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Vol.1”知のコンパス・コレクション” 膝OAの痛みの軌跡・動作・発生源

”知のコンパス・コレクション”では、理学療法の世界で日々蓄積される膨大な研究成果の中から、実践に役立つ重要な知見を端的に厳選してお届けします。最新のトレンドだけでなく、時代を超えて価値ある基礎的研究まで幅広くカバーし、皆様の臨床実践に確かな方向性を示す「知のコンパス」となることを目指しています。
※端的にまとめますので、詳しくは文献にてご確認ください。

変形性膝関節症患者の痛みの軌跡に関する要因

705人の参加者の5年間の追跡調査の縦断的疼痛データでは痛みの3つの軌跡が確認された。中程度または軽度の痛みの軌跡を辿る可能性が高い要因は、BMIが25以上、最高学歴が中等学校、合併症が3つ以上、股関節痛がある、対処法が心配性などである。初期の症候性OA患者の膝痛の管理では、股関節痛、他の合併症、受動的な対処法、肥満などの追加要因にも注意を払う必要がある。

💡 ポイント
初期の膝OA患者では、膝だけでなくその他の悪化要因を包括的にフォローする必要がある。

Wesseling J, Bastick AN, ten Wolde S, Kloppenburg M, Lafeber FP, Bierma-Zeinstra SM, Bijlsma JW. Identifying Trajectories of Pain Severity in Early Symptomatic Knee Osteoarthritis: A 5-year Followup of the Cohort Hip and Cohort Knee (CHECK) Study. J Rheumatol. 2015 Aug;42(8):1470-7. doi: 10.3899/jrheum.141036. Epub 2015 Jul 1. PMID: 26136492.

変形性膝関節症は一番早く痛くなる動作は?

膝関節に異なる力学的負荷がかかる可能性のある「歩行」、「階段」、「ベッド上」、「座る/横に寝る」、「立位」の5つの活動のうち、「階段を使う」ことが最初に痛みを引き起こす可能性が最も高い。これは、体重をかけて膝を曲げる動作が、OAの進行に伴って最初に痛みを生じるという仮説と一致しており、OAの初期段階で早期の介入が有効な人を特定するために、高リスクグループの人は、そのような動作中に痛みが生じるかどうかを監視すべきである。

💡ポイント
少し飛躍すると階段時の疼痛を膝OAが悪化する徴候として捉えるもことでき、痛みが生じたときに対処できるかが鍵になるかもしれない。

Hensor EM, Dube B, Kingsbury SR, Tennant A, Conaghan PG. Toward a clinical definition of early osteoarthritis: onset of patient-reported knee pain begins on stairs. Data from the osteoarthritis initiative. Arthritis Care Res (Hoboken). 2015 Jan;67(1):40-7. doi: 10.1002/acr.22418. PMID: 25074673; PMCID: PMC4296218.

膝OAの痛みの発生源は?

  • 関節軟骨

軟骨は無神経、無血管組織であるため、正常状態では疼痛源にはなり得ない。しかし、関節軟骨が変性し表面が粗造化すると壊死した軟骨 片が関節内に剥落し、軟骨基質からは巨大分子や サイトカインが放出され疼痛路なることもある。

  • 腱・靭帯付着部

腱付着部には豊富な疼痛知覚の神経終末が存在する。関節軟骨が変性し表面が粗造化すると軟骨の潤滑特性は低下する。初動時の関節のこわば り感や腱付着部の牽引痛の原因となりうる。また、内側型 OA 膝では荷重時に外側の軟部支持組織の牽引が生じる場合もある。

  • 半月板

荷重を受ける半月板内縁から中央部には神経終末や血管が存在しないため正常な状態では疼痛を生じる ことはない。しかし、関節包に付着する外縁部分 には神経と血管が分布しているため、同部の半月 が断裂したり,損傷部を大腿脛骨間に挟み込み半 月に異常牽引力が働いたりすると激痛(catching pain)を生じる。

  • 滑膜

炎症が生じている滑膜では神経終末の再構築、感受性亢進が生じており、水腫による張力や骨棘などの機械的刺激によって疼痛を生じる。

  • 骨棘

骨棘形成は関節裂隙の狭小化の程度以上に膝関節痛に関連する。感受性の亢 進した滑膜を骨棘が刺激して疼痛を誘発する機序も考えられる。

  • 軟骨下骨

軟骨や半月板の機能が破綻すると軟骨下骨に加わる機械的スト レスは著しく上昇する。軟骨下骨下骨梁の微小骨折による骨髄内炎症または浮腫が生じ、痛みとなる。

💡ポイント
変形のステージによって痛みの原因となっている組織は異なるために、それに応じた対処が必要となる。

赤木將男:変形性膝関節症の X 線像と痛み:解離はなぜ生じるのか. 臨床リウマチ,27: 157~161,2015

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