マイナスの共通項

2020年1月。国内で新型コロナウイルスに感染した人が初めてなくなった。

当時のぼくはコロナをなめていた。まる2年ほど海外に行けなくなる、マスクをつけながら生活する生活を強いられるようになるとは思わなかった。


コロナの社会になってからよく話される話題がある。それは自分たちはコロナのせいでこれができていない、あれが無くなったという話題だ。ぼくたち大学生なら海外留学ができなくなったやサークル活動ができていない、キャンパスに通うことが無くなったなどであろう。高校生であれば、運動会や文化祭、修学旅行が無くなっている。年代の異なる人たちと集まって話すときなどは特にこの話題になりやすい。互いの共通の話題になりやすい、それぞれにエピソードがあるという点において、このことが話しやすいのはなんとなくわかる。しかし、僕はこの話題があまり好きではない。なぜなら、この話題はただ話しやすいだけであり、もしコロナがなかったら、もうちょっと異なった大学生活があったかもしれないということを思い起こさせるからである。コロナウイルスが流行し、僕たちの日常は大きく変わってしまった。あれほどたくさんいた外国人観光客はまったく姿を見なくなり、あんなに簡単に行けた外国はこの二年間一度も行っていない。行きたかったJICAのプログラムは選考の前に中止が決まり、毎年のように行っていた英国への派遣事業は僕が大学2年の夏に高校生17名を連れて行って依頼、復活の兆しはない。


なくなったもの、あったはずのものを考え始めればきりがないのが僕たちの世代の大学生だろう。


僕はこの春から大学院に進学する。まさか、自分が6年も大学に通うことになるなんて思いもしなかった。大学1,2年のころは海外留学、国際交流に興味があった。高校での海外派遣制度が充実していて、毎年英国やドイツ、台湾などから同年代の若者が来日し、僕らと交流活動を行っていた。彼らを連れて、お台場や浅草を歩いた。日本の当たり前の日常に目をキラキラさせているのが、面白かった。また、どんな国の人でも英語を使えば、会話をすることができることを実感し、世界のどこであっても繋がっていけるようなワクワクを感じていた。大学3年ではもっと広い世界を見てみたいと思い、休学をし、世界中のいろんなところを回って、NPO法人などがしているボランティア活動に参加するつもりだった。しかし、それはコロナによって叶わぬ夢になってしまった。コロナによって海外に行けなくなった僕は水産業に興味を持ち始めた。きっかけは2020年6月に参加した青森県のサーモン養殖業者でのインターンだ。二週間という短い期間だったが、水産業って面白いなと感じることができた。大学生の前半を国際交流につぎ込んでしまった僕は、水産業の知識などは全く無かった。かつて、水産大学と呼ばれた大学にいっておきながら、学校で学べることをなおざりにしてきていた。大学で学べることをもっと大事にしたい、水産についてもっと詳しくなりたい。そうおもえるようになったのは、コロナによって閉ざされた社会になったからかもしれない。


コロナによってできなくなったことはわかりやすいし、話しやすい。しかし、無くなったものを考えていても何もはじまらないし、有意義であるとは思えない。これからは、ちょっとずつコロナによって得られたものを話し合えるようになれたらいいなって思う。きっとそれも、皆それぞれもっているはずだから。



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