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【識者の眼】「コロナ禍の診療所の医業収入への影響」岡本悦司

岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部長)
Web医事新報登録日: 2021-03-04
コーナー: OPINION 医療界を読み解く[識者の眼]
診療科: その他 意見・提言

2度目の緊急事態もようやく解除の見通しとなったが、緊急事態中の人出減による経済(とりわけ、交通や観光)への影響は甚大であり、それは医療機関とて例外ではない。緊急事態中の医療機関の「売上げ」はどのような影響を被ったのだろうか?

医療機関の種類別、診療科別の医療費の動向を月単位で把握できる統計調査として「医療費の動向」調査(政府統計サイトe-Stat上で公開されている)があり、本稿執筆時点で昨年9月分まで公表されているので、2020年4月7日〜5月21日の第一次緊急事態宣言前後の医療費の変動を観察した。

医療費の動向調査の特徴は、金額や点数で示されるのではなく前年同月比で示されている点である。データは2014年以降が提供されているので、各年各月の前年同月比を積算して、ヒートマップで表示してみた(例:たとえば各年4月の医療費の伸びを1.1、1.2、0.9とすると、3年目の医療費は1.1×1.2×0.9=1.188となる。なお比は全て一施設当たり、かつ休日数補正済)。増加した月は赤、減少した月は青でヒートマップ表示させると診療科ごとに際立った差異がみられた。

診療所の医業収入を診療科別にみると、明らかな「負け組」は小児科であった(表1)。たとえば5月は2019年を1.02とすると2020年5月は0.55とほぼ半減しており、その影響は9月になっても継続している。耳鼻咽喉科も深刻な落ち込みであったが小児科ほどではなく9月にはほぼ通常に回復した。反対に「勝ち組」は歯科診療所で緊急事態宣言下の4〜5月に前年より医業収入を大きく伸ばしている(表2)。

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小児科や耳鼻咽喉科の減少は、外出減による外来受診の減少が原因であることは明らかだが、歯科の増加の理由は不明である。歯科治療中の患者はマスク着用などできない。この時期の受診増は歯科医にとってもリスクは高かったはずなのだが…。

岡本悦司(福知山公立大学地域経営学部長)
[新型コロナウイルス感染症]

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