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YouTubeの動画撮影プロセスも全見せ━━「noteとYouTubeでつくる新しい企業コミュニケーション」実践編 #noteとYouTube

企業のデジタルシフトが進むなか、動画を活用して自らの事業やブランディングに活かす企業が増えています。

昨年11月に開催したオンラインイベント「YouTube活用でさらに拡張する noteでつくる新しい企業コミュニケーション」では、YouTubeの定元邦浩さんにご登壇いただき、企業がnoteやYouTubeを組み合わせて活用する際の基本的な考え方やテクニックをご紹介しました。

今回は、実際にnoteやYouTubeをつかって情報発信をしているminne by GMOペパボの和田まおさんとアンダーアーマーの松元竜太郎さんをゲストにお招きし、noteやYouTubeのつかい方、組み合わせた活用方などについてお話をおうかがいしました。これからnoteやYouTubeをつかって情報発信をしたい方や、すでにはじめていて続ける方法を知りたい方へのヒントになれば幸いです。

クオリティにこだわると、続けることが難しくなる

━━まず、簡単に各社の取り組みをご紹介いただければと思います。

和田 はい。私たちはGMOペパボ株式会社で、ものづくりの総合プラットフォーム「minne」を運営しています。ハンドメイドの作家・ブランドさんや材料をつくっているメーカーさんにご出店いただき、作品を販売しています。

出店いただいている作家・ブランドさんが80万人以上いらっしゃるのですが、私は「作家活動アドバイザー」としてその作家・ブランドさんたちの運営支援をしています。

具体的には、「minne LAB」を運営してハンドメイド作家・ブランドのみなさま向けに情報を発信しています。YouTubeのminne公式チャンネル「minne LAB」で動画を配信し、収録の様子をInstagramでライブ配信しています。noteのマガジンにはYouTube投稿のお知らせや今後の配信予定、作家・ブランドさんが勉強するためのコンテンツなどを掲載しています。

和田まおさん
GMOペパボ株式会社 minne事業部

松元 アンダーアーマーはアメリカに本社を置くスポーツ用品メーカーです。

もともと紙の広報誌を発行したり、テレビCMをつくり込んだりしていましたが、近年デジタル化していくなかで、YouTubenoteを組み合わせるなど様々なメディアを使って情報発信をしています。
動画は商品を紹介するものもありますが、ブランドの姿勢や価値観を伝えるようなムービーにも力を入れています。

松元竜太郎さん
アンダーアーマー ランニング・マーケター

━━アンダーアーマーさんの動画はかっこいい系のブランドムービーが多く、多いものだと数100万回の再生数があります。スポーツというとテレビCMというイメージが強いですが、いまデジタル化している過程でYouTubeやnoteをいろいろ試されているんですね。

一方、「minne LAB」のYouTubeチャンネルはどのようなテーマでやられているんですか?

モデレーター:noteプロデューサー 徳力基彦さん

和田 テーマは複数ありますが、メインは作家・ブランドさんからいただいた質問を深掘りして1本の動画にしているものです。

私はこれまで何千人もの作家・ブランドさんとお会いし、たくさんのお悩み相談を受けてきました。そこで、似たような悩みであっても、答えは一人ひとり違うんだということを体験しました。自分の悩みはほかのひとも抱えているものだということ、そしてその答えはみんなと一緒ではないということを作家・ブランドさんに知っていただくことで、自分は次どうすればいいのかという気づきになると思い、「ハンドメイド作家さんのお悩み相談」シリーズをはじめました。noteにもアーカイブとして、質問の内容と動画のリンクを載せています。

ただ、これはお題の選定と原稿書きに結構な労力がかかるんです。準備が追いつかなくなり、苦肉の策ではじめたのが、リアルタイムでコメント欄に届いた質問に延々回答し続けるYouTubeライブの「質問大会」です。こちらはいま月1で配信しています。

━━YouTubeで動画を見てもらおうと思うと、ちゃんと編集したものをアップしないといけないと思いがちですが、クオリティにこだわると続けることが難しくなりますよね。

アンダーアーマーさんの場合は、クオリティに対するこだわりが強そうですが、いかがですか?

