見出し画像

DeNAの最先端AIで”本気のお遊び”に真面目に挑戦

2022年4月1日。『逆転オセロニア』においてエイプリルフールは、毎年本気で取り組むイベントです。それをオセロニアンのみなさんも楽しみに待ってくれていることを知っています!

今年のエイプリルフールでは、実際には存在しない架空のキャラクターが大量発生!!実は、その架空のキャラクターというのは、全てAIが描いたものなんです。

DeNAのAI推進グループに所属し、普段はAIのテクノロジーを使って開発・研究をする担当者に、イベントの裏側をたっぷりと語ってもらいました!

画像5

「“AI × 人間で今までにないエイプリルフールイベントをオセロニアンの皆さんに提供したい”という気持ちで取り組み、その結果、オセロニア運営チームと協力し、良くも悪くも癖の強いAIというものを上手に活かした企画に仕上がった」と語るおれんじさん。

オセロニアっぽいけど見たことのないキャラクターだったり、見たことある気がするんだけどちょっと違うキャラクターだったり。はたまた、音声を生成するAI技術も使って、キャラクターの見た目だけじゃなくボイスやタイトルコールまでAIに担当させてみたり……。

“本気のお遊び”に真面目に取り組んだ制作現場の裏側を、ちょっとだけお届けします。

1. 背景

ことの始まりは、今から1年以上前に私たちAIチームがプロデューサー・けいじぇい(以下、けいじぇいP)に持っていった一つの提案でした。

「画像生成系のAI技術
何か面白いことしませんか!?」

最初は本当にたったこれだけの話で。

近年発展の一途を辿る画像生成技術は、昨今の潮流を見ても今後一層期待が持てそうな分野でもあります。そういう領域こそチャレンジし、研究レベルを超えた実際の事業での活用を牽引していきたい。そんな思いを持って、けいじぇいPに相談したんです。

対して、面白いことなら何でも大好きけいじぇいP!「やろうよ!」と二つ返事で賛同してくれて、AIの具体的な活用方法を一緒に考えるようになりました。

時は流れ、2021年4月のこと。当時開催されていたエイプリルフールイベント『あべこべ!?リペイント』をプレイしていて「これだ!」と思いました。

エイプリルフール……ただでさえ自由な『逆転オセロニア』が、1年の中で最も自由になるこのイベント。ここで、AI × 人間のコラボレーションという形で何か面白いことができないか?と考えた訳です。企画の実施を決めるために、オセロニア運営チームの皆さんと相談を重ねました。AIチームからは、実際にAIが生成したサンプル画像を用意し、イメージが湧くよう見せてプレゼンをしたりもしました。

その結果、どうやら何か面白いことがやれそうだということで、"AI × 人間”の企画が晴れて2022年4月1日を飾るエイプリルフールイベントとして採用されたのです!

2. 何をしたのか

今回のイベントへ向け、私たちは次のような画像を作りました。

画像1

夢属性という第四の属性(そんなものはない)を持った架空のキャラクター、その数なんと10,000体!運営のお遊びここに極まれり!圧倒的物量の無駄遣い!

そして『逆転オセロニア』屈指の人気キャラクターである「ヴィクトリア」「アズリエル」「レグス」のそっくりさん。その名も「ウィクトリア」「アスリエル」「レクス」が登場!

画像2

似てるけどどこか違う、知ってるようで知らない、オセロニアに馴染みのある人ほど抱く困惑は、そのスキル名にも表れています。

さて、このように“オセロニアっぽいキャラクター”を描いてくれるAI。これを作るには、AIの専門家による知識と、そして何よりAIの専門家だけじゃどうにもならない必要不可欠なモノが存在します。

それはズバリ「オセロニアっぽさとは何かを教えてくれる画像」です。

持って回った言い方をしましたが、つまるところオセロニアのキャラクターの画像ですね。AIはそれらのデータを見て「オセロニアっぽさとは何か」を学習するんです。

つまり高品質でバリエーション豊かなキャラクターを描かせるには、高品質でバリエーション豊かな学習データが多量に必要になる。AIの性能は学習データの質に左右され、AIが描く絵は学習データが規定する枠組みを脱することができない。これはAIの弱みと言えます。

今回、AIが架空のオセロニアキャラクターを描くことができているのは、『逆転オセロニア』リリースからずっとキャラクターイラストを提供してくださっている絵師(イラストレーター)の皆様のおかげということです。

今回のエイプリルフール企画では、10,000体ものキャラクターが作られましたが、そこにはある意味『逆転オセロニア』がリリースされてからの6年間の歩みが詰め込まれています。

そしてこれからも『逆転オセロニア』の世界が拡がってゆくためには、絵師の皆様が描き出してくれるキャラクターが変わらず不可欠です。

今回の取り組みはこれで終わりではありません。

せっかくのエイプリルフール、やるなら徹底的にやりたい。DeNAにしかできないことをやりたい。普段『逆転オセロニア』を本気で遊んでくださっているオセロニアンの皆様に、私たちの“本気のお遊び”をお届けしたい。

そんな想いは私たちを、画像AIとはまた別のAI技術を開発する部署へと導きました。
「文章を与えると人間のような音声で読み上げてくれるAI」音声合成AIの研究チームです。DeNAには様々なAI技術のスペシャリストがいて、音声合成チームもその一つです。

そして彼らもまた面白いことが大好き!今回の取り組みについて相談すると、これを快諾してくれました。

というわけで出来上がったのが、「ウィクトリア」「アスリエル」「レクス」のボイスを担当してくれるAIです!この“喋るAI”もまた、日々素敵な声を提供して下さる声優の皆様のお力添えがあって初めて実現するものであり、その関係が変わることはこれから先もありません。

