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「やがて哀しき外国語」を乗り越える

#私の学び直し  英語学習

小説家の村上春樹は、1991年、ニュージャージー州プリンストン大学の客員研究員として招聘され渡米して現地で二年間暮らす。その間に見聞したアメリカでの日常生活を綴ったエッセイが「やがて哀しき外国語」というタイトルで書籍にまとめられている。例えばアメリカの生活で床屋へ散髪に行くのは、結構大変なことであるらしい。本書に出てくる。

外国語(英会話)で苦労する話は、日本ペンクラブの会長を務めたこともある作家の井上ひさしの著書にもある。昭和の高度経済成長期の時代に、昭和9年生まれの井上は仕事で家族を伴ってオーストラリアを訪れた。ある時、家族でキャンプに出かけ炊事の支度をしていると、隣りには同様の外国人の家族がいた。そこで井上家の人々は外国人から話し掛けられる「Why don't you join us!」終戦の年、小学生だった井上の受けた英語教育は今とは違う。今の時代なら「Why」と連発をするテレビタレントがいたりもするが、文字通り「何故しない」と脅迫的な意味合いで受け取ってしまう。一緒にキャンプをしましょうというお誘いであるのに!

また昭和の昔、ある記者がアメリカの飛行機に乗った折、スチュワーデスに"アイス珈琲”が欲しいとそのままの言葉で伝えたが、散々繰り返し「ice Coffee」と連呼するも伝わらず、最後に出てきたのはウィスキーの入ったアイリッシュ・コーヒーだったなんて話も。

テレビアニメの「名探偵コナン」の話に、英語のshineという単語をローマ字読みで「死ね」と読んでしまって事件が起きる哀しい話がある。

日本人の母国語は日本語。マザー・タング(お母さんの舌)から学んだ言語より他にまさるものはない。国際化・グローバル化が進んで、ネイティブだけではなく、バイリンガルの人の存在も注目されて久しいが、一から異国の言葉を習得するのは難しい。「やがて哀しき外国語」である。

習うより慣れろ 好きこそモノの上手なれ

まだ若い時、自分も様々な英語学習を試みた。ラジオ講座、英字新聞、ペーパーバック、吹き替えなしの字幕スーパーの洋画をみたり、英会話教室に通ったり、通信教育を受けたり…。語学試験に挑戦したり…。

自転車に乗る事であったり、水泳を覚えたりすると云うような、人間の身体に修得するものは、まず「習うより慣れろ」である。「好きこそモノの上手なれ」という言葉もある。

ビートルズの歌が自分は好きで、その歌詞を暗唱して歌ったりして高校時代に自分は英語を覚えた。或いは逆に外国人が日本文化に興味を持っていることを逆手に取って、観光通訳ガイドの教科書を用いて、日本について自分のよく知っている事柄を翻訳しているもので英語を覚えたり、「ひらがなタイムズ」という雑誌もある。これは外国人の日本語学習のための書物で、日本語の平仮名、ローマ字読みのフリガナ、英訳文などが掲載されている。「本の虫」と云う言葉があるが、言語の虫となって言葉集めを趣味にするのも一興かもしれない。

外国語学習は、マスターしようという教育的な活動の意図も大切ではあるが、自分は「習うより慣れろ!」「好きこそモノの上手なれ」で気楽にまずは取りかかる事が良いと思う。

文:相田久美子
ハンドルネーム:沙菜子(36sanako)

#私の学び直し  #COMEMO #日本経済新聞


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