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ニュースを使ったスキルアップ! 日経COMEMOの人気著者に聞く、仕事に役立つ「ニュースの活用術」 #ニュースを読んで書く

さまざまな分野のリーダーたちが自分の知見を投稿するサービス「日経COMEMO」。今回は、COMEMO執筆陣の中から、Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長の伊藤羊一さん、サイバーエージェント専務執行役員の石田裕子さんのお二人に登場していただき、ニュースの活用術をお伺いします。

お二人は、ニュースは読むだけではなく、それを書いてアウトプットすることで真の価値を発揮すると言います。ならば、どのニュースを選んで書いたらいいのか? そもそもどのように書けばいいのか? ニュースにまつわる情報収集の方法から仕事論まで、お二人の話が展開します。

▼アーカイブ動画は下記よりご視聴いただけます。

自分とニュースの関わり合い

——お二人は日経COMEMOにコラムを書いていらっしゃいます。ビジネスパーソンが発信を行なっているわけですが、まずは伊藤さん、いつもどのような思いで書かれているのでしょう?

Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長
伊藤羊一さん

伊藤 世界で起きていることと自分との関わり合い、(自分と社会が)繋がっているのではないか? を意識して書いています。もともと僕は銀行員だったのですが、当時は人事情報やどこかに工場を作るかという情報にアンテナを張って、いち早く知るのが仕事でした。

その後転職をしたのですが、今度はさまざまな情報が商売のネタになってきて、仕事を通じて自分が社会と繋がっているんだと思うことが増えていったんです。そんな中、東日本大震災が起きまして、その時「社会と自分が繋がっていることを意識するってすごく重要だな」と強烈に思って発信を始めたという感じですね。最初の頃はTwitterやFacebookでちょこちょこと書いていました。

——そこからじわじわと習慣化していったんですね。石田さんの場合はきっかけは何だったんですか?

サイバーエージェント専務執行役員 
石田裕子さん

石田 私は(1年半ほど前に)日経COMEMOさんからお話をいただいたことなんです。それまでは何もしていませんでした。SNSはアカウントを持っているだけで「読み専」でしたし。ですから、最初は「なんで私にお話が?」と思いました。

でも、自分でアウトプットして徐々に気づいたのですが、それまでの自分は情報をインプットしても、何の価値も生み出していなかったなと。自分の情報感度が低いと思ってはいませんでしたが、「ちょっと仕事で話せるかも」程度の感覚で情報をインプットしただけで知っている風になっても、アウトプットしないとそれに何の意味もないなと自覚できたんです。

おそるおそるアウトプットしていく過程で視野も広がりましたし、インプットした情報を整理して自分なりの言葉で誰かに伝えようと努力するプロセスで、自分のためにもなってリターンが返ってくるんですよね。

——石田さんは会社のポジションは上の方だけれども、突然無理やり(発信の)この場に連れてこられたような感じなので、今イベントを見ている方は、自分に近づけて聞いていただければと思いますね。

書く題材はこうして選べ!

ニュースは山のようにありますよね?(徳力)
世の中で起きていることを結びつければ、何から何まで題材になります(伊藤)

——次に、書く題材をどのように選んでいるかをお伺いします。書き始めたいという方からは、よく「ネタがない」と言われますが、一方ニュースは山のようにある。お二人はニュースをどのように選んでいますか?

伊藤 世の中で起きていることは何から何まで題材になるんですよね。COMEMOで書いた例では、北京オリンピックで起きたことを、仕事に置き換えたものがあります。

1つ目は(スノーボードの)平野歩夢選手が「小さい頃からの夢がかなった」と言ったのですが、人間離れをしている彼をもってしてもそういう言葉が出るんだな、と思った話、2つ目はジャッジについて、人事制度などの人が決めるジャッジはどうしてもでこぼこになるから、可能な限り透明にしないとだめだねっていう話。

——ニュースを、(自分ごとに)転換して(ネタにして)いるということですね?

