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内田光子様+MCO 2023/11/2公演の巻

サントリーホールで行われた、内田光子 ピアノ・指揮、マーラー・チェンバー・オーケストラのコンサートに行ってまいりました。

2016年に同じ組み合わせで行われた、モーツァルトのピアノコンチェルト、2回のサントリーホール公演で大感激した私にとって、コロナ禍による中止を経て、待って待って待ち侘びた今回の公演。

2015年以降の内田光子様のサントリーホール公演は、ブルーローズでの室内楽や講演を除いて多分皆勤賞だと思います。

今回は初めて娘と一緒に。

席はステージ後ろのP席です。

内田光子様の弾き振りで、ピアノの反響板も外してあるし、後ろから見た方が、指揮振りがよく見られます。

チケット代もかなり助かりますし、一席二鳥(笑)。

開場入口では「特別警戒体制」の看板が出ていて、手荷物のチェックをしていました。

内田光子様のコンサートには、いつも親交のある美智子上皇后がいらっしゃるので、今日もそうだとわかります。

それはいいとして。

内田光子様は、私にとって特別なレジェンドです。

ですので、余程のことがない限り、賛辞の言葉しか出てきません。

現代には、素晴らしい演奏家が星の数ほどいらっしゃいますが、この方の演奏は…。

客観的な解説は詳しい方にお任せするとして、私にとってどう特別なのかうまく説明がつきません。

その繊細なタッチは勿論のこと、とにかく心に深く届くとしか言いようがない。

遅れましたが、今日のプログラムはこちら。

モーツァルトの弾き振りと、
MCO単独のシェーンベルク。
(ヘッダー画像を含めて、サントリーホール公演チラシより)


さて、冒頭の25番。

音が出た瞬間から鳥肌が立ちます。
やっと聴ける…。

今日のピアノコンチェルト2曲、クリーブランド管とのCD音源よりも、MCOとの前回の来日公演よりも、今回の方がピアノがより自身の構築するモーツァルトの音楽の一部の要素として聴こえたのは、私だけだったでしょうか。

うまく言えてないですね。

ピアノ独奏とオケ伴奏ではなく、音楽を創り上げる指揮者がピアノ弾いている…。

ありゃ、そのまんまだな…。
うーん。

もちろんピアニストの指揮なので、意識が音楽全体に向いて作られ、自然にそうなっていくのだと思うのですが、こうして音楽家・内田光子のモーツァルトの理想形になった、という感覚を強く覚えました。

そして、もう数年来のパートナーとなっているMCOの演奏力…。

特にMCOのうち15人だけで演奏された、2曲目のシェーンベルクの室内交響曲1番。

モーツァルトでも聴くことのできた、美しく自在な表現力を持つ、完璧と言っていい演奏。

いずれもアバド創設ということもあるのでしょうが、ルツェルン祝祭管弦楽団の主要メンバーを務めるのも充分頷けます。

終わるや否や、会場はブラボー!の声と大喝采。
私も娘も大拍手!

メンバー全員素晴らしかったけれど、なかでも印象に残ったのは2人のホルン奏者。

こんなに美しいホルンはそうそう聴けないでしょう。

この曲、調べたらシェーンベルクが後期ロマン主義から実験的な曲へと変わっていく初期に作曲された曲なのだそうです。

正直、新ウィーン楽派は苦手で、今回の素晴らしい演奏で初めてその入口に立てた気がします。
…引き返すかもしれないけど(笑)。

そういえば、MCOの演奏は、2016年公演での武満徹「弦楽のためのレクイエム」が途轍もなく素晴らしかったことを覚えています。

構成人数は違えど、その高度な演奏レベルは、ベルリンフィルと変わらないと思います。

休憩あって、観衆が注目するのは、2階上手のRB席。

何人ものSPとお付きの方に伴われて、上皇と上皇后のご夫妻が、観衆に会釈をしながらいらっしゃいました。

いつもながら、会場が特別な雰囲気に包まれます。

後半は、27番。

演奏がよりこなれたせいか、25番のときより、ピアノもオケもより活き活きと聴こえます。

まさに至福のとき。
生きてて良かった。

そしてクライマックスを迎えて終演。
大喝采。

光子様、やまぬ拍手に出てきて、コンマスに指一本。

「1曲だけやらせてね」
だったのか、
「アンコール候補曲の1番目をやるわね」
だったのか、
いま思えば、
「1分だけ待ってね」
だったのか。

いずれにしても観衆も大喜び。

初めて聴いた曲ですが、唖然とするほど短いピアノソロ曲。

え?終わり?

肩透かしを喰らいましたが、恐らく誰のなんという曲か知っていた人は、会場で内田光子様と会場関係者と音楽評論家くらいしかいなかったのではないでしょうか。

カーテンコールは、会場総立ちの喝采の嵐でした。

その後、上皇ご夫妻が観衆にご丁寧に手を振ってご退場。

こうしてサントリーホール公演の1日目が終わりました。

会場出口にはこちらの写真。

クルターグ。
ご存命のルーマニア出身ハンガリー人の作曲家、ピアニストで教授だそうです。

娘と二人、コンサートの感想を話しつつ、来週の別プログラムの公演を楽しみにそれぞれの帰路に着いたのでした。

私の大好きな映画の寅さん、甥の満男との会話で、寅さんファンには有名な名セリフがあります。

満男
「人間は何のために生きてんのかな?」


「何だお前、難しいこと聞くなあ。ええ?」

 寅、しばし考える。


「うーん。なんて言うかなあ。ほら、ああ、生まれてきてよかったなって思うことがなんべんかあるじゃない、ね。
人間そのために生きてんじゃねえのか」

映画「男はつらいよ 寅次郎物語」脚本より引用


私はこういう日のために生きてきたと思えます。

クラシック音楽に出会えてよかった。

アークヒルズ内「つじ半」の海鮮丼にも出会えてよかった(笑)。

ではまたです。

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