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取材する側の視点を知ると広報の発信が変わる?!加藤恭子さんに聞く “ 話題にしてもらう技術 ” とは

「noteとTwitterでつくる新しい企業コミュニケーション 実践編」イベント。今回のゲストは、『話題にしてもらう技術~90.5%の会社が知らないPRのコツ』(技術評論社 刊)の著者、加藤恭子さんです。

PRや企業コミュニケーションのノウハウと、noteとTwitterをつかって話題にしてもらうヒケツについて、おうかがいしました。

取材する側・される側の経験を活かして

ーー加藤さんはこれまで、PRだけでなく、記者やマーケティングの仕事にも従事されてきました。『話題にしてもらう技術』を書くことになったきっかけと、著書の概要について教えてください。

加藤 私はBtoBのマーケティングコミュニケーションを経て、テクノロジー分野の記者になりました。でも、専門知識が足りておらず、記事をうまく書くことができない、ダメな記者だったんです(笑)。

株式会社ビーコミ代表取締役
加藤恭子さん

加藤 その後、広報として取材を調整する側になって、取材する側とされる側、両方を経験することができました。この経験を活かし、みなさんが「自分自身や自社を話題にしてもらいたい」と思ったときに、何をどうしたらいいのかについて、本にまとめようと思ったんです。

PRの基本的なポイントは、「情報は発信しないと伝わらない」、「伝わらないと消える」、「全国区ではなくステークホルダーに話題にしてもらうことが大事」ということです。(それを踏まえたうえで)この本は、以下の6つの章から成っています。

1. 注目を集める情報の8つの法則
2. 話題になるためのPR5つ道具
3. 疲弊しないで話題になり続けるための考え方と仕組みづくり
4. 1人で抱え込まない体制のつくりかた
5. 炎上のリスクとうまくつきあう方法
6. 付録:架空の人事クラウド企業の広報ストーリー

おすすめは、6の付録から読む方法です。付録では、PRのひとがやりがちな失敗例をあげ、それを回避する方法が本著のどの章に書かれているか記載しています。ですので、本編から自分に必要そうな部分だけを抜粋し、効率的に読むことができます。

今回は、2章の「PR5つ道具」について、くわしくご紹介したいと思います。

プレスリリースはランキング上位のものを真似てみる

加藤 私が考える「PR5つ道具」とは、プレスリリース、メディアピッチ、記者説明会、公式ソーシャルメディア、オウンドメディアです。

「PR5つ道具」の図版

加藤 最初に、プレスリリースについて。

PRの方から、「プレスリリースを毎日書いて発信している」という話を、聞くことがあります。けれども、プレスリリースを毎日発信していると、一つひとつのネタがどうしても小さくなってしまいますよね。

記者は、記事にできるような中身の濃いネタがほしい。ですので、小さいネタのプレスリリースでは、記者に魅力を感じてもらえないことが多いんです。練習としてたくさん書くのはいいのですが、発信は絞ったほうがいいです。

よいプレスリリースを書くための練習方法として、私がおすすめしているのは、PR TIMESでランキング上位になっているプレスリリースを書き写す方法です。見本のプレスリリースをもとに、たとえばnoteなどに自分で記事を書いてみるのも、すごくいい練習になると思います。

記事になっている競合他社のプレスリリースを読んで書き写したり、配信頻度や内容を記録して、それが自社とどう違うのかを分析したりするのもいいですね。

それから、取材の機会を最大限に活かすことも大事です。

取材をうまく調整できないと、せっかく記者に取材していただいたのに記事にならなかったり、こちらの意図から外れた記事が載ってしまったり。その記者に、2度と来てもらえなくなった......なんてことも起こりかねません。