伊藤 そうですね。ジャッジが問題になったというのは人事評価と同じだし、フィギュアスケートの(ワリエワ選手の)話も、経営者があんなところで曖昧な裁定をしたら……ということを記事にしたんです。そうすると複数の友達から、「羊一はいつも世の中で起きていることを結びつけることが大事だと言っていたけれど、こういうことか!」と喜んでもらえました。

——自分ごとにする能力が高ければなんでもいけますね。今のお話を聞いて、石田さん、いかがですか?

石田 私にとっても大事なポイントです。それから、私は意外とネタに困ったことがなくて。なぜかといえば、流れてくるニュースや情報に対して、「じっくり後で考える」「参考になった」「必要ないから捨てる」というように、自分の中で瞬時に取捨選択をしているんです。

たとえばつい最近Z世代について書いたのですが、これも日々の会話の中に出てきたり記事で見かけたりもする中で、記事のコメントやオピニオンって、本当に正しいのか? 自分や周辺の人たちに置き換えた時にどうなんだろうということで書いたんです。

——Z世代絡みの話を聞いたり読んだりしていて、それをストックしていたんですね。

石田 そうです。「これを書こう」とゼロベースで文字を打ち始めるのではなくて、自分の中では3カ月くらい前からストックしているんです。いろんなピースを合わせて、その中で「自分だったらこうかな」という見解をアウトプットしている感じです。

——これは本格的なコラムの書き方ですね。そこで大事になってくるのはネタ帳だと思いますが、何に溜めているんですか?

石田 自分のSlackに飛ばしていたりですとか、メモに溜めていたり、そのうち一気に整理するということもやっています。

アウトプットがスキルアップに直結する

インプットしたら一言でもいいからアウトプットを(石田)

——これまでお話を聞いてきて、お二人とも成功されている方なので、見ている方は自分とは違うポジションと思われるかもしれませんが、逆に、もし今自分が若手社員だったとして、こういう発信を始めるとしたら、どのようなアドバイスをしますか?

石田 実は先日、新入社員向けに「インプット研修」というものをやったばかりなのですが、「これはアウトプット研修なんだよね」と話しました。

先ほども言いましたが、インプットして終わりだと本当に意味がない。一言でもいいし、メモに残したりそのテーマについて議論をしてもいいのですが、何かしらアウトプットすることを意識してくださいということです。自分のスタイルや仕事の業務量、能力によってできる範囲は違ってくると思いますが、まずは1インプットで1アウトプット、みたいな。

——誰かに説明しようと自分の中で消化するだけで違いますよね。

石田 全然違いますし、極端に言えば、インプットをすごく頑張ったからといって、仕事で評価されるわけではないんですよね。

——伊藤さんは実際に学生さんに教える立場でもありますが?

伊藤 僕は「読み返せ」ということをよく言っていますね。おっしゃる通りアウトプットありきということですが、アウトプットしたものを、他人が読んだつもりになって自分が読んでみて、面白ければいい文章だし、面白くなかったら変えたほうがいいよねということです。僕はVoicyもやっていますが、自分の録音も聴きまくりますよ。

——PDCA的なことをされているんですね?

伊藤 この出だしでよかったっけ? とか、独りよがりな言葉を使っていないっけ? とか、トータルでワクワクしてくるっけ? とか、構成を考えるよりも、あとから見返すほうが圧倒的に時間が長いですね。

オリジナリティをつけるには?

「自分はこう思う」がオリジナリティ(伊藤)

——ここからは質疑応答に入りたいと思います。発信のオリジナル性はどのように身につけるのでしょうか? という質問がきています。オリジナル性、自分らしさについて。

伊藤 結局ね、今日はこうして3人いて、3人とも違うことをしゃべっているわけです。その、「自分はこう思う」というのがオリジナルになる。当たり前ですよね? 生きてきた人生が違うし、やっている仕事も地域も違うから。

結果として結論が同じになることはあるかもしれませんが、「I think 〇〇」という、この感じかな。仕事もそうですよね? 仕事でも自分の意見を出してはいけないとつい思ってしまいます。でも違うんですよ。もちろん会社やチームのルールや状況、背景はありますが、「私はこの件についてはこう思う!」みたいなものは大事です。

——石田さんはどうですか?

