『砂の戦士たち』ジョルジェ・アマード
舞台はブラジル北東部のバイーア州。作者の出身地でもあります。
とっても良かった!!窃盗グループの話ですが物語は暖かく愛にあふれた雰囲気でした。
【貧しい生活、仲間との日々】
身寄りのない少年たちの日々を描く物語。生きていくために盗みを働かざるを得ない子供たち。町からはコソ泥・暴力的と恐れられる存在ですが、彼ら側の視線・感情で描かれた物語からは、自分たちの街を愛する気持ち、仲間を大切にする思い、貧しい暮らしがあるのと同時に大金持ちがいる社会への不満、今まで受けたことのない愛というものへの飢え、等々が見えてきます。
まず、とても繊細に丁寧に編まれた作品だと感じました。沢山の個性様々な登場人物がいるのに、一人ひとりが細かく丁寧に描かれており、またその少年たち同士の関係性(誰と誰がよく一緒にいる/この人は誰に対してはこういう態度をとる等)も丁寧にかかれていて、作者の、それぞれの登場人への温かい想い・愛情が感じられました。こんなにも丁寧に心込めて生み出された登場人物たちは他にいない!と感じるほどです、、♡
彼らを、ただの暴力的な窃盗集団と形容してしまえばそれまででしょうが、少年たちには少年たちの正義、規則、友情、信頼関係などがあり、本当は決して極悪非道な存在ではありません。純粋できれいな心は、社会全体から恐れられている彼らたちにも見出せます。彼らを悪にしている、そして罪を犯さないと生きていけない状況にしている社会は正しいのでしょうか。「彼らは犯罪者だ」と言って逮捕しようと奮闘することが社会の正義なのだろうか、と思わされます。
【メリーゴーランドと奪われたこども心】
盗んだり、そこら辺の女の子を捕まえて性行為を楽しんだりといったことをしつつも、やはりどこかに子どもの心はあります。ある日、移動型遊園地で商売をしている男が彼らの街にやってきます。夜に輝くメリーゴランドを目にした少年たちの目は輝き、心は踊り、皆「キレイだ」とうっとりするシーンがあります。こどもらしく生きることなど出来ない厳しい環境の中、抑え込まれている純粋な幼い心が呼び戻された時でした。ここは、数ある章の中でも最も美しい情景描写がされているところだと思います。だから、実はトップ画像もメリーゴランドを選びました。
夜に輝くメリーゴランドは移動型。つまりずっとその町に留まる訳ではないのだ、ということを考えると、なんだかそのあまりにも美しい姿は幻想なのでは、と感じてしまいまいた。厳しい現実の中、輝くものはすぐ消えてしまう。彼らの生活にとって、安らぎの時はやはり夢なのだろうか、つかの間の、つかめないほどの一瞬のものなのだろうか、と想像を膨らませると切なくなります。
【映画】
作品は映画化もされています。予告編の英語字幕があるものをここに載せました。予告ビデオにも登場する女の子は、この物語にさらに色を加え、温かみを持たせる存在です。
『砂の戦士たち』(彩流社)は3500円前後で手に入れられると思います。ポルトガル語からの翻訳本はあまり数が多くなく、定価が低価格ではないため、少し手を出しにくくなってしまいますね、、。図書館等にあったら是非読んでみて下さい!
原題: Capitães da areia
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