ボケても、希望はある?

ある日の午後、母と祖母とテレビを見ていたときのこと。

「ヒルナンデス!」にマジシャンの山上兄弟が出演していた。
一人がロープで両手と体を縛られる。
その両脇から布を持ち上げ、隠されて見えなくなる。

そこにジャケットを投げ入れられる。
布が落とされると、さっき投げ入れられたジャケットを、ロープで縛られた下に着ていた。

という手品だったんだけど。

祖母「これ、入れ替わったの?」

一部始終を見ていた祖母は、どういう手品だったのかあまりわかってない様子。

私「さっき縛られたでしょ? それでジャケットを投げ入れたら、縛ったその下にジャケット着てたの」

と、説明し、
さらに母もこういう手品だったと長めに説明したんだけど、はたしてこれで伝わっただろうか。


まず、私の声を祖母は聞きとれない。

元々私の声はあまり大きくないようで、たまに店員さんに何か話しかけたときに、「はい? あの、もう一回言っていただけますか?」と聞き返されることがある。

たまに声の音量をいつもより少し小さく話すと、祖母は無反応になる。

それに、同じ話を初めてするかのような口調で話すようになった。

少し前に話したことをまた言ったり、前に聞いたことがある昔の思い出を、前に聞いた時とほとんど同じ内容で話す。


4人中2人の家族の具合が悪くなると


2022年の2月下旬。

祖母が自分一人で立ち上がれなくなり、
祖母が立とうとするたびに私が支えて立ち上げることに。

でも、私はヘルニアがあるので、もし腰を痛めたらと思うとすごく怖かった。

しかし、この家の中で一番若く、ヘルパーの資格を持っている私が、一番適していたのも事実。

資格をとったのは何年も前のことだし、もともと記憶力悪いし、最近は年齢的なものなのか、もの忘れをする。どういう授業だったか、断片的にしか思いだせないけど「ボディメカニクス」のやり方はおぼえていた。

一日に何回も名前を呼ばれ、祖母の体を抱えて立ち上げさせる。

立たせるそのたびに「痛い」と祖母の顔が苦痛に歪んだ。

そんなときに、急に母が体調を崩した。

食欲がまったくなく、食べられない。食べないせいか声がすごく弱々しくなってしまった。
でもなんでそうなったのかわからない。病院に行くように言っても、行こうとする体力も気力もないのか、行こうとしない。そうして、寝室から出てこなくなった。

まさかこのまま衰弱して……、なんてことないよね? とすごい不安になったけど、それから数日後に食欲が戻り、回復。
母は病院に行かなかったので、結局何が原因だったのかはいまでもよくわからない。

それからだいぶ経って、歩けるようになった祖母はかかりつけの病院に行った。レントゲンを撮り、圧迫骨折をしていることがわかった。

これによって祖母の腰は曲がってしまい、以前より歩くスピードが遅くなった。ただ、もう痛みはないという。


自力で歩ける、会話ができるだけまだまし

認知症の一因 アルツハイマー病新薬「レカネマブ」厚労省が正式承認 | NHK | 医療・健康

厚生省が、アルツハイマー病の新薬を認知したという。

これによって、少しでも状態が良くなる人が増えればいいと思う。


たまにテレビで、認知症についてとりあげている番組を見る。

人の顔がわからなくなる、自分がどこにいるかわからなくなるなど、いろいろと困ったことになるそうで。

いつだったか、重度の認知症患者がいる病院を取材した番組を見たんだけど、廊下にいた人が、自分に触ろうとした看護師の手にかみついた。
「痛い痛い痛い! ちょっと、ちょっと誰か来て―」
と看護師さんが別の人を呼んでいた。

漫画『くるねこ番外編 思い出噺』で、
著者のくるねこさんの祖母、梅枝さんが、くるねこさんを孫と認識できず、お手伝いさんと言うシーンがある。

いつかうちのおばあちゃんも、私のことがわからなくなるのかな。

まだ祖母の耳が遠くなかった頃は、そんなこと考えもしなかったけど、
最近、こういうことが近い将来あるかもしれないんだよな……と思うようになった。

もしそうなったら、たぶん、私泣くだろうな。
いまちょっと想像しただけで泣きそうになってるし。

ただ、いまは大声で話せば会話ができるし、長距離は無理だけど歩くことができている。

ただ、できないことが増えていることを祖母は自分でもわかっていて、「なんにもできなくなっちゃった」と言ったりする。以前はこんなこと言う人ではなかったんだけど。

でも、私の隣にいる祖母が「ポテチちょうだい」と、母が食べていた湖池屋ポテトチップスの袋をもらって食べていた。

まだ大丈夫そう。だよね、たぶん。



ちなみに、そのときのことをブログ(最近ほとんど更新停止中)に
書いていて、
こちら

久しぶりに読んでみると、ちょっと精神的に追いつめられていたっぽいな、当時の自分。


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