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メイド服のタカミー 第七話

「心配しないで。仕事は私達がいつも一緒だし難しくないから。後で他のメイドも紹介するわ。」

他にも誰かいてくれる。その言葉を聴いて髙見澤は肩と背中に張り付いていた緊張が緩んだのを感じ深呼吸した。

が、それと同時に誰かの視線を感じた。
髙見澤の背丈と同じくらいの観葉植物がある。人間が何人も集まったような生え方に髙見澤が注目すると、人間が踊るようにうねうね気味悪く動く。
髙見澤が壁掛け時計のへ向くとその動きは止まった。

飋、護、参と祈祷の言葉のような文字が数字の代わりに配置された奇妙な時計だが、髙見澤はなぜだか眺めていたくなった。

デジャブ、既視感、氣志團万博に出させてもらったよな。いや、そういうことじゃなくて。
さっきと同じことを辿っている、でも全く同じじゃない、少しずつ違っている。何故?どういうことだ?

メイド服の裾に何か動くものがあたる。犬でも飼っていてそれがじゃれているのだろうと思って視線を壁の時計から床に移す。一匹の鰐が鋭い歯を見せながら髙見澤の足元をゆっくりと歩いているのを見て、髙見澤はうわぁーっと声をあげ、恐怖で硬直した。
恐怖で固まりながらもなぜか坂﨑のことが思い浮かぶ。

「これはメガネカイマン?」
「あら、わかるの?詳しいのね。こういう生き物がお好き?」

「俺じゃないけど、友達が昔飼っていた鰐が寿命を全うしたのを剥製にしたんだ。大学に寄贈したら博物館に展示されたりもして。」
そう言いながら、坂﨑よくこんなの飼育できるよな、蛇飼ったら解散だぞ、と恐怖払いに頭の中で毒づいてみる。

「実はこれも剥製なの。細菌が寄生してそれが動かしているのよ。」

「そんなものが人間に応用されたら」

メリーアンは少し困ったような表情で唇を真一文字に結んで、悪寒がするように自分のからだを抱き締めた。

「私達が怖い目に遇うことはないから心配しないで。もうすぐあなたの部屋だから、ゆっくりして疲れを癒してね。明日の朝から早速動いてもらうけど。」

怪訝な様子で見つめる髙見澤に気付いたのか、メリーアンは早口で説明した。

メリーアンはほとんど化粧もせず、真っ直ぐな黒髪と飾りっけのないメイド服。

リキッドアイライナーを引いた目元に巻きの入った赤い髪、ボリュームのあるメイド服の髙見澤。

櫻井、坂﨑と一緒だと自分がどんな格好でも平気だが、一人だけだと、もっと地味にしようかも考えてしまう。

ようやく部屋に入ることができた髙見澤は、くたくたでほとんど頭が回らなかった。
部屋の壁にアルティメットアーチエンジェルギターを立て掛け、髑髏柄の部屋着に着替えてベッドに腰かけたが、いつの間にか眠り込んでいた。

夢の中で、櫻井が「お前の格好は飛び道具だから」と話しかけてきた。
素っ頓狂な事を言い出すのが、また櫻井らしくて悪い気はしない。温かく懐かしい。

髙見澤は目が覚めてから思った。
でもいつも助けてくれる友達が居なくて大丈夫だろうか?

「自分を信じるしかない」
自分で書いた歌詞に励まされている自分に、自分で笑ってしまった。
櫻井と坂﨑と一緒にいるときのように、素直に笑顔になれた。

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