日常会話は最大の難関

日本人が英語を勉強する上で最大の難関は日常会話です。

海外の学会で研究発表をするよりも、
英語で博士論文を書くよりも、
特許侵害の訴訟で長い証言の通訳をするよりも、
バーでフットボールを見ながらくだらない会話をする方が難しいのです。

さらに、大学院の専門科目の講義を理解するよりも、映画のせりふを聞き取る方がずっと苦労します。会社で会議の内容を理解するよりも、その後の昼食でアメリカ人だらけの雑談に追いつく方がずっと大変です(なのでお互いに避け合って座ります)。大統領選挙の討論を理解できても、歌の歌詞はぜんぜん聞き取れません。

それをどんなに言っても日本にいる人たちは半信半疑なのですが、海外で仕事や勉強をしている人たちはみんな「そうそう、そうなんですー」と泣きそうな顔をします。

学会や講義や裁判や会議の時の話し方は、教科書英語に近いのです。話の内容が複雑なので、細部を省略しないで全部はっきり話します。だから日本人には理解しやすいのです。さらに自分の専門分野や仕事に関連していることは、語学力の不足を自分の知識で補うことができます。

逆に日常会話の話し方は省略が多くて早口なので、TOEFLやTOEICのListening Comprehensionでいくら良い成績を取っても、CNNやBBCのニュースをいくら聴きこんで勉強しても、いつまで経っても理解できるようになりません。

だから日常会話は諦めて「ビジネス英語」に専念するべきだという意見もありますが、日常会話ができない人は接待も営業もできないし、パーティのお誘いが来ると気が重いお義理で誘う方も実は気が重い、という非常に辛い海外生活を送ることになります。辛いままで我慢するというのは心身の健康にも宜しくありません。

日本人は最初にカタカナ英語を頭に入れてしまっているので、それを追い出して英語の口語をきちんと勉強しない限り、海外に何十年住んでも「日常会話は苦痛」です。逆に言えば、子供のうちに海外で生活した人は、カタカナ英語より先に普通の英語を頭に入れているので、日常会話の聴き取りはそれほど苦労しません。

これまでは「ネイティブじゃないから」「帰国子女じゃないから」という言い訳が通用してきましたが、それは教える側の怠慢だと私は思っています。きちんと勉強しなおせば、大人になってからでも話し言葉の英語の音を理解することはできるし、話す速度を上げることもできます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?