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小2に気づかせてもらった仕事のやりがい

私はオーストラリアの学校で事務職と保健室の業務を担当しています。
事務が忙しいときに限って、たくさんの生徒が保健室にやって来ることもしばしば。もちろん、一人で対応するのは大変なこともありますが、それでも生徒たちとのやりとりは楽しいですし、毎日新しい発見があります。 

オーストラリアの公立学校の保健室がどんなものか、気になる方はこちら。

今回は、一生忘れることがないであろう、ある小学2年生とのエピソードを紹介します。
 
その生徒は、とても聡明で活発な子。笑顔が素敵で、話している相手も自然と笑顔にしてしまうような魅力があります。
ある日、その子が擦り傷を作って保健室に来ました。
私が処置をした後、保護者への連絡用に記録を書いていると、その子は楽しそうにその日学校で何があったか話してくれました。
 
ところが突然、その子は真剣な顔でこう尋ねたのです。
“How much do you get paid for this (job)?”(この仕事でいくらお金をもらっているの?)
 
私は少しも考えず、こう答えました。
“More than enough. I have a safe place to live, I can buy food, and I have access to clean water.”(十分もらっているよ。安全な場所に住めて、食べ物が買えて、きれいな水があるから。)
 
その瞬間、私自身が一番驚きました。
 
その生徒は納得したような、そうでないような表情でしたが、少し安心した様子で保健室を後にしました。

では、どうして私はそのように答えたのでしょうか。
 
その子の家庭環境が決して恵まれているわけではないために気を遣ったから? それとも、実際の給料を教えていいのか分からなかったから? どちらも違います。自分に不満がないと自分に言い聞かせたかったのかというと、それも違います。
 
本当に自然に口から出た言葉でした。
 
だからこそ、今でもそのやりとりが心に強く残っているのだと思います。
 
私はこれまでキャリアよりもライフワークバランスを重視してきました。それでも、悩んだ時期もありました。転職を考えたり、仕事について迷ったりしていたその頃の私なら、あの生徒の質問にどう答えていたでしょうか。もしかしたら同じように答えていたかもしれませんが、それはきっと本心からではなかったと思います。
 
では、どうして今回は本心で答えられたのか。それはきっと、今の仕事にやりがいを感じているからだと思います。
 
そのやりがいとは何かと言うと、毎日たくさんの生徒や保護者、先生方から「ありがとう」と言ってもらえること。そして、彼らの笑顔。
 
ありきたりで、また当たり前のことかもしれませんが、感謝されることは大きな活力になります。その活力があるからこそ、毎日仕事に行くことが楽しみになる。
 
楽しく仕事ができるから、もっと頑張れる。やりたくない仕事だって、そう思うとちょっとしたことで乗り越えられるんです。

擦り傷対応で、仕事即ち人生についての気づきがあるなんて、昔の自分に教えてあげたいです。
これからも、子どもたちの力を借りつつ、小さな気づきを大切にしたいと思います。

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