松元 3年前にnoteをはじめたんですが、当時はnoteに動画を貼り付けているひとがほとんどいなかったんです。でも、noteにYouTubeの動画を貼り付けてみたらサムネイル画像もきれいに出るので、実験的に『女性社員が語る、本当に買ってよかったアンダーアーマー商品』という記事のなかで動画を上げてみました。思ったよりも見ていただけましたね。

この動画では、社員が顔を出して実際にアンダーアーマーの商品を身につけています。うちは社員が結構ソーシャルメディアをやっているんですが、社員が気に入ってソーシャルメディアにアップしているような商品は、実際に売れている印象があります。何かデータがあるわけではないのですが。

和田 minneの場合も、私たちスタッフが商品を身につけていると、お客様がよろこんで動画をたくさん見てくださるという傾向があります。

動画は短く。プロセスを見せることも価値がある

━━YouTubeチャンネル「minne LAB」について説明しているnote記事もあるんですね。

和田 はい。『YouTubeチャンネル「minne LAB(ミンネラボ)」』という記事のなかで企画の概要をまとめています。2019年に公開した記事ですが、いまでも月1000ビューぐらいいただいています。「minne LABって何やってるの?」と聞かれたときに「ここを見て」と言える場所があるのはありがたいですね。

━━アンダーアーマーさんはスポーツ選手のインタビュー記事をnoteで掲載されています。鉄板コンテンツとして読み応えのある記事がたくさん上がっています。

松元 アンダーアーマーで活躍しているアスリートの方のストーリーを伝えていくというnote記事で、動画とも連動しています。

インタビューはかなりガッツリ収録していて、それをどうやって出すかということが問題なんですが、結論から言うと動画は1分以内に編集して出すことが多いです。誘導先のランディングページのなかでは、アイキャッチとして目立つところに動画を置いています。文章も触りだけ見せて、「全文を読みたいひとはnoteへ」と誘導するなどの設計にしています。

こうしている理由の一つは、我々のターゲットが若いひとだからです。アンダーアーマーは若い世代にあまり知られていないので、とにかく知ってもらおうと。

ただ、若いひとたちは企業の動画をなかなか見てくれないんです。たとえば30分くらいのすごくいいインタビュー動画を上げたとしても、すぐ離脱されてしまいます。いまはTikTokで15秒とかの時代なので、1分ですら長いかもしれず、30秒以内の短い動画を多くつくっていますね。

和田 私も最初は15分〜30分ぐらいの動画を上げていたんですが、去年の後半ころから3分程度のものを出すようにしました。私が自由にしゃべるスタイルの「ちょっとした小話」というシリーズです。これだと短いので収録も編集もラクなんです。話す内容は、自分のツイートでいいねが多かったものをお題に選んでいます。

━━minne LABの動画を拝見すると、和田さんは完成形を目指すのではなくプロセスをたのしんでいる感じがします。

和田 そうですね。まず完成形を目指すのを諦めるのが肝心だと思います。私の場合は1人でやっていることもあり、いきなりかっこよくは絶対できないので。

たとえば、YouTube動画の収録の様子を公開しているインスタライブでは、失敗したところも全部見せています。初見の方はびっくりされるんですが、ライブ中に急に宅配便が来ても普通に応対したり。「ちょっと待っててください」と言うと、みなさん待っててくださるんです。

松元 まさに「プロセスエコノミー」ですよね。過程を見せることで、和田さんに親近感を抱いてもらってファンになってもらうという。

でも日本はまだ「完パケ」なんて言葉があり、完成された100点のものを出さなければという意識があるのかなと思います。

それに対しては、たとえば何かをやっている途中でいま頑張っている姿や、開発の途中でこんな苦労がありながらやっているというプロセスを見せることがコンテンツとして価値があるんだと浸透させ、実績をつくっていくしかないと思います。

再生回数より、好意的なコメントが多いほうがいい

━━動画をつくるときに意識していることはありますか?