今回、AIが生み出した全てのものは、日々『逆転オセロニア』を支えてくださっている絵師や声優の方々、そしてオセロニアンの皆様がいて初めて成り立っているのです。

3. 大変だったこと①AIによる画像生成

大変だったことはいくらでもあるのですが(笑)、ここでは“絵を描くAI”についてお話ししますね。

まず第一に、AIによる画像生成を企画に落とし込むこと自体に苦労しました。「AIが自動的に絵を描いてくれる。」こう言えば聞こえはいいですが、AIはすごいことができる一方で、それと同じくらいの弱点を抱えています。

たとえば、AIに対して細かな注文を出し、そのとおりのキャラクターを描いてもらうことは難しかったりするんです。

AIでよく云われていることでもありますが、そのアウトプットに対してどのようなプロセスを経ているのかは、ある種のブラックボックスなのです。たとえば、今回も「人間が絵を書くときに考える思考パターン」とは全く違った方法によりキャラクターが描き出されています。なので「可愛らしく」とか「格好良く」とかいう調整をすることが難しいのです。

絵師さんに描いていただく際、キャラクターの性格や特徴などをアートチームからお伝えして作り上げていくプロセスとは、全く違うのです。

AIの強みを活かした企画を立ち上げる裏には、AIの弱点をカバーする人間の創意工夫が必要であり、オセロニア運営チームのプランナーの方と一緒にかなり試行錯誤しました。

4. 大変だったこと②人間による画像チェック×10,000種

今回の企画でオセロニアンのみなさんに驚いていただきたいと思い、企画したのが10,000体のキャラクターのお知らせを掲載すること!

10,000枚という冗談のような物量を誇る新キャラクター画像群をたった1日のために贅沢に使う。AIが得意とする量産のスピードと、描いた絵の“オセロニアらしさ”の活かせるエイプリルフールらしい企画じゃないかと!

思いついたは良いもののそれはとても大変な苦労を生み出してしまいました。AIが描いたキャラクターを全てチェックしなければならなかったことです(笑)

AIはすごいスピードで絵を描けます。実際、10,000体のキャラクターさえも数秒程度で描けてしまうほど。それは人間にはできないことだと思います。

しかし一方で、AIの描いた絵って人間にとって完璧なものとは限らないんですよね。たまに目のバランスが悪かったり、口元が違和感のある歪み方をしていたり。たとえば、10,000体のキャラクターが欲しいからと言いってAIに10,000体描いてもらっても、それら全てに欠損がない保証はないわけです。

え?「人間が絵を描いたとしても極論同じであって、誰だってミスはするだろう」って?ありがとうございます。ただ、AIは人間のような考え方で絵を描いているわけではないので、人間の常識が通用しないんですよ…。つまり人間が描いた時とは比べ物にならない注意深さでチェックする必要があります。

そしてミスが見つかったとしても、そこだけを直してまた描いてくれとAIに頼むことはできない。できるのは、また違ったキャラクターをAIに描いてもらってそれをチェックすることのみ。これもAIの弱み、人間がカバーしてやる必要のある部分です。

だから、10,000体のキャラクターを登場させるには10,000を遥かに超える量の画像をチェックしました!!これが大変で...普段絵師さんに絵を描いていただけることのありがたみを痛感しました。もちろんこれは質が高く個性豊かなキャラクターたちをお届けするために必要な工程なので、楽しんでやれましたけどね。

というわけで、今お知らせに掲載されているのはこうして生まれ選抜された愛すべき10,000体。もちろん絵師さんが描くキャラクターのクオリティには及ばないかもしれませんが、お時間が許す限り1体ずつ、じっくり見てあげてください!

▼生成したキャラクター画像の一部

画像3

5. AIが生成した画像がキャラクターとして出現する擬似ガチャ!「診断メーカー」で登場!

ご紹介した「AIが生成した画像」が、キャラクターとして擬似ガチャで登場するイベントをキャンペーンに!

その名も「AI診断パレード」!SNSでつぶやける、おもしろ診断投稿サイト「診断メーカー」さんで開催中!

診断メーカーではお馴染みの「任意の名前を入力すると診断結果がランダムで現れる」仕組みで、名前を入力してもらうことで、AIが生成した逆転オセロニアの新キャラクター!?がランダムで1体登場しますよ。

画像4

さらに、連動中のTwitterキャンペーンでは、期間中に診断メーカー「新キャラ登場!?AI診断パレード」で診断した結果とともに「#AI診断パレード」を付けてツイートされた数が500件を超えると、すべてのプレイヤーに「星のかけら」を3個プレゼント!皆さんにとってお気に入りのキャラクターに出会えますように……!

【AI診断パレード/AI診断パレードキャンペーン 開催期間】
開催中~2022年4月5日(火)11:59

※予定は予告なく変更になる場合があります。
※AI診断パレードで登場したキャラクター(駒)は、『逆転オセロニア』のゲーム内ガチャ等で排出する予定はありません。

6. 締めの言葉

ここまでお読みくださり本当にありがとうございます!
AIや画像生成など小難しいお話をしてまいりましたが、つまるところ私たちは「オセロニアンの皆様にこのイベントを楽しんでいただきたい」という一心で取り組んできました。
私たちの日々の取り組みが『逆転オセロニア』を通じて皆様と交わったことを大変嬉しく思うとともに、これからもAI技術によって様々な形で、喜びと驚きをお届けしたいと思っています。

『逆転オセロニア』運営 AIチーム おれんじ
〈次回の配信予定日:2022年4月下旬〉

更新はこちらでお知らせしています!