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「子うさぎのテレコ」ムリロ・ルビアン...この社会で自分らしく生きられなかったうさぎの話

男が海の方を向いてぼーっとしていると子ウサギが声をかけた。名前はテレコ。男とうさぎはアパートで共に暮らすことに決めた。実はテレコは色々な動物に変身をする。うさぎに言わせると人々を楽しませるためだそう。

喋る+変身する不思議な存在テレコと男の物語。単なるファンタジーでなく寓話的であるのがブラジル人である作者ムリロ・ルビアンの特徴です。

ある日テレコは女性を家に連れてくる。これからはその女性と共に人間として生きるのだと主張する。

しばらく暮らした仲であるあの可愛らしいテレコを失うことへの嫉妬まで感じる男。テレコは人間になんかなれないと言い放つ。

テレコが女性と共に家を去ってから時が経ったある日男はテレコと偶然再会。テレコは女性と別れたらしく、精神不安定な様子で次から次へと変身を繰り返す。しまいには小さな動物にしか変身をしなくなった。

最後、変身したテレコは男の腕の中にいた。それは赤ん坊の姿であり、その小さな人間は死んでいた。

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この社会に適応していくために姿を次々と変えていかなければならないのでしょうか。他人に受け入れてもらうための一生懸命の努力があの変身だったのでしょうか。

最後の最後、やっと人間になれたとおもったらもうテレコは死んでいました。人間としてこの世界に存在すること、自分らしく存在することが難しく生きづらい社会がここ現実にある、そんなことを暗示しているような作品かなと思いました。

原作題名:"Teleco, coelhinho"

#ブラジル文学 #ムリロ・ルビアン




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