それらを回避するために、広報担当がやるべきことは、実はすごく多いんです。

たとえば、過去にどんな記事を書いている記者が来るのか、このメディアはどんな傾向があるのかなどを事前にしっかり把握しておくこと。取材中には、ちゃんと記事になる回答ができているかを確認したり、(話題に沿った内容の)画像や資料がきちんと揃えられているかを考えたりしなければなりません。記事の掲載前に内容確認ができることは少ないので、これも意識しておく必要があります。

記者と会いやすくなる「説明会」がおすすめ

加藤 私が強く推奨しているのが、メディアの方を集めて行う「記者説明会」です。

記者の立場からすると、個別取材で企業側と会うときは「絶対に記事にしてほしい」という(PRからの)プレッシャーを感じるものです。でも、説明会であれば、一対一ではないので。記者も「今日は勉強モードで参加してみようかな?」と、気楽に参加しやすいんですね。

中小企業の方が、「説明会を開いてもどうせ記者は来ない。だからやらない」とおっしゃることがあります。でも来るかどうかは、説明会の内容次第。テーマの切り方次第で、記者を集めることは可能だと思います。そして、来てもらう記者は100人でなく、自社の関係する業界メディアの5人でいいのです。スタートアップこそ、記者説明会をぜひ実施していただきたいです。

開催方法も、貸会議室でやったり、オンラインだったり、いろいろあります。自分たちに合った方法を見つけて、ぜひ取り組んでいただければと思います。

noteで記者の疑似体験を。
Twitterではメディア人の本音を探る

ーー加藤さんの「PR5つ道具」にある「オウンドメディア」、「公式ソーシャルメディア」についておうかがいします。今回のイベントのテーマでもあるnoteは前者、Twitterは後者としてつかわれることが多いですよね。

『話題にしてもらう技術』の視点で見ると、noteとTwitterは、どのようなつかい方をするとよいのでしょうか。

加藤 noteは、ある程度長い文章を発信する場としてつかってほしいですね。まずは、思いついたことを書いてみて、情報発信に慣れる。内容は、日常のことなどで構いません。

次に、自分の好きなものや推しを紹介してみる。すると、写真があったほうが伝わりやすいなとか、まったく知らないひとに伝えるには最初に説明が必要だな、といったことがわかってきます。

書くことに慣れてきたら今度は、自分がよく知らないことについて調べて書いてみましょう。これって実は、記者やライターがやっていることと同じですよね。自分で体験してみると、記者たちの気持ちがわかるようになります。そうすると、自分たちの情報の出し方も、格段に変わってきますよ。

ーープレスリリースを書く練習って、自社の商品紹介からはじめるのかと思っていました。

加藤 自社のことはよく知っているし、好きなので、逆に練習になりにくいんですよ。まずは、客観的に書ける題材から書く練習をするのがいいと思います。

noteとTwitterを組み合わせるのも効果的です。Twitterでさまざまなテーマの投稿をすることで、いまnoteで何を書いたらウケるのか、予備調査をすることができます。

それにTwitterは、メディア人の本音を探れる便利なツールでもあるんです。自分たちが載りたいメディアのアカウントだけでなく、そのメディアの記者のアカウントを探して、フォローしておきましょう。記者の方々が、「今度こんな特集をしようと考えています」、「広報の方と交流したいです」などのツイートをされることがありますので。

ーーとくにコロナ禍になってからは、メディアの方たちが「雑談的な情報収集の場が減って困っている」という話をよく聞きますね。

加藤 そうなんです。ベテラン記者は、人脈や土地勘があるから、まだいいのですが。コロナのタイミングで記者になった、2、3年目の方々が1番困っていると聞きます。対面の取材が少なくて、学ぶ機会がないままだと。

ですから、(知り合いの記者の方に)「御社の新人記者の方を紹介していただけませんか。その方にもわかるように、ネタをご説明します」とTwitterのDMをして、つながってみるのもいいと思います。