和田 もっとおもしろいものをつくろうとか、再生回数を稼ごうとすると、どうしても過激な方向に行ってしまったり、言ってはいけないことを言って事故を起こしてしまうということがだれにでも起こりうると思います。

なので私としては、どんなに回数を重ねても、「だれか1人のために届ける」というところを守っていきたいと思っています。

松元 コアなファンをつくるということを意識しています。再生回数よりも、好意的なコメントやいいねがたくさんついているといったエンゲージメントの方を重要視することもあります。

ちょっと極端なたとえですが、再生回数が5万回だけどコメントが全然ついていない動画よりも、再生回数は5,000回だけど好意的なコメントが50件ついている動画のほうが、場合によっては価値があると思っています。

━━最後に視聴者の方に向けて、明日からこういうことをはじめてみるとやりやすいというヒントをいただければと思います。

和田 アウトプットの習慣をつけることがすごく大事だと思います。ネタはなんでもよくて、たとえばせっかくこのイベントを見ていただいたなら、その感想を書いていただくのもいいと思います。和田がこんなことを言っていたとか、徳力さんや松元さんがこういう話をしていたとか、アンダーアーマーのあの製品がかっこよかったとか、なんでもいいんです。そういうアウトプットを出してみると次に続くんじゃないかなと思います。

松元 和田さんと同じになってしまいますが、何かしらアウトプットしてみることは大事です。僕はもともと動画を撮る習慣はなかったんですが、たまたま娘を撮ってInstagramのストーリーに投稿したらたのしくなったんです。スポーツ現場でいろいろなランナーの方を撮らせていただいているうちに、だんだん感覚がつかめてきた部分もあります。

いまはスマホでだいたい撮れますから、まずは自分の好きなものを動画に撮ってみるのがいいんじゃないかなと思います。

━━自分の好きなものを撮る練習をするところからはじめるのはいいですね。そこから自然と仕事にも繋がっていくかもしれません。

おふたりとも、本日は参考になるお話をありがとうございました。

▼イベントのアーカイブはこちらからご覧になれます。

登壇者プロフィール

和田まおさん
GMOペパボ株式会社 minne事業部
作家活動アドバイザー 

2004年11月GMOペパボに入社。ネットショップ開業・作成サービス「カラーミーショップ」のデザイナーや運営責任者としてサービス立ち上げ時から5年あまり担当。2015年5月からは「minne LAB 世田谷(旧:minneのアトリエ 世田谷)」で作家活動アドバイザーに従事し、これまで4,000人を超える作家・ブランドと交流している。2019年4月には書籍『ハンドメイド作家のための教科書!! minneが教える売れるきほん帖』を発売。重版7刷。
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松元竜太郎さん
アンダーアーマー ランニング・マーケター

1982年生まれ。慶大卒。富士通株式会社を経て、09年に一般社団法人共同通信社に入社。アメリカンフットボール専門誌を復刊するなど、スポーツメディアの立ち上げ、運営に携わる。17年からは株式会社ドーム(アンダーアーマー)のインハウスエディター、コピーライターとして、オウンドメディアのコンテンツ・コピー制作に従事。現在はランニングカテゴリーのブランドマーケティングを担当している。
note / Twitter

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8月30日(火)13時から、「ファンとつながるプレスリリース活用法」をテーマに、アークランドサービスホールディングス株式会社のブランドである、かつやの鈴木さんと、東京たらこスパゲティの小林さんにお話しいただきます。広報担当の方はもちろん、マーケティングやSNSをからめたコミュニケーションに関わる方も是非ご参加下さい。

text by 渡邊敏恵


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