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「静かなるドン」を読み切った

よく漫画アプリやサイトの広告で、目玉として扱われている印象の強い「静かなるドン」。

高校生のころ(三十年前?)、深夜に、香川照之さん主演の「静かなるドン」が、ちょくちょく放映されており、結構面白くて、よく見ていました。

ちなみにヒロインは、喜多嶋舞さん。かわいかったです。
が、主役ヒロイン、どちらも、今は、ちょっと微妙な感じなのも、30年という月日を感じます・・・・。

原作の漫画も、ずっと気にはなっていたのですが、全部で108巻という長大なお話。
二の足を踏んではいたのですが、1巻を読み始めると、いろいろとツッコめる所満載ですが、しかし、さすが24年間も続いた作品だけあって、飽きずに楽しめました。

主人公の近藤静也は、小さな女性下着会社の冴えないサラリーマンだけど、実は裏の顔があり、組員1万人を従える暴力団の組長でもある・・・・というコメディ色の強い漫画です。

当初は、主人公の二重生活を描くことで、サラリーマンの悲哀を浮かび上がらせるという展開がメインでしたが、連載の長期化で、敵対的組織との戦い見所になっていきます。

こういう流れは、サラリーマン漫画の代表(「だった」と記載するべきか?)「課長島耕作」も同じで、連載当初は、勤め人の悲喜こもごもが作者の実体験を元に描かれていましたが、連載の長期化でストーリー漫画として側面が強くなり、「大人のバトル漫画」として出世街道を驀進する「今太閤」物語になりました。

「静かなるドン」では、もう少しシンプルに次々と登場する強敵(敵対的組織)と戦うことになりますが、国内の競合ヤクザから始まってバトル漫画の宿命で強さがインフレ、海外のマフィアで収まらず、最終的には世界の裏側を牛耳る「世界皇帝」と対峙することに。

物語の当初から、世相を反映した、キャラ・展開・ギャグが散見された本作で、「あぁあったな、そんなこと」とアハ体験も楽しい作品です。

最終盤に登場する「世界皇帝」には、「リーマン・ショック」後の世界観が透けて見えるんですが、巨大さを誇張したいが為に、お約束の「イルミナティ」が使われており、エンタメと陰謀論は、「エヴァンゲリオン」がそうであったように物語を盛り上げるスパイスとして多用されるもの。
昔なら気にならなかったんですが、今回、「ちょっとヤベェな」と感じてしまったのは、トランプ後の世界に住んでいるからだよな・・・・・。

でも、「ユダヤ陰謀論」まではいかないし、「日本に真の独立を!」という保守的な思想も垣間見えましたが、あくまでも微温的な反米に収まっており、エンタメとしては、ほど良い加減なのかな?

さて、単行本100巻、連載期間20年を超える堂々たる超大作、最終的には、ハッピーエンドで終わるんだろうなぁ、でも、国家元首ですら意のままに操る世界皇帝を、どうやって倒すんだろう? と思っていましたが・・・・・まさか倒さないで終了。ヒロインとも結ばれず。

ギャグ色の強いストーリー漫画とは言え、作者の成熟(おっさん化)や物語終盤のシリアス化で、最後の最後、「富の不平等」まで踏み込んだものの、その問題が解決された後の世界までは手が出せなかったということでしょうか?

ファンタジーなラストを提示することも出来ただろうに、最終的には、妙にリアルな着地点でしたが、やせ我慢こそが真のヒーローという作者の願望の反映でもあるのかな~。

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