見出し画像

※実話「石の呪い」: 短編小説

目を覚ますと、寝汗で背中がじっとりと濡れていた。夢の中の白装束の老人の声が、まだ耳に残っている。

「石を拾え...石を拾え...」

頭を振って、その声を払いのけようとする。ただの夢だ。そう自分に言い聞かせる。

携帯が鳴る。画面を見ると、大学時代の親友・田中からだ。

「もしもし、康平か?久しぶり!明日、高野山に行くんだけど、一緒に来ないか?」

躊躇する。でも、この不安な気分を払拭するには、いいかもしれない。

「ああ、行くよ」

翌日、高野山への道を歩きながら、自分の体力のなさに愕然とする。息が上がり、足が重い。でも、奥の院手前の橋を渡った瞬間、不思議と体が軽くなる。まるで、別世界に足を踏み入れたかのように。

奥の院への階段。その端に、目が留まる。完璧な丸い形の石。美しい。手が勝手に動く。石を拾おうとしている自分に気づく。

「おい、康平、何してるんだ?」

田中の声に我に返る。慌てて石をポケットに滑り込ませる。心臓が早鐘を打っている。なぜ、こんなことを...。

その夜、目が覚める。体が動かない。金縛り。重圧感と恐怖で息ができない。何かが...いや、誰かが自分の上に乗っている。目を凝らすが、何も見えない。

朝、妻の美咲が震える声で言う。
「康平、昨夜...女の人があなたの上に乗って、首を絞めてたのよ」

背筋が凍る。自分には見えなかったものを、妻が見ていた。これは夢じゃない。現実だ。

次の夜も、その次の夜も同じ。眠るのが怖い。仕事に集中できない。頭がぼんやりして、常に疲れている。

三日目の夜。ベッドに横たわる瞬間、それが来るのを感じる。今度ははっきりと見える。長い黒髪。白い肌。でも、顔には何もない。その...何かが、私の上に乗っている。

首が絞まる。息ができない。頭の中が真っ白になる。

そして、閃く。石だ。あの石を拾ってから、すべてが始まった。

最後の力を振り絞り、引き出しから石を取り出す。途端に、重圧感が消える。

翌朝、家を飛び出す。大阪の中央大通りまで来て、思い切り石を投げ捨てる。その夜、久しぶりに安眠できた。やっと終わったのか。そう思った。

だが、数日後。街を歩いていると、目に見覚えのあるものが飛び込んでくる。あの石だ。捨てたはずの石が、ここにある。

足が止まる。動けない。誰かが拾ったのか。それとも...石が自分で動いたのか。

頭の中で、老人の声が響く。
「石を拾え」

冷や汗が背中を伝う。これは終わっていない。むしろ、何かが始まろうとしているのかもしれない。

石から目を離そうとするが、できない。その存在感が、私を見つめ返しているようだ。これから、どうなるんだろう。恐怖と不安で、体が震えている。

#AI短編小説

この記事が参加している募集

#やってみた

37,271件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?