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自分の情けなさと向き合う自己紹介


私の母はバリバリのキャリアウーマンだ。

今はその姿に憧れているし、自分も生涯そうありたいと思う。

でも、子供の頃は専業主婦の家庭が
本当に羨ましくて仕方がなかった。
ある日、お母さんが専業主婦の家庭の子に

「また、りーちゃん(作者)居残りじゃん〜!
僕、今からパパとママでご飯食べに行くんだ〜!」

なんて言ってきたもんだから
お腹は空いてるし、
今日もいつも通り一番最後まで
迎えは来ないだろうし、

「もしかして私が嘘つきで
良い子じゃないから本当は会いたくないのかな」

なんて本気で考えながら、お母さんを待ってた。


その日は特別、母のお迎えは遅いし、

居残り組の教室は特に古く、
隙間風の音が不気味に鳴っていて

まるで「その通りだよ」と言われているみたいだった。

大人になった今でもすごく鮮明に覚えている。

妹は本当に眠れない赤ちゃんで

子供ながらに
「なんでこんなにいつも泣いてるの!?
ママが構うから余計に泣くんだよ!!」
と思っていた、
まぁ今思えばあれが適切な対応だったし
仕方ないんだけどね。

当時の私はお母さんとばーちゃんがが妹に取られた!
寂しい、悔しい、誰か私をみてよ!の気持ちが本当に
強かったのに、
それを空気を読んで言えなくてひたすら辛かった。

毎日家に帰ると
一人遊びに夢中になってるフリをして過ごしていた。

今思えば、まだ文字も読めないのに
空気を読むことなんて
できなくてよかったのになぁ。

なんで、あんなに頑なに頑張っちゃってたんだろう。
いや、なんでかなんてわかってる。

多分それは、この頃から
お母さんが突然いなくなっちゃうんじゃないか
って意識が毎日のように湧いてくるようになったからだ。

(倒れて消えるというかは、
ふらふらっと家を出てもう二度と
帰ってこないイメージだった)
ってのも大きかった。

母が妹の入院用の荷物をまとめてる姿を
ちらっとみただけで、
「今日家を出ていくつもりなんだ…どうしよう」
と思って、母のことを一日中ずっと監視するし、

電話がかかってこれば
「きっと飛行機のチケット会社からだ…」と疑う。

この頃から悪い方に活動的な想像力で勝手に苦しんでた。



当時、私は中学生なのにどこか妹と他人行儀なままで、
基本的にお互い干渉しない。
周りの友達の妹の話を聞くとそんなに
一緒に喋ったり、出かけたりするもんなんだ
と毎回驚きの連続だった。

少し風変わりな姉妹の関係。

そんな、ある日、妹が家庭科の授業でポーチを作ってきた。

妹からプレゼントをもらうという
発想すらなかったので、すごくとまどったし、
正直何が目的なんだ?と思った。

そしたら、
「これはねーちゃんが
こないだイオンで買ってもらえなかった
化粧ポーチだよ!」
と言われた。

そう、中学生の私が背伸びして
欲しがったあの化粧ポーチだ!

当時私の中学校では化粧ポーチを
ペンケースとして使うことが
一種のステータスで、
もちろん私もその流行りに乗りたくて
堪らなかった。

母にこれをペンケースとして
使いたいから欲しい!と伝えるも

こういうもの(化粧品関連)は
自分の稼いだお金で買いなさいと言われ却下。

私は化粧品入れとして使いたいわけ
じゃなくてただペンポーチとして使いたい
だけ!と何度説明してもダメ。

そんなん働けるようになるまで
あと最低でもあと三年は必要じゃん!
それまでに絶対売り切れちゃうよ!!って
雑貨屋さんの前で
お母さんと言い合いになった。

お小遣いがないのも、
お年玉が使えないのも、
我が家だけなのにどうして
こんなに我慢してるのに
ダメなの!?ってどうしようもなく
怒りが湧いて、

もう誰でも良いからぶつけたくて
仕方がなかった。

それでもポーチは買ってもらえなかった。

それをまさか妹が覚えていて、
作ったことに驚いた。

マスカラ(ばーちゃんのお古)
も通り抜けるほどの縫い目でしか
裁縫の出来ない小学生の妹が
化粧ポーチを作ってくれたことが

姉として情けなくて、
でも嬉しくて、
妹の満足そうな顔が直視出来なくて
俯きながらありがとう…って受け取った。



あとがき

今回の漫画は
「課題フォーマットに沿って自己紹介を描く」
『あなたがこれまでに誰かから受け取って一番嬉しかったものはなんですか?』
というコルクラボ漫画専科の過去課題から作り出した作品です。

今までの人生で受け取って嬉しかったものは色々あるけど、
どうも自己紹介に繋げられない。それはなぜか
それらのものには「嬉しい」しか感情がないからです。

しかし、このポーチは違いました。
嬉しいだけじゃなくて、幼少期の寂しさ、
当時の恥ずかしい記憶、姉としての情けなさ、
それと共存する形で嬉しさがあるのです。

当時の妹との関係から
自分の内面性の自己紹介をしようと思いこの漫画を書きました。

うまく伝わるといいなって思うけど、
誰か一人だけにでも伝わったら正直万々歳なんです。



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