エキスパートマネジャー
恒例となっている春の人事異動がありましたが、近年比較的若年層の離職が増えているように感じます。なかでも資格や特定分野の学歴を必要とする専門職員の離職が目立ちます。
退職、転職という選択をするに至った理由は何か一つに限るというものでもないとは思いますが、取り残された私たちに今後できることはないか?ということを考えました。
BAR仮説
地方自治体の組織における人材育成は、人数主流派の専門性のない事務職員に対するマネジメントやキャリア形成を念頭に構築されています。
事務職員以外として採用された専門職員の専門性に対応する専用のマネジメントや人材評価が行われる自治体はかなり限られると思いますし、少なくとも私の所属する自治体ではありません。
公務員制度はもともとジョブ制を志向していて実際はなあなあになっているのですが、専門職には悪い方向にジョブ制の特徴が出ていて、その人間のなかで(専門分野の)仕事が完結することが暗黙の前提にあります。でもいまどきは多職種のチームで仕事に当たるのが当然ですから、専門職員を含むチームマネジメントも不可欠です。
専門職員自身の専門性の養成としては、個別研修の提供や組織外研修参加の推奨などありますが、専門職員をどのようにマネジメントしていくか、キャリア形成を図るかは、現場や本人にお任せになっているとは思います。
そもそも職員数は事業量(人工)に応じた定数管理を原則とするものなので、職場は基本的に必要最低限の人数の配置となります。結果、専門職員は最小人数の1人という職場も少なくありません。
福祉の分野でいうスーパービジョンなど、言葉は知っているがホンモノはいまだ見たことがありません。
定員管理の都合から見ると、専門職員は毎年決まった人数を採用するものではないので、(一部の人数の多い分野を除き)よほど工夫をしない限りは計画的な職位のピラミッドはできません。
職場の中で1人、2人しかいない専門職員のために組織的に特別なマネジメントを用意する動機付けも弱いですし。
そのうえ管理者側が事務職員である場合が多いので、そうであると専門職員に対して、ならではの成長への動機付けやキャリアラダーを提示することはかなり難しいと思います。
専門職員の側に立つと、身近に同じ専門性を備えた上司、先輩、場合によっては同僚もいない場合に、誰を頼りにし、誰をロールモデルとして見習えば良いのか?という事態が生じています。
こうしたことがあって特に専門職員は孤立化
と疲弊しがちなのではないかと考えられます。
対策としては
まずは今職員がいる職場に限定されない、職域内の連帯の場を公式に提供することが考えられます。自治体によっては土木や建築のなど職域別に自主的に設けているケースもあると思いますが、それらは公式のネットワークであるべきだと思います。(つまりはそのネットワークを健全に保つのは仕事であるし対価が発生する。)
次に、職域や職位別にロールモデルを提示することが考えられます。メンターやスーパーバイザー、指導員など名称はなんでも良いですが、近くにいないけど模範となるプロパー職員をエキスパートマネジャーとして指名することで、職場を超えた専門的な教育が可能になりますし、経験の浅い専門職員は(普段は見えないけど)目指す職員像が明確になります。目標にすべき職員を可視化することは組織としての価値感を表すので、そうした得難い人材の離職を防ぐ効果も期待されます。
さらに職場における目標管理のマネジメント権限と知識や技術面、専門職員ならではの心理面の課題に対して支援する権限を分けて定義することも必要ではないでしょうか。一人の管理職のなかで提供できるようであればそれでよし、もし不安や不足があるなら、専門職の補助者を組織的に配置することが考えられます。もっとも定数管理上の余裕が必要になりますが。
示していくことが大事
もっとシンプルに、職場環境の風通しの良さで大半は改善することかもしれませんが。
しかし従業員エンゲージメントのスコアを見て会社を選ぶ(選ばれる)時代です。専門人材の流動性や希少性が高まっているなかで、そうした人材をどのように処遇しているのか、雇用者の姿勢が厳しい視線にさらされていることは間違いありません。置かれた状況にあった仕組みを整え、どの従業員にも価値をおいていることを示すことが求められています。
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