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データセンタラックの契約・構築のポイント

クラウドが主流になった現在でも、
データセンタの需要は根強いものがあります。
本記事ではデータセンタのラックで
サービス提供する案件が発生したという想定で
一連のプロセスで必要となる知識を説明します。
必要な情報以外は読み飛ばして頂いて構いません。
何か一つでも参考になれば幸いです。

契約編
・契約のスケジュール
・契約のオプション
構築編
・機器のレイアウト
・電源

契約編

・契約のスケジュール

表1.データセンタラックの提案・構築スケジュール

データセンタのラックサービスは利用開始の
2ヶ月前には契約書の提出を求められることが
多いです。
注意すべきはラックサービスと同時に、
インターネット回線やAWSの専用線
(DirectConnect)などほか契約が
必要となるものがある場合です。
回線は3ヶ月前には契約書の提出を求められるなど、
より手前から準備が必要です。
また昨今の半導体不足により、
ルータなどのネットワーク製品や
サーバ製品などの中には調達に長い時間が
かかるものもあります。
発注の期限を踏まえた上で、それまでに客先から
発注してもらえるように見積もりを提示し、
スコープと費用感の擦り合わせを
進めていきましょう。
見積もりを取る上で、重要となる
ポイントを次節で説明します。

・契約のオプション

ラックサービスの見積もりを取るにあたって、
オプションサービスの考慮が必要です。
主なオプションとして以下があります。
 - ラックの大きさ
 - 電源系統とOAタップ
 - 棚板

ラックの大きさ

ラックには、フルラックとハーフラックが
あります。
設置機器の容量が倍近く違いますが、
値段も違います。
設置する機器の大きさや数を関係各社に確認し、
ハーフラックでおさまるのか、
収まるならどのような配置案とするのか、
まで考慮した上で見積もりを取るのがベストです。
取り急ぎ見積もりが必要な場合はフルラックで
一旦提示し、確認の上でハーフに切り替えても
良いでしょう。ラック図は後述します。

電源系統とOAタップ

ネットワーク経路がメインとサブで
冗長化された仕組みもあると思います。
その場合、それぞれの機器で電源系統を
分けたいという要件がある場合があります。
明示的に言ってもらえない場合が多いため、
見積もりを取る段階で確認します。
電源系統が1系統の場合と2系統の場合で、
ランニング費用は変わってきます。
またイニシャル費用についても、
OAタップの数を含めて系統数で
変わってきますので注意が必要です。
OAタップへの接続図についても、
ラック図に追記しておくことが望ましいです。
これも後述します。

棚板

これも見積もり時に必要な枚数を想定した上で
確認が必要です。
通例、何枚までは基本サービスの料金に含まれ、
それ以上は追加料金を取られるような
形となります。
棚板はデータセンタ側で用意し、
ラックへの設置はユーザ側という役割分担が
多いため、設置の工数を見込んでおきましょう。

構築編

・機器のレイアウト

図1.ラック図

ラック図はインターネットで探せば
エクセルファイルなどでフォーマットが
出回っていますので、それを参考に作成します。
ラックには規格があり、高さの単位として
U(ユニット)が使われています。
1Uあたり4.4cm程度です。
縦置きのONU(回線終端装置)は高さが
必要で置くための棚板も考慮して
レイアウトを検討します。
また、エアー(空調)設計も
考慮に入れておきます。
ラックは通常、
前から後ろへ風が流れる設計になっています。
また、下より上のほうが気温は高くなるため
温度的な設置条件は下より上の方が悪くなります。
設置に際しては、ラックは前後両方から
アクセスできるためどちらが前か確認した上で
作業を開始します。

・電源

電圧はデータセンタ側が100Vで提供されることと
設置機器が100Vで動作することを
確認しておきます。OAタップを手配する際には
コンセント差し込み口の規格を確認し、
関係各社に連携しておきます。
場合によっては変換アダプタなどが
必要になることがあります。
電源の容量については、
まずデータセンタ側の仕様を確認します。
20A(アンペア)の場合が多く、
20Aは家庭用と同レベルのため
設置する機器数によっては引き上げを
検討する必要があります。

図2.OAタップ接続図

OAタップの接続図については、
ラック図に追記する形で良いので
資料化しておきます。
ネットワークにせよ、サーバにせよ、
通例、正系と副系の2系統で
設置する場合が多いです。この時、
それぞれ別の電源系統に接続することが
ポイントとなります。
そうすれば、どちらかの電源系統がダウンしても、
もう片方の機器群でサービスを
継続することができます。

図3.電源(副系)ダウン時

今回はデータセンタラックの契約や構築について
ポイントとなることを説明しました。
何か一つでもご参考にして頂ける点が
あれば幸いです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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