基本的な解剖や手術のピットフォールをしっかり頭にインプットしてから手術に臨むことが大切。『整形外科レジデントのための下肢ベーシック手術』編者,大内 洋 先生 インタビュー
初期研修を終え,整形外科に入局を決めたレジデントが読者対象となる書籍『整形外科レジデントのためのベーシック手術』シリーズ3冊を刊行しました(昨年7月に『上肢』,11月に『下肢』,12月に『脊椎』を刊行)。
今回は『下肢のベーシック手術』の編者,大内 洋 先生に本書の魅力やおすすめの使用方法など,インタビューを行いました。
大内 洋(おおうち ひろし)先生
亀田メディカルセンタースポーツ医学科 主任部長。
専門分野はスポーツ整形外科,運動器エコーなど。
2001年 東京医科歯科大学医学部医学科 卒業。長野厚生連佐久総合病院,日産玉川病院,佐久平整形外科クリニックスポーツ関節鏡センター,Taos Orthopaedic Institute International Fellow,亀田メディカルセンター整形外科 部長代理を経て,現職。
日本整形外科学会専門医,日本スポーツ協会公認スポーツドクター,日本水泳連盟医事委員,日本オリンピック委員会強化スタッフ,国際武道大学非常勤講師,筑波大学理療科教員養成施設非常勤講師,亀田医療大学非常勤講師,なでしこリーグオルカ鴨川FCドクター,他資格多数。
・『jmedmook 50 あなたも名医!知っておこうよ,スポーツ医学 亀田スポーツ方式を日常診療に取り入れてみよう!』(日本医事新報社)監修。
・『プライマリ・ケア医のためのスポーツ整形』(日経メディカルOnline)連載中。
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/series/ohuchi/
早速ですが,本書の魅力を教えてください。
やはり何といっても読みやすい,そして内容が直感的に理解しやすい一冊に仕上がっています!
「股関節」「膝関節」「足・足関節」の章に大きく分かれていますが,どの章も最初に「基本的な解剖と手術時に知っておいた方が良いこと」について詳細に書かれています。ここを読むだけでどういった解剖が重要なのか,また手術の時に何に気をつけなければいけないか,という点が理解できます。
手術の項目でも基本的なことはもちろん,最新の知見に基づいた非常に高度な内容まで記載されておりまして,さらに動画までついているのがこの本の魅力です。
本書のタイトルの「ベーシック」というのは「基本だからレベルが低い」ということでは決してなく,「重要」という意味で捉えていただきたいです。要するに下肢の重要な手術について書かれているので,レジデントのみならず,経験のある整形外科医にとっても「知識や手術の技術を新しくブラッシュアップしたい!」という先生には非常にためになる一冊だと思います。
価格面でもこれまでの手術書と比べても安価なので,読者の先生方も嬉しいのではないでしょうか。コスパ最高です!
レジデントに特に読んで欲しい!と思う項目はありますか?
「股関節」「膝関節」「足部・足関節」すべての「基本的な解剖と手術時に知っておいたほうがよいこと」の項目は絶対に読んでほしいです。
レジデントだけでなく経験豊富な整形外科専門医にもです!
