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私の宝物〜松本記念音楽記念館② 演奏会編

前回の記事では、松本記念音楽迎賓館の施設と、管理責任者のYさんについて、私の宝物としてご紹介しました。

今回は、Yさんが企画された演奏会や、お手伝いをされた演奏会で、私が伺った演奏会をできるだけご紹介したいと思います。

ごめんなさい。山盛りの長文です。

ブーニンのブリュートナーによる吉村直美さんピアノリサイタル

留学以来ドイツ生活が15~6年という吉村さん。
この写真はスタインウェイかも。。


直近では、2022/12/11(日)に行われた、吉村直美さん(Pf)という、長い間ドイツで活動されていた(実はスタインウェイ・アーティスト)の方のリサイタル。

副題に、「S・ブーニン所持のグランドピアノで聴く名曲」とあります。

その名の通り、偉大なロシアのピアニスト、ゲンリヒ・ネイガウスの孫、そしてスタニスラフ・ネイガウスの息子という、ロシア・ピアニズムの血統を受け継ぎ、1985年に19歳で世界をあっと言わせたショパン・コンクールの覇者、スタニスラフ・ブーニン氏が所有しているブリュートナーによる演奏会です。

このブリュートナーは、ブーニン氏が15才の時に叔母の援助で手に入れたボリショイ劇場に置かれていたピアノ。

実はこのピアノには驚くべき事実が隠されていて、それを私が説明するのはあまりに深すぎる話です。

ブーニン氏の日本人の奥様がAERAに書いた記事を見つけましたので、ご覧ください。

とにかく、1985年ショパン・コンクールで19歳で優勝した頃は、このピアノで練習していたことは事実で、ブーニン氏自身、この思い出のピアノで30年ぶりに録音したCDも出ているようです。

最近NHK-BSでブーニンさん復活コンサートのドキュメントやコンサートの模様が放送されましたが、その情報も、ブーニン氏の奥様から情報公開日に真っ先にYさんに届き、我々音楽迎賓館ファンクラブ会員にもメールでお知らせ頂いたので、しっかり録画して拝見できました。

ブーニン氏ご夫妻は、東京とドイツに家があり、息子さんのレッスン用にこのピアノを使っていたそうですが、松本記念音楽迎賓館を気に入って、「このピアノを預けるに相応しい。是非。」との依頼がブーニン氏と奥様からYさんにあり、快くこれを受け入れたのだそうです。

元々Aホールにはベーゼンドルファーとヤマハのグランドピアノの2台があって、ピアノのレッスンにもこのAホールがよく使われていたそうですが、さすがに3台は置けず、ヤマハは1階の階段下に移動したそうです。

今回の演奏会のプログラムと曲のご紹介は、吉村さんのブログに詳細が出ていますので、こちらをご覧ください。

吉村さんの活動がわかる公式サイトはこちら

当日ですが、記事に上げる写真撮影のために早めに到着した私は、撮影を終えてまたまた図々しくも諸先輩方を差し置いて、1列目正面の席へ。

ヘッダーの画像はそこから見たブリュートナーです。

たくさんの曲を演奏していただきましたが、1909年製造のブリュートナーが出す音色は、なんと形容したらよいでしょう。

力強さもあり、優しさもあり、但しスタインウェイのような輝きではなく、ベーゼンドルファーの深みとも違う、客席のプロのピアニストの方が他のお客様に語っているのを耳にした「セピア色」という表現が比較的しっくりくる、歴史を感じさせる音でした。

中でも、後半のプログラムにある、ウクライナ民謡「鐘のキャロル」と、ブーニン氏と同様にロシアから亡命したラフマニノフの「モスクワの鐘」「プレリュード第5番」、そしてブーニンを世界で一躍有名にしたショパンの一連の曲は、吉村さんのMCで

「ピアノにはそれを弾いていた人の感情が宿っているものです。それをひしひしと感じながら今日弾いています。」

という言葉がまさにしっくりくる、このピアノの音色にぴったりの演奏でした。

「休日はできるだけチェロの練習に充てる」という私自身の目的のために、いつも遠慮していた演奏会後のお茶会に、今回初めて参加。

美味しいミルクティーを戴きながら、他のお客様たちと一緒に吉村さんとピアノや曲についての感想など、やりとりさせてもらいました。

このようなプロの演奏家と直接やりとりできる機会はそうそうあるものではありません。

これも松本記念音楽迎賓館だからこそ、あり得る温かさだな、とあらためて感じました。

次回も時間が許せば参加させて頂こうと思います。

私が伺った演奏会の全てに触れようと思いましたが、この調子でいくといつ終わるのか分からないので、特に印象深かった演奏会を抜粋してご紹介しましょう。

チェリスト加藤文枝さん
加藤さんのことは、音楽迎賓館でのこちらの演奏会で初めて知りました。

Vl.は加藤さんが尊敬してやまないという、
千葉精加さん。実力派です。

クラムの無伴奏チェロソナタは、ご本人の意向で、急遽リゲティの無伴奏チェロソナタに変更されましたが、いやいやとにかく驚きました。

華奢でおっとりした感じのこの女性チェリストが、私も初めて聴くリゲティの無伴奏を弾き始めるや否や、その高度かつ完璧なテクニックで、超難曲を軽々と弾きこなしていく様子は、ただならぬものがあり、テクニックでは定評のある、あのシュタルケルよりも完璧なのではないかとさえ思いました。

