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「行列」ムリロ・ルビアン

物事が解決せず、何もかももやもやな感じ、はっきりしなかったり有耶無耶だったりする感じって日常生活でありますよね。

スッキリしない物語ってなんか心が晴れないっ!と昔の何回か思ったことあるけれど、ある物語の終わり方がもやもやなのも、そんな現実を写し取っているからかもしれないな、なんて感じました。

まず作品への感想から先に述べると、ブラジルぽいなというのが第一印象でした。

ある男が、田舎からある会社へとやってくる。自分の国から極秘任務を預かってきた男は支配人と直接話すために長い列にならんだ。出迎えた門番は黒人で、値の張りそうな服を着ていた。1か月目にして、秘書室長と面会することができ、重要案件の場合先に通すなどの工面も可能だと言われるが、極秘主義だからと拒み、列に並ぶ日々が続く。来る日も来る日も自分の番号札の数字が呼ばれることはなく6か月がたった。面倒だなという気持ちで2週間ほど並ぶのをやめていたが、ふと行ってみると工場は列などない。聞くと支配人は死んだとのことで、死期の迫りを感じていた支配人は近日全ての人に対応をしていたらしいが、もうそれは主人公にはかなわぬ夢となった。

・出迎えた黒人が良い身なりをしていることをわざわざ何度も描写している点は、主人公がそのことに対して違和感を感じているというわけで、黒人がどこからそんな金を手にしたんだ、という偏見がうかがえるます。

・そして終わることのない行列、待ち続ける日々。行政手続きがなんの進展も見せない、もしくはものすごく時間がかかる、という一面(ポルトガル語にはそれを表現する単語burocraciaがあります)がまたここに描かれています。

工場側のトップも、主人公に何か案件を頼んだ人も(内容も)登場することなく話は終わりを迎えます。それがなんだか面白いな、と。現実社会においても、ある体制のトップは見えなかったり、下で働く人や仲介役の人ばかりが表に出ていてということはあるんじゃないかな、と感じました。くっきりと見えない感じが、物語と現実との両方が持つおんなじ雰囲気かもしれないですね、、。


画像引用元 https://angeloabu.wordpress.com/livros-2/contos-de-murilo-rubiao/

原題:"A fila" 





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