メジャーデビュー曲のサビの最後の1行が「でも基本はリズムキープ」なんてことあるかね。トラックも同じタイミングで抜きが入っていて、ヒップホップ一辺倒ではない独特の緩さをすでに醸し出しているところはRIP SLYMEさすがだなと思う。

このライブ映像も繰り返しDVDで見ていた。最後にインスタントカメラで写真撮りながら退場するんだよな。PESが「写真撮るぜ!」って言いながら。誰が分かるんだよこんな話。

5. 運命共同体

「たんと吸い込んだブラント」なんてフレーズをメジャーで歌っていいものなのか。このライブ映像では曲途中のブレイクが音源とは変わってて長くなっており、FUMIYAのスクラッチとRYO-Zのメンバー紹介が入るんだけど、こんなに尺ぴったりかっこよく収まることってありますか。というぐらいかっこよくなってる。MC力高いぜ。

6. One

RIP SLYMEとの出会いは、超ミーハーに『One』だった。地元のレンタルCD屋で、レンタル落ちのシングルを300円とかで買ったのを覚えている。当時は中学生で、何しろ金が無かったのだ。(金無い話ばっかり)
レンタル落ちなのでもちろん世間的なブームからは少し遅れての遭遇となるのだが、この曲との出会いが日本語ラップ沼にハマるきっかけのひとつとなったのは間違いない。これまた当時ひたすら聴いていたSteady&Co.のメンバーの一人がRIP SLYMEの人らしい、という情報から手にしたと記憶している。

後になってから聴くと、メジャーでのシングル3曲目にしてこれまでの路線とは違う方向に舵を切ってきたなという印象。オトナの圧力なのか分からないけど、結果的には成功を収めたしその後の曲の幅を広げることにもなったんじゃないかと思う。
トラックはFUMIYAでなくPES製。グループ内にサブのトラックメイカーがいる感じもRIP SLYMEの好きなところだ。

このライブではSUが持参したヘッドフォンをイヤモニに使っているけど、後のインタビューですごくやりづらかったと語っていた。だろうな!

7. Today

RIP SLYMEが好きという人で、この曲をフェイバリットに挙げない人は偽物だと思ってほしい。
Oneのカップリングで、これまたPESトラック。メロウなトラック作らせたら随一だぞこの人。

RYO-Zのバース「踊り明かせ Beats身を任せ 頬ばるBeer 落花生」が心地よすぎる。1日の始まりにも終わりにもフィットする1曲。

8. DISCO-MMUNICATION

シングル『FUNKASTIC』のカップリング曲。この曲はライブDVDで最初に見てからCDを買ったのだが、ライブ映像でのパフォーマンスが素晴らしすぎて音源がイマイチに聴こえてしまう。
その映像がYouTubeにあるとは!(無断アップロードのやつだけど)

31:19あたりから始まるのだが、この曲の隙の無さったらすごい。4MCが2人ずつマイクパスしていく構造で、歌わない2人は後ろのライトも当たらないところで揺れてるだけという、RIP SLYMEのライブではあまりない演出。
バースの最後、「永久Make you gonna rock!」のところを被せずに「ウーワァ!」と言ってしまうPESが好き。あと曲途中のFUMIYAのスクラッチがかっこいい。このスクラッチ部分が音源だと変にエフェクトがかかってしまっていて、違う違ーう!と思っている。第三者の素人が思う「違う」ほど意味のないものはない。

9. Tokyo Classic

買ったCDを大事に大事に繰り返し聴いていた中学時代。その頃を思い出させてくれる1曲。売れに売れたアルバム『TOKYO CLASSIC』の表題曲だ。

4人とも揃ってラップにキレがあるし、ラップする順番もこれ以外はダメだな、という据わりの良さがある。残念ながら地方出身者には出せない、東京者と湘南ボーイたちのヒップホップセンスが出ていて、RIP SLYMEをRIP SLYMEたらしめている曲だと思う。
トラックだけ聴くとメトロポリタンというよりは南国ムード満点なんだけど。このアルバムを夏に出したのは素晴らしい。

10. ミニッツ・メイド

歌詞書かなきゃ〜とか、書けたからスタジオ行くか〜という曲作りのシーンをそのままゆるっと曲にしている。PESがガチでレコーディングに間に合わなくてバースが無い。トラックの良さに引っ張られてる感の強い曲でもある。

「でけたリリック 俺プリン食う」とか言ってることはどうしようもないんだけど、他愛もないことを曲に落とし込めるのってヒップホップ力の賜物だ。ヒップホップ力って何だ。

11. チェッカー・フラッグ

RIP SLYME史上最もBPMの速い曲。な気がする。ラップを乗せる前にトラックだけMELLOW YELLOWのKOHEI JAPANに聴かせたら、「こんなBPMの曲無理だろ!」と言われたとか。

速いトラックはRYO-Zの得意分野かと思いきや、彼特有のつんのめるスタイルで音源でもライブでもちょっと苦しそう。意外にもILMARIがうまく乗っている。PESはやっぱり異次元。

12. Super Shooter

奥先生しっかり聴いといてくれ!
GANTZの曲ですね。

これまたBPM速い曲。構成がちょっと変わっていて、4人が短めにマイクパス→サビ→BPM落としてILMARI→一人毎にBPM上がっていく→FUMIYAのパート(スクラッチ)で最初のBPMに戻る→サビ
歌詞の内容をGANTZに寄せるだけでなく、ゲームクリアしてレベルアップしていく感じを表現している憎い演出。PESで終わりじゃなく、LEVEL 5でFUMIYAまで入ってるところがヒップホップしてて最高。

