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『旅の空』ネパールの旅 憧憬のヒマラヤの向こうに 1

スタパさんとの出会い ~バンコクにて~

 はじめて異国の地に足を踏み入れたのは、22歳、大学を卒業する年の2月のことだ。朝早い便で関西国際空港を発ち、タイのバンコクまで。時差のため、今日は2時間ほど長い。

 初めて海外へ旅をする。それも一人旅だ。心細いので、最初のホテルは決めておいた。カトマンズまでの TRANSIT トランジット(乗り換え)のため、今日はバンコクに一泊することになる。バンコクまでの道中では、給油のためにマレーシアの空港で1時間ほど待つ。空港のトイレに入るのだってドキドキだ。

 いかにも南方、といった感じの樹木が生い茂るタイのドンムアン空港に着陸したのは午後4時頃。2月だというのに、温水プールのような湿気と熱気を帯びた大気にじっとりと背中を濡らしながら、ザックを担いでホテルへ向かう。すると、どうも同じ方向に向かうおばさんがいる。同じホテルに泊まるらしい。インド人みたいな顔をしたアメリカ人だ。名刺に 「’Sutapa Basu’ (スタパ=バス)--- ワシントン大学教授」とある。おきまりの「どこからきたの?」から始まって、旅の期間やら目的やらを話しているうちにホテルに着いた。

 壁の薄いホテルだ…。偶然隣になったスタパさんの部屋からは、テレビの音が聞こえてくる。疲れたので、のんびりホテルで夕食をとろうかと思っていたら、ぼくの部屋の扉がノックされた。「夕食を食べに行かない?」、旅はこれだからおもしろい。…しかし、スタパさんとの夕食はほろ苦い経験となる。

(つづく)

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