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【識者の眼】「とても敏感な人」山本晴義

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)
Web医事新報登録日: 2021-09-30

昨年からHSPという言葉をよく目にする。また、診察でも「自分はHSPではないかと思っているのですが……」と言われることがある。HSPとは、Highly Sensitive Person(とても敏感な人)という意味で米国の心理学者エレイン・アーロンが提唱した言葉である。病気や障害を意味するのではなく、気質を表す心理学用語で、音やにおいに極端に反応したり、他人の感情を自分のことのように感じたりする繊細な気質を表した言葉である。

新しい概念であるが、世の中の関心は非常に高く、この言葉を聞いたとき、しっくりする言葉に安心したという人が多いそうだ。いわゆるHSPの人は、日常的に町で耳にする音が耐え難いほど騒がしく気になったり、誰かの悲しい顔を見ると、同じように悲しくなるなど感情の反応が強く共感力が高い。または、ささいな刺激に反応してしまうことなどが特徴だ。ささいな刺激とは、たとえば、知り合いが無意識に目をそらしたといったシチュエーションで「私のことが嫌いだから目をそらしたのだ」と捉えてしまうといったことである。

いずれにしても、何かしらの生きづらさを感じていて、それが何かわからないところに、自分にあてはまるHSPという言葉を聞き、しっくりきたという人が多いのである。HSPは、治すというよりも自分の特性と考えてつきあっていくことがよい。いろいろなことに気が付きやすく、他人が感じていることを同じように感じられるということは決して悪いことだけではない。また、日常で困っていることに対して、自分の特性を理解してもらうためにHSPという言葉が使われることはよいのではないかと思う。人には必ず、もともと持っている特性がある。むろん、HSPという名前がつくかつかないかにかかわらず、職場等に「光がつらいです」などと合理的配慮を求められる社会が望ましい。

なお、こうした症状は、自閉症スペクトラム障害などの他の疾病の可能性もあり、慎重に使いたいところである。

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