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noteを使って料理レッスン 料理家・大原千鶴さんのあらたなチャレンジ

料理家の大原千鶴さんは、テレビ出演や雑誌連載などで活躍するかたわらで、noteでは「大原さん家のリアルごはん」という月額制コミュニティを運営。

大原さんがふだん自宅で食べている「シンプルで美味しい家庭料理」を毎月取り上げ、メンバーシップ加入者向けに料理のレッスンをライブ配信しています。

大原千鶴さんのメンバーシップ「大原さん家のリアルごはん」。ライブ配信やアーカイブ動画はもちろん、レシピや調理のコツをまとめた記事なども公開されています。

オンラインの料理レッスンで工夫しているポイントや、料理家がnoteを使うメリットについて、大原さんに聞きました。

テレビでは伝えきれないことを届けたい

ーーnoteをはじめたきっかけはなんですか。

大原千鶴さん(以下、大原):ふだんはテレビの料理番組できっちりとした調理工程をお見せしているんですけど、本当は料理っていい加減なもの。どう辻褄を合わせるかってところが料理上手になるためには大事なんです。

たとえばナス。

家庭によって消費したいナスの分量は違いますし、使っている鍋のサイズや素材も違うので厳密に同じにはなりませんよね。夏と冬ではナスの大きさもまったく違います。夏は冬の倍になったりもします。

それじゃ、ナスの分量が倍になったら、例えばお醤油も2倍に…? いいえ。料理上手な人はそんなとき1.5倍くらいにおさえるんです。

そういったテレビでは伝えきれない辻褄合わせのコツを、もっとカジュアルにお伝えしたくてはじめました。

最初は超ドキドキではじめましたけれども、いまではメンバーシップに入ってくださったみなさんの反響を楽しみにしています。

じつはライブ配信をiPhoneで撮影してくれてるのは娘なんです。ふだんは娘に対して横から細かいことを言いながら料理を教えるなんてできないので、貴重な機会になっています。

娘が撮影をしながら、「そうなんや」とか「なんでそんなのするの?」と合いの手を入れてくれることが、みなさんにとっては「そこが聞きたかった」なんて共感を得ている部分のようで。

SNS大好きな高校生なのでやっぱり撮り方も上手だし、私がわからないことも全部教えてくれて、もう娘に感謝という形でやっています。

ーーオンラインでの料理レッスン、伝えるときに工夫していることはありますか。

大原:やっぱり映像だけだと流れていってしまいますから、わかりやすいように調理道具や食材についてはあらかじめテキストとして用意して、レッスンで説明した調理の手順もあとからすべて文字起こししています。

文字で残すことによって詳しく知りたかったところを、もう一回おさらいできればと。

料理に関する情報って無料のものも多いのに、私のメンバーシップに280人ぐらいの方が来てくださっていることに対して、感謝の気持ちがすごく強くて、だからあまりいい加減にはしたくないんです。

レッスンではみなさんが知りたいだろうなと思うことを、なるべくたくさん伝えるようにしています。たとえば6月のレッスンでは、みなさん、トマトは夏の野菜だと思っていらっしゃるけども、6月の下旬までがすごく美味しくて、そこから味が薄くなって、色も薄くなっていくっていう話をしました。

キュウリもこのぐらいの青さだったら皮を全部剥いたほうがいいとか、時期によって茶色くなっているものは苦味が出てるからよくないよとか、パスパスのやつは加熱調理に使ったほうがいいよとか。

そういう材料への見極めや、同じ材料でも状態は違いますから、切ったり、触ったりしてるうちに気づくこと、不安に思うことをたくさん伝えようとしています。

みなさんが知りたいことも双方向だからわかりやすい。それもすごくありがたいことだなと思っています。「調理器具はなにを使っているんですか」っていう質問は毎回いっぱいいただきますよ。

キッチンまわりもシンクの中も全部見せる

ーー現在280人以上の方が入会されています。手応えとしてはどうでしょうか。

大原:100人くらいからスタートできればいいかなと思っていましたが、思ったよりもたくさん集まっていただきました。入会も退会もやりやすいのがサブスクの自由さですから、「これは自分に合いそうだな」と思われた方がたのしんでいただけばうれしいです。

