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もう困らない!ミーハーのための研究発表での「質問」実践マニュアル


———「質問」
それは、研究発表などの場で求められる「強制的なひまつぶし」である。

そもそも、「わからない事や知りたい事をたずねること」が「質問」なのだが、「もっと知りたい!」と思えるような面白い発表が行われるなんて稀である。
言ってしまえば、(というか当たり前だが)この世の研究者の9割はつまらない

そのような発表者の「つまらなさ」に加え、研究発表会という場には、いわゆる「教養主義」という蛮習が蔓延っている。
「教養主義」とはすなわち、読み手側が読解を頑張るものであって、発表者側は何も編集はしなくていい的な風習である。

研究発表会的なものに実際に参加してみるとよくわかるが、何を言ってんのかよくわからない、編集が足りないように思える発表でも、なぜか周りはわかっている様子だったりする。何を言ってるかわからないものを理解することこそが教養主義だと勘違いしている空気感があるのだ。「説明の能力」とか「コミュニケーション技術」とか「編集力」などというものは、アカデミズムの世界だと度外視されてしまう。

しかしながら我々は、コミュニケーション能力に長けた、エレガントでステキな、モテまくりのミーハーだ。そんな研究発表には耐えられない。そんなアリエナイ奴らと関わってなんかいられない。もっとステキに編集=お化粧して、キレイでウツクシイ人たちとデートしまくりたい。なんだけれども、そのようなぶっちゃけありえない状況を何とか生き延びなければならない時がある。

「何とか生き延びる」と言っても、的外れな質問やサイアクな質問をしてしまっては、我々のステキ精神に欠ける。それではモテない。キモい。
完全アウェーな、キモい野暮空間に置かれたとしても、それには染まらずに、ちょっとした贈与ビームでキモい奴らに一撃を喰らわす。キモキモ空間を何とかやり過ごす。それも華麗に。それこそ、エレガントでステキな、モテまくりの我々ではなかったか。

そんなステキな皆様に今回お届けするのは、
(相手の研究と自分の使命が共鳴しない場合の)「質問」実践マニュアルである。
当たり前ではあるが「相手の研究と自分の使命が共鳴するとき」は、いわゆる「良い質問」はできる。今回扱うのは、そうではない場合。つまらない奴に対する質問をどうしてもしなければならない場合である(例えば、「固定質問者」みたいなものに指名されてしまったり、質問をしなければならないような雰囲気があったり、「やってる感」を周りに知らしめたい場合)。

「質問力向上」を謳う大半の本やサイトの中で何が言われているかと言えば、「相手の話を聞く姿勢を身につけよう」、「質問には内在的なものと外在的なものがあります *1」などという抽象的なものばかり。ミーハーたる我々はそんなものではなく、もっと実践的で実際的なマニュアルが欲しいのだ・・・。そもそも「研究」なんてものは伝統芸能なのだから、できる質問なんて限られてくる。すなわち型=マニュアルがあるのだ。

今回はそんな私=皆様のために、研究発表という場で「質問」という演技を行うための実践的なマニュアル=台本を用意した。以下では、全 6+1 種類ある質問の、「美しさレベル」を星1つ(★☆☆☆☆)〜星5つ(★★★★★)で評価し、評価が低い順に質問を羅列した。この質問集=台本をもとに、あなたの美しい身体でもって、贈与的愛に基づく一撃をキモい奴らに喰らわせて欲しい。そして、なんとかして研究発表という場を演じきって、生き延びてほしい。

※念のため注意しておくが、「自分が発表者だったらどうするか?」という視点を常に持ち、発表者の研究をどうしたらさらに良くできるか?ということを考えておく…という素振り=愛は忘れずに。我々はモテまくりでステキなミーハーなのだから、よくいるキモい質問者になってはいけない。キモい質問者には「愛の余裕」がない。だからこそキモくてモテないのだ。

*1 「内在的質問」とは、発表者の論旨や主張に沿って、それを受け入れた上で、 論旨の非一貫性や、不徹底さ、その拡張や応用の可能性について、(発表者に代わって)示唆するもの。「外在的質問」とは、発表者の射程に含まれない視点からの、限界や欠陥を指摘するもの。つまり、発表者の射程や地平を広げるような「ユーモア」を指す。

参照 : 上野千鶴子『情報生産者になる』
図:質問の種類まとめ(B.G.V.作)

(1)研究の意義は?系

【美しさレベル】★☆☆☆☆:あまり美しくない。

例:この研究にはどのような意義があるのですか?

まず紹介したいのは、「あなたの研究の意義は何?」とかいう、まあまあ最悪な質問。この質問が「星1」であることに驚いた方は多いのではないだろうか。一見すると確かに、この類の質問は良さげなのだが、こんな文部科学省の役人的質問など、極力するべきではない。

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