ーーメディア説明会をやってもいいですし、横のつながりをつくるイベントにするという選択肢もあるかもしれませんね。

オーディエンスの特性を活かし、複数SNSを活用

ーー視聴者からの質問です。noteやTwitterに加え、FacebookやLinkedInなど、複数のSNSをつかうのは効果的でしょうか。

加藤 SNSごとにオーディエンスが違うので、複数つかうのはすごく効果的だと思いますよ。

たとえばFacebookには、メディアの方のなかでも40〜50代の役職者が、多くいらっしゃいます。メディアの上層部とつながったり、そこで何か見てもらったりできるかもしれません。Facebookはすごくつかえるツールだと思いますね。

それからLinkedIn。いまはまだ、メディアの方とつながる目的でLinkedInをつかっているひとは少ないので、逆につながりやすく、おすすめです。

ーーTwitterのDMだとスパム扱いされやすいけれど、LinkedIn経由でのアプローチは珍しいから目立つんですね。

加藤 LinkedInはTwitterと違って、しっかりプロフィールを書くことができるので、仕事上でつながりやすいイメージがあります。

あと最近は、仲間内で「Eight(エイト)っていいよね」と、話題になっています。

ーー Sansanさんが提供しているオンライン名刺管理サービスですね。オンライン上で、名刺交換申請を出すということですか。

加藤 そうです。そのさいはスパムのように送りつけるのではなく、意図をきちんと説明しましょう。「御社の媒体で扱っている内容に合致する情報をもっています。つながっていただけないでしょうか」と書けば、名刺交換していただけると思いますよ。

効果測定は独自の指標で

ーー次に、効果測定についておうかがいします。いまは広告換算値をつかった効果測定が一般的ですよね。加藤さんはどのように考えていますか。

加藤 広告換算値(AVE)は、この記事と同じ面積の広告をこのメディアに出したら、100万円になるので、この記事は100万円の効果がある、と金額に換算する方法です。大きな金額になるので、インパクトもあり、広報部門以外に効果を説明するときに用いがちなのですが、これをやってしまうと、広告掲載料の高いメディアに出ることが効果がある、ということになってしまいます。そんなことはないですよね。

広報活動をはじめたばかりのうちは、会った記者や出したプレスリリースの数など、いわゆる「行動目標」で判断するのもありだと思います。ただ、もう少し進んだ段階なら、結果を目標にしてより細かく効果を測ったほうがいいですよね。

そのためにも、自分たち独自の指標をつくることをおすすめします。たとえば、載りたいメディアに掲載されたら5点とか。

自分たちが発信したいと思っている文脈で取りあげられたのか、記事中に複数社取りあげられたなかで自社がメインのコンテンツになっていたかなど、それぞれの達成度合いで点数を決めておくと、効果を測定しやすいと思います。

ーー最後に、本日のイベントの締めとしてみなさんに、明日からこういうのをやってみるといいですよ、というアドバイスをいただけますでしょうか。

加藤 他社のプレスリリースを読んでみてほしいですね。余力があれば、今日のこのイベントの感想を、Twitterに投稿してみるのもいいと思います。できればnoteにちょっと長く書いてみると、なおいいですね。

ーーイベントのレポートを書くのも、自分たちについて他者に伝えるときの練習になる。そのうえ、メディアの方々がどういう観点をもって発表会に参加しているかを、学ぶ機会にもなるということですね。

そう考えると、みなさんがnoteのイベントに参加するさいのモチベーションも変わるかもしれません。ぜひやってみてください。本日はありがとうございました。

※敬称略

▼イベントのアーカイブ動画は以下からご覧いただけます。

登壇者プロフィール
加藤恭子さん
株式会社ビーコミ代表取締役

PRSJ認定PRプランナー。日本マーケティング学会常任理事。元Tech系企業のマーケティングマネージャーで元記者。サイバー大学客員講師(コミュニケーション論)。青山学院大学大学院(国際コミュニケーション学修士)。著書に『話題にしてもらう技術』がある。
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モデレーター 
徳力 基彦
noteプロデューサー

interviewed by 徳力基彦 text by いとうめぐみ

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