そのほかですと,個人的には「股関節唇損傷」や「膝前十字靱帯」「半月板損傷に対する手術(主に縫合術)」「膝離断性骨軟骨炎(OCD)」「アキレス腱断裂」「足関節の骨軟骨傷害(損傷)」「足関節外側靱帯断裂」です。スポーツ整形外科を専門にしている私にとって馴染みのある疾患なので大変興味をもって読みました。これらの疾患は知識が十分あると思っていましたが,やはり各分野のエキスパートが執筆してくださったので知らない内容も多く,非常に勉強になりました。
一方で「大腿骨頚部骨折」「THA」「膝蓋骨骨折」「TKA」「足関節骨折」の項目は私はあまり手術しない疾患でしたので,一字一句舐めるように読みました。明日これらの疾患の患者さんのオペをすることになったとしても,問題なく手術ができるのでは?と思いました。
今後,電子版で1項目ごとに販売されるようですので,興味をもたれた項目から勉強されるのもいいですね。
『整形外科レジデントのためのベーシック手術』シリーズは,M2 plusにて1項目ごとの電子版の発売を予定しています。
・M2 plus
https://www.m2plus.com/
この本のおすすめの使用方法を教えてください。
本書の序文でも述べているのですが,これから手術をどんどんやっていきたい!どんどん上達したい!と思っている先生方は,最初から最後まで丁寧に読んで欲しいと思います。
また,何回か読み返してみるとさらに良いです。監修作業を通して何度も読みましたが,知識がどんどん身につくのがわかってきて,その後の手術室において術中操作のレベルが上がったと確信しております。
それから,ご自身の専門に関係なく下肢全体について読んで欲しいです。私は膝関節疾患の症例を担当することがもっとも多く,次いで足・足関節で,股関節はあまり手術する機会はありませんが,膝関節以外も丁寧に読むことで,まずこれらの分野の疾患に対する手術の適応がわかり,なんとなくこれらの疾患の手術を担当することも今後増える気がしています。
自分自身の専門領域とは別領域だと思っていても,専門領域の手術で有効なアイデアがいっぱい転がっています。歴史的にも,肩関節鏡の縫合技術が今日の膝関節鏡や股関節鏡における手術操作に応用されていますよね。
このように他の関節の勉強もすることでアイデアが豊富に生まれますので,ご自身の興味のある分野やご専門分野はもちろんのこと,それ以外の関節についても読むことをお勧めします。
先生のレジデント時代を振り返って,「これはやっておいて良かった」と思うことなどはありますでしょうか?
そうですね・・・当時はあまり良い教科書がなかったので難しかったのですが,やはり「基本的な解剖や手術のピットフォール」をしっかり頭にインプットしてから手術に臨んでいたのはよかったなと思っています。そのためか術中のトラブルの経験はあまりなかったかもしれません。
本書では皆さんが手術するときにトラブルに陥りにくくなるように,この「基本的な解剖や手術のピットフォール」については,各先生方が非常に直感的に理解しやすく書いてくださっていますね。
あと,はじめて経験をする手術は,その前に手術見学をしていました。これも術中のイメージがしやすくなるので非常に有効でしたね。少しずつですがオンラインでも手術動画がみられる環境になってきて,わざわざ遠方までスケジュールを調整して見学に行かなくても済むようになってきましたが,本書の動画は手術のイメージがしやすいと思います!
本書の動画は,日本医事新報社のサーバーとYouTubeに公開しています。
サンプル動画:人工膝関節全置換術(TKA)
著者,動画制作:
渡邊敏文先生(獨協医科大学埼玉医療センター第二整形外科 准教授)
齋藤龍佑先生(獨協医科大学埼玉医療センター第二整形外科 講師)
下記の画像をクリックするとYouTubeページへジャンプします。音量の大きさにご注意ください。また,閲覧注意動画ですので手術動画に抵抗がない方のみ閲覧いただきますようお願い致します。
最後に,レジデントに向けてメッセージをお願いします!
レジデントの時はどんどん知識を吸収するようにしてください。そして本書を執筆してくださった先生方のように,各分野の第一人者が考えていることを学び,手術操作を見学するようにしてください。経験が豊富な先生ほど,手術のコツや注意点に関する知識も経験もたくさんお持ちですし,手術操作に無駄がなくて合併症も少ないです。
近くに優れた師匠がいないと感じた場合でも最近は本書のように良書が出回っていますので心配ありません。それを熟読して手術室に入ることでみるみる知識も技術も向上します。
おそらく,整形外科を専門にして2~3年経つと,「何でも手術ができるようになった」と思う時期が来るでしょうが,そのような時こそ改めて基本に立ち返って手術に臨むべきです。自信に足をすくわれる医師は非常に多いです。改めて本書のような良書に立ち返ってベーシック(重要)な内容を復習してください。そうすることで次のステップアップが待っています。
皆様のご活躍を楽しみにしております!
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