このライブ映像のFUMIYAのスクラッチも好きだなぁ。アツアツのターンテーブルでスクラッチしてんのかい!っていうような手の離し方がいい。

13. 黄昏サラウンド

これは曲ももちろん大好きなんだけど、ワンカットで撮影されたのこのMVが大好き。カメラを止めるな!
途中で影で遊んでるのもいいし、ところどころに設置された明らかに何の役にも立たないターンテーブルも許せちゃう。

そんでこれもPESトラックなんだよな。FUMIYAがけっこう打ち込み系の音が得意なのに対して、サンプリング主体で作られるPESのトラックがたまに現れていい仕事して去っていく。制作ペースがちょっと遅いだけで、トラックメイカーとしての腕も一級品だ。

14. Masterpiece

名曲なのにライブ映像が無かった。西部のガンマンよろしく、乾いた音と男前なリリック。サビはRYO-Z製かなぁ。これでアルバムが幕を開けるなんて、粋だねぇ。江戸っ子のシップホップだねぇ(『Black Dada (江戸前Mix)』のPESバースより引用)

「道を転がる音楽を楽しむ」「伸び切ったカセットから今日も聞こえんだろ?」
RYO-Zの書く詞は特にイケメンだしヒップホップだ。

15. Unknown

アルバム『MASTERPIECE』から3曲目だし、またライブ映像は無いし、またPESトラックだった。RIP SLYMEの好きな曲を紹介するのではなくてPES製トラックの曲を紹介する主旨になりかけてる。

『MASTERPIECE』はRIP SLYMEのアルバムの中でも1番好きだ。肩の力が抜けている中でシングル曲がいい具合に締めてくれていて、ジャケットの難解さを除けばとっつきやすいアルバムだと思う。

16. Hey,Brother

ライブ映像が無い曲が続く。映画『間宮兄弟』のテーマ曲。一応シングルとして発売されたけど企画物みたいな扱いで、アルバムにも収録されていない。実の兄弟の歌ともとれるし、親友を兄弟と呼んでいるようにもとれる内容。

この曲に限らず、RIP SLYMEは4MCであることをうまく使った構成にするのがうまい。あと掛け合いで2人ずつに分かれると、RYO-Z&SUとILMARI&PESの組み合わせが多い気がする。PESの言う「ザッツライチョー」が素敵だ。
久しぶりに聴いてみて、もしやと思ったらこれもPESトラックだった。なんかもう、うん。

17. Tales

あ、前半『黄昏サラウンド』だったわ。あとこの曲もまたPESトラックだわ。もういいよね。これはPESトラックの曲を紹介するnoteだ。

この曲は東京メトロのCMに使われてて、CM曲らしくサビとバースの間に格差がある印象。サビを先に作ったのか、サビだけ特に気合入れてメロディ作ったか。でも各人の歌詞にも電車を連想させるフレーズがちらほら。人が多いけど何だか冷たい、都会のイメージも想起させる曲調。

そんな中で「子宮から出て出会い 別れて」という歌詞をぶち込んできたSUさんの勝利。

18. Good Times

一転してバキバキのダンスチューンを。ダンスフロアを連想させるようなこんなにキラキラしたトラックなのに、昼間の野外の、しかも「たまこんにゃくステージ」でライブするなんて素晴らしすぎるじゃないか。お祭りおじさん達。

「覚えてないくらいがちょうどいい あなたの思い出を総取り」という一文で締めるPESが相変わらずかっこいいんだけど、その土地土地で「福島の思い出を総取りぃぃぃぃ〜!」とか言ってたらそりゃもう。ねぇ。

19. ロングバケーション

第二の『白日』だと思ってる。曲で日常風景を描くことに力を注いでいた青年達は、こんなにかっこいいオトナになりました。

サビで終わらずに、最後に余韻を残すところが好き。そういえば『白日』もそんな終わり方だったな。

20. KINGDOM

いっけね、3曲繋がったライブ映像だ。これの1曲目が『KINGDOM』だ。
メジャー10枚目にして最後のアルバムとなってしまった『10』に収録された、ハッピーな1曲。日常を忘れて音楽の国へ!みたいなことなんだけど、そこの王様は実はFUMIYAという裏設定があって。
10枚目のアルバムを引っ下げてのライブ、初心に戻ってつなぎ姿なのがアツいじゃないか。

これまでも何回か触れたけど、FUMIYAはスクラッチ巧者でもあって、ライブでしか入れてこないイントロやサビ前、曲間でのスクラッチを聴くのも楽しみのひとつだった。

番外編

番外編として、『JOINT』と『Hot chocolate』を紹介しておく。

どちらもキャッチーなシングル曲だ。

と思いきや、どちらも遠回しに大麻のことを歌っている。発売当時の10代の頃はまったく気づかなかったというか、そういう呼び方するんだって知らなかった。両方ともタイトルがストレートすぎるし、特に『Hot chocolate』は歌詞も危なっかしい。RYO-Zの「虎視眈々と包む銀紙の下」はアウトだろう。でもこれ、たしかバレンタインに近い時期にリリースしてたよな。バレンタインの手作りチョコの話か。じゃあいいや。

結論:RIP SLYMEもやっぱりヒップホップだ

あー、ゴールデンウィークはRIP SLYMEのライブ映像見よ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?