サービスの現場で培った「接客の技術 = コミュニケーションの極意」をnoteで伝えるソムリエ・黒ワインさん #noteクリエイターファイル
noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、noteをきっかけにcakesで『サービスが愛だと言うのなら』を連載スタートした、ワインソムリエ・黒ワインさんにお話を聞きました。
福岡、銀座、横浜・みなとみらいの一流レストランで7年半、サービスマン・ソムリエとして腕を振るってきた黒ワインさん。サービスの現場で培ってきた「接客の技術」を後輩に教えるように、noteを綴っています。
2020年6月からスタートしたcakesの連載では、その接客の技術を恋愛コミュニケーションに生かせるよう、「目の前の人を幸せにするためのスキル」として伝授してくれています。
たった一人の若者に「サービスのあり方」を伝えたくてはじめたnote
「そもそもnoteは続けるためにはじめたわけではなかったんですよ」
黒ワインさんの1本目の投稿は、たまたま自分のTwitterのタイムラインに流れてきたレストランに従事する若者のツイートに思うことがあり、一人の先輩として、彼に自分の考えを伝えるために書いたものでした。
「Twitterの140字では伝えきれないと思って、友人に聞いたら長文で書けるプラットフォームとしてnoteを教えてくれて。試してみたら、デザインもシンプルで使いやすい。彼に届けばいいなと思って書いたものなので、他の人に読まれることは想定していなかったんですが、思いがけず多くの人に読んでもらって、びっくりしました」
2000を超えるスキがついたその記事は、Twitter上では賛否両論が巻き起こり、黒ワインさんの元に多くのコメントが届きました。
レストランのサービスマンがここまで考えてくれているなんて知らなかった
レストランに行ってみたくなった
そんな反響に背中を押されるようにして、黒ワインさんは、サービスの仕事を通して学んできたことをnoteに書き続けるようになったのです。
自分が培ってきた「サービスの正解」を後輩に教えたい
数本投稿したのち、黒ワインさんは有料マガジン「接客について先輩が教えてこなかったこと」をはじめます。
有料マガジンをはじめた理由は?
「もともと僕は自分が学んだことを人に教えるのが使命だと思っているんです。料理人がレシピを晒した方がいいと思っているのと同じように、自分の接客の技術も積極的に公開した方がいいと思っています」
黒ワインさんが一貫してnoteで伝えたいことは、「サービスの正解」。
「“サービスには正解がない”と言われるんですが、僕はあると思っているんです。もちろん、100人のお客様がいれば100通りの正解がある。でもそれを全部覚えればいいと思っています。それはもちろん“僕の正解”ではあるけれど、技術を磨くなら、自分の正解を決めて突き詰めていくしかないと思っていて。
たとえば、僕が正解だと思っていることは、ワインをおすすめするときにただ品種を説明するのではなく、テーブルの会話を聞いて観察して、その人に届く言葉を探すこと。あとは、お店側はあくまで相手を喜ばせたいと思っている“ホスト”が“ゲスト”をもてなすサポート役であって、出すぎたことはしちゃいけない。お客様とはいえ“ホスト”とサービスマンは協力関係にあるということです」
公開当初の記事の価格は1本あたり100円。あえて有料にしたのは、読みたいと思っている人にちゃんと届けるため。
「読みたい人にだけ読んでほしいと思っているので、学ぶ意欲がある人に届くように、最低価格をつけています」
自分にとって「当たり前」だけど、人にとってそうではないことを書く
黒ワインさんがnoteに書く“サービスの正解”は、恋愛をはじめあらゆるコミュニケーションに通じるものがありました。そこに目をつけたnoteディレクター志村の提案でcakesの連載がスタート。
「サービスって恋愛にも通じるものがあるんです。実際に僕も接客の技術を活かしたらモテました(笑)。
cakesは、週に1回、テーマも内容も担当編集の志村さんに相談しながら、がんばって書いている感じですね」
一方、noteは更新頻度を決めることもなく、「書きたいときに書きたいことを書いている」そう。Twitterでのつぶやきなど、誰かの言葉に刺激を受けて、衝動で書くことが多いと言います。
「自分にとって当たり前だと思っていたことが、他の人にとって当たり前ではないと気づいたときに、いてもたってもいられなくなるんですよ」
黒ワインさんが書くときに意識しているのは、話すように書くこと。
「教科書的な言葉ではなく、後輩にアドバイスをするような気持ちで、話し言葉を書き言葉にしています」
接客を本気で学びたい人に1本5,000円の記事を公開
黒ワインさんがこれまでnoteを書き続けてきてよかったと思うことは主に2つ。
「一つは、飲食業界以外の人とつながることができたこと。noteを読んでくれた人とTwitter上でつながってオフ会を開きました。もう一つは、接客を本気で学びたい人とつながれたこと。伝えたいことはたくさんあるので、これはかなり嬉しいですね」
手応えを得た黒ワインさんは先日、接客を本気で学びたい人に向けてその極意を書いた1本5,000円の記事を公開しました。
「価格は悩みました。ここに書いてある“僕の正解”は、これまで自分の労力も時間もお金もかけて血肉にしてきたことなんです。飲食店で働きはじめた頃ってお金がなくて、手取り10万とかで、家賃と光熱費以外は、毎月ワイン会に参加して、女性を連れてレストランに行ってボトルを開けて、学ぶために使ってきました。下着以外服も買えなかった。
自分と同じことをしてほしいとは全く思わないけど、身銭を切らないと身につかないんじゃないかとも思っていて。僕は飲食業界で働くサービスマンの労働価値を上げたい。そのために自分に教えられることがあって、伝えられる場所としてnoteがあるから、書き続けています」
飲食店のサービスに従事する人はもちろん、医師や経営者にも人気な黒ワインさんのnote。目の前にいる相手を喜ばせるサービスの技術は、あらゆる仕事、そして恋愛をはじめとする人間関係に通じるもの。みなさんもぜひ、noteを通じて黒ワインさんの接客の技術=コミュニケーションの極意に触れてみてください。
■クリエイターファイル
黒ワイン
日本ソムリエ協会認定ソムリエ。イタリアワイン専門。好きな作り手はジーニ、ヴィエディロマンス、バローネピッツィーニ、レマッキオーレ、カラビオンダ、ラルコなど。
note:@vino_cavolfiore
Twitter:@vino_cavolfiore
text by 徳瑠里香