公式サイトが見つからないので、こちらで略歴をご覧ください。

「パルファム(Parfum)」というCDを出されていて、Apple Musicでも聴くことができます。

どの曲の演奏も素晴らしいですが、ここで聴けるショパンのチェロソナタは、私の知る中では他の誰よりも好きな演奏です。

ピアノを弾き、特にショパンが大好きな私の娘も、「加藤さん、とてもいいね!」と。

ショパンのチェロソナタを私が弾けるようになるのを心待ちにしている娘も、どうやら加藤さんがフェイヴァリット・アーティストの1人になったようです。

そして今年、Yさんの企画で加藤さんによる以下のレクチャーコンサートが開催されました。

ピアノは小澤 佳永さん。
アナリーゼのヘルプもされたそうです。

ブラームスのチェロソナタ1番をアナリーゼと演奏で説明していただける企画です。

プロの演奏家のアナリーゼとは、こういうものなんだな、と感心しきり。

最後にきっちり演奏もしていただき、大満足。

おまけにすっかり彼女の演奏のファンになった私は、Yさんが
「お帰りは演奏のお二人が見送っていただけますが、充分距離をとって、速やかにご退出くださいね」
と仰っているにもかかわらず、大胆にも、持ってきた彼女のCDとサインペンを用意して「サインもらえますか?」と。

快く書いてくれましたが、長い行列を作って待っている後続の方々とYさんには、悪いことをしました。

若い頃は控えめで遠慮がちだった私も、歳をとってどんどん無遠慮で図々しくなったことを実感する今日この頃です。

彼女の演奏会の情報がなかなかなく、見つけた赤坂の迎賓館での演奏会は、抽選で見事に外れました。

Yさん、できたらまた来年も企画をよろしくお願いします。


宮地江奈さん(ソプラノ)リサイタル
宮地さんは二期会のメンバーで、お若いのに既にオペラでも活躍中だそうです。
詳細はこちらの公式サイトをどうぞ。

ピアノは齋藤 亜都沙さん


当日のプログラムでは、私が大好きなヴォルフのメーリケ歌曲集からの曲も披露してくれて、さすが若手の実力派、歌が素晴らしいのは勿論ですが、キャラクターも明るく、とても好印象でした。

終演後は、例によってお茶会があり、宮地さんもお客様と交流されたそうですが、私は前述の通り、参加せずにその場を失礼しました。

ところが、Yさんから、
「宮地さんがお茶会に参加されてない方のメールアドレスを知りたいというのだけど、かまわないですか」
と連絡がありました。

今の若い方は積極的にお客さんと交流されるんだな、と感じ、
「公演の案内でもありがたいお話ですし、お断りする理由はありません」
と返信。

しばらくして、本当に普段お使いと思われるアドレスから携帯番号まで記載されたメールが。

リサイタルに伺ったことへの感謝の言葉などありつつ、チェロがお好きなんですね、と型通りではないお話もあり,。

私からは、
「声楽も好きです。ディースカウとアーメリングがフェイヴァリットで、メーリケは特に好きな曲なのでとても良かったです」などと、感想を2回程やりとり。

とても爽やかなお嬢さんで、更に好印象になりました。

お客さんが良い人だけだといいんですが、個人情報を渡す相手は気をつけてくださいね。

私は応援しています。

チェリスト藤森亮一さんリサイタル
これはYさんがお手伝いされた演奏会です。
言わずと知れた、N響の首席チェロ奏者を長く務めていらっしゃる藤森さんのリサイタル、私は2度伺いました。

1回目の公演。ピアノは2回とも村沢裕子さん

N響の首席で、かつての日本音楽コンクールの覇者です。
たしか私と同年代。

実は会社の上司が歴史好きで、戦国時代のオンラインゲームでよく戦っていたのが、この藤森さんで、オフ会でお会いしたこともあると上司から聞いていましたので、終演後にそんな話をしてみました。

ああ、あれはもう若い人は参加してこないんですよ、と。

あとから考えると、自分はなんでチェロじゃなくてゲームの話で終わったんだろう、と少しばかり後悔しつつ、また機会があったら、間近で勉強させていただきたいと思います。

池辺晋一郎さん作品の演奏会
池辺さんとYさんは高校1年のときのクラスメイト。その後も交流があり、この演奏会が開かれました。
演奏は、フルーティストの米津実穂さん。

プロフィールは米津さんが参加しているカルテットのサイトをご案内します。

公演のチラシが見つからないのですが、池辺晋一郎さんも客席でその演奏をしっかりと見届けていらっしゃいました。

作曲家の目の前で演奏された米津さんもさぞ緊張されたことと思いますが、演奏は素晴らしく、とても印象深い演奏会になりました。


オルガンの西 優樹さんのこちらの演奏会。
間近でパイプオルガンの演奏はもちろん、その足さばきやストップと呼ばれるレバーの操作をつぶさに拝見できて、しかもバッハの名曲が本物のパイプオルガンで聴ける、本当に得難い貴重な演奏会でした。

また是非伺いたいです!
あらためてパイプオルガンの写真

「福島にピアノを送るチャリティコンサート」を開催されているトリトン弦楽四重奏団
オンラインで拝見しました。
まず、お志しが素晴らしいですよね。
お誘いにもかかわらず、スケジュールの都合で一度しか拝見できておらず、申し訳なく思います。

そのほかにも、ご紹介できていない演奏会もあるのですが、Yさんが何らかの形で関わった演奏会のほんの一部を紹介させて頂きました。

♪ ♪ ♪

そうそう。
私が小6か中1のときに、親にせがんで家に設置させてもらった初の本格的コンポーネントステレオは、パイオニアの製品でした。

アナログレコードだったこともありますが、「あの頃の家庭用オーディオ製品はいい音だったなぁ」と思います。

その100倍以上の価格のオーディオ体験ができる松本記念音楽迎賓館。

お近くの音楽ファンの方にあらためてお勧めします。

最後にもう一度、この音楽迎賓館のサイトをご紹介して、この記事を終わります。

2回に渡る記事作成に、惜しみなくご協力くださったYさんに感謝しつつ。

それではまた。

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