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コーチングには問題あり? ~コーチングとインストラクショナルデザインの専門家による架空対談 その19~

今度は、コーチングに対して否定的な教育学者の方がコーチングの問題点を指摘するようです。
特に佐藤先生の回答が気になりますね。


コーチングに否定的な専門家の質問:

「これまでのディスカッションで、コーチングが人材育成において非常に有効であると強調されていましたが、私はコーチングに対して疑念を抱いています。特に、コーチングが学習者に過度なプレッシャーを与えたり、逆に依存を生む可能性があると考えています。また、コーチングが適切に機能しない場合、学習者が自己効力感を失い、成長が阻害されるリスクもあります。実際に、コーチングが機能せず、かえって問題を引き起こした事例も見てきました。この点について、コーチングを推奨する立場からどのように捉えているのか、ご意見をお聞かせください。」

コーチングの効果を発揮させる3つのポイント:

佐藤先生は、指摘に対して丁寧に応えます。
「ご質問ありがとうございます。コーチングに対するご懸念は、私も非常に理解できます。確かに、コーチングが適切に実施されない場合、過度なプレッシャーや依存を生むリスクがあるのは事実です。しかし、コーチングが本来持つ力を発揮するためには、いくつかの重要な要素が必要です。

  1. コーチの質とスキル: コーチングが効果的であるためには、コーチ自身の質が非常に重要です。経験豊富で信頼できるコーチが、学習者の成長を適切にサポートするためには、単に指導するだけではなく、共感や信頼関係を築くことが不可欠です。これが欠けていると、学習者はプレッシャーを感じたり、逆に依存してしまう可能性があります。

  2. 学習者の準備と自発性: また、コーチングを受ける学習者自身が、自らの目標や課題に対して主体的に取り組む準備ができていることも重要です。学習者が自発的に成長しようとする意欲があれば、コーチングはそのプロセスを支援する強力なツールとなります。しかし、準備が整っていない場合や、期待される結果が不明確な場合には、逆にプレッシャーが増してしまうこともあります。

  3. 適切な期待設定と目標管理: コーチングが効果的に機能するためには、初期段階での期待設定や目標管理が重要です。コーチと学習者が目標を共有し、それに向けた具体的なステップを明確にすることで、コーチングのプロセスが効果的に進行します。また、進捗状況を定期的に見直し、柔軟に対応することも重要です。」

IDとコーチングは補完し会う関係:

佐藤先生の回答に鈴木先生も続けます。
「佐藤先生のおっしゃるように、コーチングが適切に機能するためには、いくつかの条件が必要です。インストラクショナルデザインの視点から見ると、コーチングは構造化された学習プロセスの中で補完的な役割を果たすことができます。IDが提供する体系的なアプローチの中で、コーチングが学習者の個別のニーズや課題に対応することで、より効果的な学びが実現できます。

IDのフレームワーク内でコーチングを位置づけることで、学習者が目標を明確に持ち、それに向かって計画的に進むことができます。これにより、学習者が感じるプレッシャーを適切に管理し、過度な依存を防ぐことが可能になります。つまり、IDとコーチングは互いに補完し合う関係にあると考えます。」

コーチングの効果を最大限発揮するために:

二人の見解を高橋さんがまとめます。
「お二人のご意見を踏まえ、コーチングに対する懸念とそれに対する対策について総括したいと思います。確かに、コーチングはその効果を発揮するために、適切な環境と条件が必要です。コーチの質や学習者の準備、そして明確な目標設定が整っていない場合、コーチングが逆効果をもたらすリスクがあります。

しかし、適切な条件が整っている場合、コーチングは学習者の成長を強力にサポートするツールとなります。ここで重要なのは、コーチングが孤立したプロセスではなく、インストラクショナルデザインや他の学習アプローチと連携し、統合的に機能することです。これにより、学習者が自発的に目標を設定し、その達成に向けた具体的なステップを踏むことができます。

最終的に、コーチングが効果的に機能するかどうかは、その実施環境やコーチのスキル、そして学習者自身の意欲にかかっています。これらの要素が揃うことで、コーチングは非常に有効な手段となるでしょう。」

このやり取りでは、コーチングに対する懸念を抱く専門家に対して、佐藤先生はコーチングが効果を発揮するための条件を強調し、鈴木先生はIDのフレームワーク内でのコーチングの役割を説明しました。高橋さんは、これらの意見を総括し、コーチングが効果的に機能するための統合的なアプローチの重要性を強調しました。

コーチングに否定的な質問者の反応:

「鈴木先生、佐藤先生、高橋先生、それぞれのご意見を聞いて、コーチングに対する私の懸念が少し和らいだように感じます。特に、コーチングが適切に機能するためには、コーチの質や学習者の準備、そして明確な目標設定が重要だという点は非常に納得がいきました。

私がこれまで見てきたコーチングがうまくいかなかった事例は、まさにこれらの要素が欠けていたことが原因だったのかもしれません。コーチングが単なる指導や監督の延長ではなく、学習者が自らの目標を持ち、それに向けて主体的に取り組むことを支援するプロセスであるという点について、改めて理解を深めることができました。

また、鈴木先生がおっしゃったように、インストラクショナルデザイン(ID)の枠組みの中でコーチングを補完的に活用するというアプローチは、コーチングの効果を最大限に引き出すための一つの方法として非常に有効だと感じます。IDの構造化された学習プロセスが土台となることで、コーチングがより具体的で成果につながるものになるのではないかと思います。

私自身、コーチングに対する批判的な視点を持ちながらも、その可能性についても見直す必要があると感じました。特に、現場でどのように効果的に実践できるかについて、もう少し深く考えていきたいと思います。今回のディスカッションは、私の見解を広げる良い機会となり、大変感謝しています。」

この想定では、否定的な質問者は、コーチングに対する懸念が和らぎ、特に適切な条件下でのコーチングの有効性について理解が深まりました。IDとの統合や、コーチングの正しい実施により、その効果を引き出す方法に対して前向きな姿勢を示し、コーチングに対する見解を見直すきっかけになったと感じています。質問者は、コーチングが現場でどのように効果的に機能するかをさらに考えていく意欲を持っています。

【登場人物や対談内容については、すべてフィクションです】

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