寅さんと鳥山さんの背中
春の柔らかい陽射しとは裏腹に、寒さが残る3月の下北沢。
日曜の午後を鳥山さんと2人、のらりと歩く。
駅前の喫茶店は満席で入れず、井の頭線の高架下、ミカン下北を抜けていく。
人の往来が絶えない通り沿いに面した喫茶店のテラスに空席を見つけ、遠慮がちに置かれた木製の上品な椅子に腰を降ろした。
「こんなにいいところあったんだ」と物腰の柔らかい抑揚が優しく耳に残る。
ホットコーヒーを注文し、タバコの箱を取り出す。
火を点けてから吐き出すまでの動作が手際良く、ゆらゆらと伸びていく煙も慣