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「陰徳を積め、商売に頼るな、書画骨董に親しめ」:矢橋家の家訓

「◯◯さんちの家訓って何ですか?」

どうも、家訓ハンターの岩田です(笑)

このアトツギ思考(アトツギシンキング)を書くようになってから、アトツギに会うとついつい家訓を聞いてしまう。

職業病ならぬ、アトツギ病かも。

★★★

先日、岐阜県大垣市で400年続く矢橋ホールディングスのアトツギ矢橋龍樹さんのプレゼンテーションを聴く機会があった。

スライドの1枚目は経営理念。

それはよくある話だが、その経営理念のベースに家訓がある…というところが、老舗企業のユニークなところ。

しかもその家訓というのが、
①陰徳を積め・・・うんうん
②商売に頼るな・・・うん?
③書画骨董に親しめ・・・え?逆じゃないの?
というちょっと変わった3カ条だった。

矢橋さん曰く
「書画骨董に親しめって言うのは珍しいですよね。普通はこういうアートとかは贅沢だから慎め、というのが多いと思います。でも、矢橋家ではアートを知ることで、その作家の創意工夫や努力を知ることができる。人間の可能性を知ることができると捉えているんです。」
とのこと。

プレゼンは始まったばかりだったけれど、家訓ハンターとしては食いつきたいところ。

「ちなみに、いつ頃からこの家訓ってあるんですか?時代の変遷と共に変化してきたりするんですか?家訓って初代が作るよりは二代目や三代目が作るケースも多いですよね。」

などなど矢継ぎ早に質問し、大いに話は盛り上がった。

★★★

いろんな人に「家訓はなんですか?」と訊くと、「そんなものないよ」と返答されることが実は多い。

でも、もう少し深堀りすると、そのファミリーの大切にする価値観のようなものが見えてくることがある。

家訓というほど大げさなものじゃなくても良いので、それぞれのファミリーが大切にしている価値観を言葉に落としてみるのはどうだろうか?

最後に、矢橋ホールディングスの企業理念と矢橋家の家訓についてがあまりに良すぎるので、引用をご参考までに↓

「人間探求」
企業が掲げる経営理念としては、奇異に感じられるかもしれない。
企業は、社会を構成する大事な要素のひとつである。そして、企業はまた、社員ひとりひとりの人間によって支えられている。
企業は、さらに社会を成立せしむる最小単位が「人」であることを考えれば、私たちは個々の人間をよりよく知らなければならない。
矢橋グループは、人を知り、人間を探求する企業体でありたい。

矢橋グループが、その創業時から「人間探求」を経営理念として謳ってきたのは、創業家である矢橋家の歴史と無縁ではない。
日本列島のほぼ中央。濃尾平野の西濃地域。近世日本史に重要な役割を担った中山道赤坂宿。
この地に400年続く矢橋家は、赤坂宿周辺を統べる、名主というポジションを占めていた。
その当時、矢橋家が、地域社会とどのような関係を形成していたのかは、いまとなっては詳らかではない。
が、矢橋家に伝わる家訓を熟読吟味してみると、おぼろげにではあるが矢橋家と地域社会の接点が立ち昇り、透けて見えてくる。
家訓は、次の三つである。

「陰徳を積め」
「商売に頼るな」
「書画骨董に親しめ」

陰徳を積むというのは、人知れず他人のために、あるいは社会のために働くことだ。
物質的な豊かさより心に重きを置くことを優先すれば、それはいたずらに商売に頼らないことに通じる。すなわち陰徳と通底する。
優れた書画、工芸品などに接すると、その表面的な“美”の背後に、作家の意識性がひそんでいることに気づかされる。

こうして家訓を振り返ってみると、その昔、村落共同体の中で、矢橋家が人々とゆるやかな共生の関係を結んでいた様子が浮かんでくる。
謙虚な姿勢で、見栄を張ることなく、自然体で人間と接する。営利を追求するばかりでなく、徳を積むことで人間力を磨く。
一幅の書画、一碗の茶碗から人間の創造力を知る― 結局、家訓は“人間”の大切さを語り残しているのだ。

「人間探求」。
400年の時を経ても、矢橋グループは、やはり人間を第一と考える。
社員、ひとりひとりの才能を発掘し能力を開発する。その力を結集して、人が幸福で豊かに暮らせるためのモノづくりに傾注する。
結果として伴う利潤は社会に還元していく。
企業の責務としての「社会貢献」を果たすために、私たちはまず、「人間」を「探求」していく。
矢橋グループは、真に経営の理念として「人間探求」を掲げ続ける。


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