石田 話が少しそれますが、私は執行役員という立場です。役員会という最高決議の場にいる意味って、「オリジナル」だからなんですよね。自分にしかできないこと、自分が感じられることそのものが、もう価値なんです。「それ全然違うんだけど」と思われたとしても、自分の意見をぶつけることで、初めてその会議に参加している意味が生まれる。

そう考えれば、自分ならではの視点をぶつけることが、オリジナリティになっていくということだと思っています。ですから、仕事の中でも自分の視点をどんどんぶつけていく、合っていようがいまいが。それが仕事であると思ってやっています。

——石田さんが情報発信を始めたのは1年半かもしれませんが、仕事の場ではずっとそういうことを続けられてきたんですね。オリジナル性はもともとあるんだと。

アウトプットを習慣化するコツとは?

続けるコツってありますか?(徳力)

——続けるコツ、習慣化するコツについても質問が来ています。情報発信に限らずアウトプットを習慣化するコツとしてお二人は何を挙げますか?

石田 (書く)本数を決めるということが、私は結構効いています。私の場合は月2本のご依頼をいただいて、それがちょうどよかったのですが、みなさんは自分なりの本数のターゲットや目標を決めるのがいいのではないでしょうか。自分の中で「ここまでにこれを出したい」ということを逆算して考えるだけで、追い込まれたどうしよう、と、習慣になっていくと思います。

伊藤 僕の場合は「振り返りの時間」を、どかーんと時間を空けるのではなくて1日5分でもいいから取っています。日記を書くのと同じで、クセにしてしまうんです。そうするとやらないと気持ち悪くなります。あとは、チームでやると続きますね。

——では最後になりましたが、ニュースを読んで書くという習慣がなかった人たちが、これまでのインプット偏重のスタイルを変えられるような行動のヒントをいただきたいのですが。石田さんからいかがでしょうか?

石田 私、今日の90分間で、話す立場でなければメモしたいことがいっぱいあったんです。それが習慣になると思うんですね。noteにいきなり書くのはハードルが高いというのであれば、まず今日感じたことだけでも……今Twitterで発信してくださっている方もたくさんいらっしゃいますが、これもアウトプットですし、どなたかと会話していても、そこから何か学びを得ようという姿勢が大事ではないかと思います。私もこの後メモに書き起こします(笑)。

——伊藤さんはいかがでしょう?

伊藤 ニュースの対象に思いを馳せるということが、すごく大事だなと思っています。「この決算を社長はどのような思いで発表したのだろう」とか、「この事件を起こしてしまった人はどんな思いだったのだろう」とかですね。それらは必ず背景があるんですよね。すると情報が単なる文字や記号ではなくて、インプットする時に、色がついてくるようになる。それを心がけると非常に面白いんじゃないかなと思いますので、意識していただけるといいかなと思いました。

——ビジネススクールではビジネスケースを見て想像することをしていますが、実はそれを記事で毎日リアルタイムでやると思えばいいんですね。毎日ビジネススクールに通っているようなものだと思って、ニュースを読んで、書いていただくといいと思います。今日はお二人とも、お時間をいただきありがとうございました。

登壇者紹介

伊藤羊一さん
Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長

日本興業銀行、プラスを経て2015年よりヤフー。現在Zアカデミア学長としてZホールディングス全体の次世代リーダー開発を行う。 またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてリーダー開発を行う。2021年4月 武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)学部長就任。代表作に56万部超ベストセラー「1分で話せ」。ほか、「1行書くだけ日記」「FREE FLAT FUN」など。
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石田裕子さん
サイバーエージェント専務執行役員

2004年新卒でサイバーエージェントに入社。広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、Amebaプロデューサーを経て、2013年及び2014年に2社の100%子会社代表取締役社長に就任。2016年より執行役員、2020年10月より専務執行役員に就任。人事本部採用育成部長兼任。
note / Twitter

text by 吉川大郎


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