私、お客様のことは「同士」だと思っています。子育てをしたり、家を切り盛りしたりして大変ななかで、料理や生活をなんとかたのしみに変えている。そういう仲間に出会えているなと思います。

自分の料理教室をリアルの会場で開催する場合、どうしても値段が高くなってしまいます。それこそ1万円近くなることもありますし、キャパシティも10人〜15人くらいです。もちろん、そこに集まるたのしさもありますね。

noteは月額2000円。もう少し気楽な場所ですので、パジャマでも参加できますし、いつでも見れます。料理って本当はイベントじゃなくて、日常のことですから。そこのハードルが下がればと思います。

あとは時間がない中ですが、なるべくコメントを返したり、1時間のレッスンのあとに文字でも追加でお伝えしたりしていこうと思っています。

5分くらいでつくれる料理を知っていると、自分の時間をつくり出すために役立ちます。そういうコツをみなさんにお伝えして、自分の時間をつくっていただき、お金をそんなにかけずにエコに貢献できて、生活を豊かにしていくような料理が一緒にできればと思います。

ーー3年ほど前からTwitterとInstagramをはじめられて、今年からnoteをスタートしました。ネットで発信してよかったことはありますか。

大原:若い方々にリーチできたり、Instagramとかで交流ができたり、素敵なデザインや写真を見ながら刺激をもらっています。そんなに頻繁に自分のプライベートの写真を上げることは時間的に忙しくてできなくなってるんですけど、ネットのツールのおかげで自分の好きな世界が広がっていっているように思います。

SNSはどんどん流れていくフローの情報ですけども、noteで書き留めることができるようになって、違う情報の質のものが出せるようになってきたのはよかったです。

Instagramは写真が綺麗じゃないと気おくれしてしまって、ちょっと躊躇したりする部分もあるんですけど、noteはもっとリアルで、もっと正直。料理レッスンでもキッチンまわりは全部見せています。

1時間で3品つくって、これだけ喋っていたら「もういっぱいいっぱいですよ」って、シンクの中がごちゃごちゃしてるのも見せていました。すごくリアルなんです。

お客様はたぶん安心感があるかもしれません。きれいな写真に疲れている人たちもたくさんいらっしゃるんじゃないかな。

noteメンバーシップは収益面でも効率的

ーーnoteで得られる収益面について、大原さんをはじめとして料理家のビジネスモデルとしてはいかがでしょうか。

大原:基本的にいまはテレビのお仕事をして、書籍を年に4〜5冊出させてもらって、季節によって「おせち」のお仕事があったり、オリジナルの調理器具や調味料などの物販もあります。

そのなかで手間を考えたら、じつはnoteはとても効率がいいんです。もちろんテレビは信用を得るにはいいかもしれませんし、書籍は売れたら大きいわけですが。

月に1回、ライブ配信をする日は夕方から準備にかかりっきりになりますが、それ以外はそこまで大きなカロリーはかかりません。noteの投稿を見ているとかなりおもしろいものもあったりして、みんなが表現者。たのしいコミュニティになっていると思います。

ネットならではの新しい出会いもありますし、私の料理教室に来てくださっている方で、さらにnoteのコミュニティにも参加いただいてる方もいますよ。

ーー料理家のみなさんや飲食関係の方々、note活用の可能性はたくさんありそうですね。

大原:はい、そう思います。やっぱりnoteはネットのなかでも自分とお客様との距離が近い場所です。お客様からの共感の気持ちがとても強いように思います。

だから自分には提供できるネタがないと思った方も、これまで自分が苦労したり、大変だったりしたこととか、自分のことを正直にさらけ出すことで得られる共感って絶対にあると思います。

そういったことを臆せずに表現できる場所は、いますごく大事ですし、そこで表現していくうちに自分の表現方法も上達していくし、それが最終的にお金につながることも出てきます。

noteは自分の世界と他人をつなげてくれる場所。だからまずは書いてみる。そこで自然とグループを広げていって、自分本来の価値を認めてもらえるような場所にできればいいんじゃないかなと思います。

まずはやってみてほしいし、誰でもお金を受け取れるわけじゃないけど、幸せの種がそこにあるはず。自分のためにチャレンジしてほしいと思います。

大原千鶴さん
note:https://note.com/ooharachizuru/
Twitter:https://twitter.com/oohara_chizuru


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