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サボテンを枯らす=『植物が下手』は間違い

サボテンが枯れるのは、あなたが植物下手なせいじゃない。

私は、多肉植物を趣味にして3年が経つ。花より緑を好むタイプなので、葉を鑑賞する植物を集めるのが大好きだ。そんな話をしていると、たいてい決まって言われる言葉ある。

『私はサボテンを枯らしたから植物が下手だ。』

サボテンを枯らした事があっても落ち込む人達に一言、言わせて欲しい。
『サボテンが枯れるのはあなたのせいじゃないよ』と。
私は、サボテン=初心者向けと流布されている話に異議を唱えたい。そして、枯らしたからといって、決して落ち込まないでほしいのだ。

その理由をじっくり説明していこう。


・高温多湿の日本で多肉植物を育てる事がそもそも難しい

多くのサボテンは南北アメリカの砂漠地帯が原産地だ。日差しは強く、風が常に吹き荒び、空気は乾き、日中は暑く、夜は寒い。雨はたまに沢山降ってはすぐ乾き、栄養のないゴロゴロした土はすぐ水分が流れ出てしまう。
人間からすればとても過酷な環境に思えるだろう。
だが、サボテンにとってはこれが『適した環境』なのだ。

多肉植物と向き合ってみて、私なりに導き出してみた認識はこうだ。
広くイメージされている『サボテンがどんな環境でも育ち、耐えられる』というのは、ちょっと違うかもしれないと。むしろ
『南北アメリカを初めとした砂漠地帯に特化する形で独自の進化を遂げた植物』
と言った方が正しいのかも、と。

『伊豆シャボテン公園』にて撮影。
園内では徹底的な環境管理がされており、自生地に合わせたゾーンが作られているのが非常に興味深かった。

・サボテンの故郷が彼らにとって理想郷な理由

その1:風通し
乾燥した空気や風は彼らにとっては非常に心地がよい。常に空気が循環している環境を好む植物も多い。

その2:根の環境
ゴロゴロとした無機質な土には空間があり、根からの呼吸が適切に行える。また、すぐに水が流れるため、蒸れることなく健康を維持できる。

その3:昼夜のサイクルと光合成に適した環境
日中は強い光が降り注ぎ、夜は冷たい風が吹き荒ぶ地域。多肉植物は、この環境に適応した賢い光合成の仕方を持っている。
【夜の活動】
気孔(葉の呼吸する穴)を開いて二酸化炭素を取り込み、体の中に蓄える。
【昼の活動】
気孔を閉じて水分を守りながら、夜に貯めた二酸化炭素と強い日差しで光合成を行う。

このサイクルは多肉植物にはもはや必要不可欠であるため、
・昼は充分な日光エネルギー
・夜は呼吸しやすい風通し
これらは多肉植物が健康に育つ大事なカギとなっているのである。


・日本と原産地の違い

さて、ここでサボテン視点から見た日本と原産地の環境を比較してみよう。

◆日本の環境
・ジメジメした空気(特に梅雨や夏)
・曇りの日が原産地より多い
・長雨がある
・空気が淀みやすい
・湿度が高い

◆サボテンの故郷(砂漠地帯)の環境
・カラッと乾いた空気
・一年中強い日差し
・夜は涼しく、昼は暑い
・水はけの良い岩場や砂地
・雨が少なく、湿気も少ない

全く違う事がお分かり頂けたと思うが、この違いによる起きるトラブルは以下だ。

・湿度が高すぎて根が腐りやすい
・梅雨で水はけが追いつかない
・曇りの日が続くと光不足に
・空気が動かず病気になりやすい


・日本でサボテンを愛するために必要なこと

先人たるサボテン愛好家達は、日本でもその姿を愛でるために、あるいは新しい品種を生み出すために、もしくは日本でも育てやすく改良するために、様々な試行錯誤を続けてきた。

しかし日本で品種改良された品種だったとしても、多肉植物としての本質は変わらない。よって、日本で出来うる限りの方法で、サボテンが健康に育ちやすい環境を作ってやる必要があった。

・できるだけ屋外で管理する
・水はけの良い鉢&土を使う
・風通しを良くする(※超重要)
・雨を避ける
・サボテンの大きさに応じた季節ごとの水管理
(※なお、完全に屋内で管理するにはプロ用植物用育成ライトに換気設備に温湿度計に照度計に専用のラックに…と爬虫類飼育か、と思う程の高額設備を必要とする。むしろ爬虫類飼育に経験がある方におすすめしたい趣味だ。ウチワサボテンなんかはリクガメのエサにもなるし)

日本の気候に慣れていない植物だからこそ、特別な配慮が必要だったりする。しかし、これらの点に気をつければ、あなたにもきっと育てられるはずだ。


最後に。

どうだろうか。このワガママな植物が、枯れずに日本で育つためにどれだけの要求をして来るか。
ここまで読んだあなたなら、きっとお分かり頂けたと思う。
また、なぜこのような育て方をしなければならないのかを理解してもらえたと思う。

かく言う私も毎夏、多肉植物の手術や夏越しに翻弄されているし、私より多肉歴の長いベテランさん達も、環境作りを毎年試行錯誤しながら多肉植物を続けている。

寒さで赤くなりながらも開花したサボテン


サボテンに大事なのは、育つための環境を作ってあげること。
そうすれば、1年、2年、3年…と、ほぼ半永久的に、共に人生を歩み続ける事が出来る。
花が咲いたら、自分の作った環境をサボテンが褒めてくれた(ように思える)。
私の中では、これらがサボテンの魅力と言える。

土、置き場所、光、風通し、水捌け。
これらをあなたの住む場所でサボテン向けに作り上げる事で、きっと綺麗な花を咲かせてくれることだろう。
だから、サボテンを枯らした経験があったからと言って、どうか落ち込まないでほしい。
そして、もしサボテンが可愛いと思ったなら、その気持ちを大事にして欲しいと思う。

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