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『旅の空』ネパールの旅 憧憬のヒマラヤの向こうに 7


3日目 ナムチェバザール(3440m)⇔ シャンボチェ (3990m)

 山を歩き始めて3日目、初めて高度順応という一日を過ごした。シャンボチェの丘(3990m)まで歩いて高度にからだを慣らし、またナムチェのロッジに戻ってくるのだ。エベレスト初登頂のヒラリー卿が建てた学校を見たり、美しい山容のアマダブラム(6856m)に見とれたりしながら、休養とも言える一日を過ごした。

 ところで、高地を安全に歩くには、最低限守るべき基本的なことがある。それは、①十分な水を飲むことと、②身体を冷やさないことだ。高度3000mを超えると、空気中の酸素は確実に薄くなり、血液はドロドロになる。血液がうまく酸素を運べない状態になるのだ。そこで一日3リットルは水を飲むように言われるのだが、これは意識しないとなかなか難しい。チャンスがあれば、必ず紅茶や水を飲む。山では水はとても貴重だ。沢の水を煮沸させた「タトパニ」をもらってはひたすら飲んでいたのだが、けっこう虫とかが浮いてたりするわけで…。贅沢は言えません。そしてもう一つ、身体を冷やさないために、寝るときにも帽子はかぶったままが鉄則である。ロッジの中も気温は外と同じ、夜は氷点下になるからだ。

 しかし、保温の大切さを軽く見ていたぼくは、水分摂取も保温も怠って、無防備な姿でその晩眠った。その結果、24時間後のドーレ(4032m)で、ぼくは高山病(酸欠による身体機能低下)によって生死の境をさまようことになる。

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