第五話 続き
日香は家に帰りました。
「・・・このゼリー、すごくおいしそう・・・!」
日香の目は、輝いていました。
日香は、少しだけ、不思議な気持ちになりました。今まで、どんな人でも恥ずかしかったのが、あの三人と話している時は、そんなに恥ずかしくなかったのです。 三人は、日香のことを、真剣に聞いてくれました。
「・・・・ 食べてみよう・・・!」
日香は、ゼリーを食べました。
すると、ふわっと、サイダーの爽やかな味がしました。
「おっ、おいしい・・・!!!」
サイダーの味は、心のわだかまりを吹きとばしてくれました。
「おかしいな・・・味がそうってわけでもないのに、あの三人もここにいないのに・・・三人に励まされているような気がする・・・!」
日香はそれから、ずっとサイダーの味を忘れませんでした。
**********
ピアノの発表会当日です。
日香の心臓は、ドクンドクンと、高鳴っています。震えも止まらず、寒気もしてきます。汗がダラダラとたれていきます。
(どうしよう・・・こんな時に・・・こんな状態じゃ、ピアノなんてうまく弾けっこない・・・・!!)
そんな時です。日香は、三人の笑顔を思い出しました。
パフェの、優しくて綺麗な笑顔を、
いちごの、明るくてすてきな笑顔を、
スピカの無邪気で元気な笑顔を・・・・・・
あの爽やかなゼリーの味を・・・・
『続いて、工藤日香さんの、” 七夕星 ” です。』
そして、星たちの応援を思い出して、日香は一歩踏み出しました。
(あの三人を思い出せば・・・きっと大丈夫・・・!)
「ふーっ・・・はぁ・・・・・」
日香はピアノの鍵盤に手を置きました。
そこには、ピアノの旋律が響き渡りました。
その、美しいことといったら・・・・!
その音は会場内の皆にこう思わせました。
「星のまたたきみたいな、爽やかな音だ・・・!!」
**********
次の日。
日香はある山のふもとまでやって来ました。
パフェといちごとスピカに、お礼を言うためです。
「みなさん、こんにちは!」
「あっ・・・!日香ちゃん!!」
いちごは手を振りました。
「ああ!!久しぶり~!! って、まだ四日しか経ってないけどね~」
スピカが、大きな声で笑いながら言いました。
「日香ちゃん、発表会、どうだった!?」
パフェは、日香に言いました。
「それは・・・おかげさまで、ものすごくうまく行きました!!」
「ふふふ・・・」
三人が、何かくすくすと笑っています。
「え、三人とも、どうしたんですか・・・?」
「ふふふ、やっぱり知らなかったのね~!」
いちごは微笑みながら言いました。
「え、ええっ?ほ、本当に何ですか!?」
「実はね、私たち、あそこの会場に来てたのよ!!」
「・・・・えええっ!??!?」
「いやあ、あれ本当にすごかったよ!!とくに、最後のところ!!めちゃくちゃきれいな音だったんだよね~!!ポロロロロンッって!!」
スピカは日香に向かって言いました。
「そ、そんな ――――」
日香は、『そんな、私なんか下手で・・・』と言いそうになりました。でも、言いませんでした。
あの時、思ったのです。ピアノを弾くのが楽しいって。ずっと、止まらず、指が動き続けていたのです。それに、ゼリーのパワーだってありました。
あれが、下手だなんて・・・思えなかったのです。
「・・・来てくれて、ありがとう!」
日香は、元気にはにかみながら言いました。
「えっ、ああいうこと言ったら、恥ずかしがると思ったのに・・・」
「ううん、みんなのゼリーのおかげで、素敵な演奏が出来たんです。みんなの力のおかげで、私は今、こうしているのです!!」
「・・・そっか、役に立てたなら嬉しいよ!!」
「はい!!」
日香にはもう、悩みなんてありません。ピアノのことで、自信が無くなることも、もうありません。
その心は、キラキラ輝く星空のように、澄みきっていました。
《終わり》 六話へ続く!!
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