メモ三


ここまで述べてきた私見を少しまとめる

・我々の知覚には時間の幅がある
・我々の知覚は時間の幅により常にリアルタイムから少し遅れている
・我々は知覚することによって "何か" を切断しておりその結果知覚認識しているのが三次元である
・三次元よりも "何か" は今である

突然で申し訳ないが、準備は出来たと思うのでここで飛躍しようと思う。

四次元(いや、**)は、常に同時である。私はこう思う。
パラパラ漫画の例えを思い出してほしい。何かを切った結果の産物として三次元がまるで一ページ毎に存在するのだとして、その切断されたもともとのものを四次元と捉えてみる。それは我々にとっては、常に切断によって遅れることなく、またその為に時間の幅が存在しない。つまり、ある意味全てが同時なのである。そういう意味でーーー三次元的切断によって四次元の断面→三次元を認識しているという意味で、我々はその二つの次元のグラデーション的な間のその都度うまれるとあるそれぞれの切断点を起点にそこにそれぞれ跨がっているということなのだ。グラデーションとは、いわば時間的にも無数なあらゆる切断面の換言である。
実はこの文章自体、自らの思考と『制作へ』とを照らし合わせるようにしているものなのだが、以下に説明の拙い私に代わって補助をしてくれる文をそこから引用した。

"彼はこの三次元の世界の中にある物体を、四次元物体の「影」としてとらえようとしている。ヒントンをはじめとする四次元の思想家たちは、一次元:二次元:三次元:四次元と次元を増やしていくときにおこることのアナロジーを使って、四次元知覚なるものを、思考可能にしようとしていた。デュシャンは、その逆を行ったわけである。彼は三次元の立体が二次元の平面に影として投射されるとき(そのいちばんいい例が写真である)、ディメンションがひとつだけ減ることに注目した。つまり、次元数のちがうふたつの世界が出会って、そこに切断の現象がおき、横断面がつくられるとき、かならず次元数の高いほうが、ひとつだけ次元を減らしながら、そこに影をつくりだすのだ。このアナロジーを使うと、三次元世界の物体はすべて、四次元物体の影であり、私たちが実在と信じているものは、実は「射影」の現象にほかならないのだ、ということになるだろう。" 

ーーー中沢新一『東方的』よりーーー


知覚によって四次元を切断して横断面をつくりだし、そこーーー三次元を覗き込んでいる。
私はここからさらに、その知覚に着眼した。
例えばモンシロチョウは赤外線を認識する。赤外線は人間の可視光の波長の外であり、知識として知ることは出来ても見ることが出来ない。しかし、モンシロチョウにとってはその赤外線を、どのようにかはわからないが、確かに認識している。当たり前だが、このように各生物ごとに知覚は異なる。言い換えると、「切断の仕方が異なる」。もしかしたら、我々には三次元的に見えるモンシロチョウも、実は彼らの認識としては五次元くらいの感じで世界を認識しているかもなどと考えてしまう。際限がないが、しかし生活していても感じるように、人同士でも若干の知覚の差異があるのだから、個々のデバイスに出力される同じはずの世界の像が異なるのはあながち変でもないだろう。文字通り皆、それぞれのデバイスによって異なった切断の仕方をしているから、同じものでもそれぞれ見え方が違うのだ。ちなみにこの構図は次元に対しても適応できそうな気がしていて、「何か」「〜ではない」「世界」などと記せそうな、シャンカラによってはブラフマン、アートマンとして言われているようなものも、切断の違いによって次元や見え方が違うだけで、すべて同時であり同一であると私は考えている。
そしてその、一種切断元という意味で我々にとって本来的な同一、同時の場について、四次元が大きなヒントになる、あるいはそれこそが四次元のような気がするのだ。だからこそ私は四次元にこだわる。

我々は、それぞれの知覚によってそれを切断し、人間であれば三次元と呼ばれる形態に切り出し、並べて四次元の憧憬に生きるのだが、いわば、切断とは認識・知覚であり、つまり常に遅延を引き起こす事で都度四次元を切断し、その断面が三次元なのである。だから我々は、三次元と四次元のそのどちらでもないし、どちらでもあるところにおり、我々自身もそのような存在である。そして、これはあくまでも我々の知覚の場合の話で、また切断の仕方によって次元数が変わるならば、異なる知覚方法を持つ何者かからすれば、そもそも我々には三次元あるいは四次元的に見えるこれも、五次元、六次元的であっても何らおかしくない。

その名状し難いそれーーーそれ、とも言い難いがーーーをそれぞれの仕方で切断するとき、次元はうまれる。次元は断面のようなものだ。そして断面は無数にある。あらわれ方が異なるだけで、その全てが例の名状し難い**なのだ。

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