冷房のし過ぎが熱中症の原因かも?

熱中症警戒アラートが発令されるようになり、現代人は暑さを災害扱いするようになりましたが、はたして暑いことがそんなにヒトの体に悪いものなのでしょうか?

ヒトの身体には環境に適応するための、優れた機能が搭載されています。発汗はその代表的な機能のひとつです。
深部体温が上昇すると、汗腺から汗を出し、出た汗が皮膚を纏います。体温によって汗が蒸発する際に、皮膚の表面から熱を奪って、体温を下げます。
同時に、暖かい環境にいると毛細血管への血流が増加します。特に手足の毛細血管に血液が流れると、放熱が促進されます。

ヒトが暑い環境に順応することを『暑熱馴化』といいます。夏のような暑い環境にいれば、毛穴は開いて、発汗もしやすくなり、毛細血管が拡張することで血液を体表にめぐらせて放熱しやすくなります。
一方、寒い環境に順応することを『寒冷馴化』といいます。これは暑い時とは逆で、毛穴は閉じて、発汗もほとんどしなくなり、毛細血管も収縮するので、毛細血管への血流は減少し、深部体温の維持に寄与します。

真夏であっても、冷房をした部屋で長時間過ごしていると、身体は『寒冷馴化』に近い状態になってしまいます。特に低い温度に設定しがちな店舗やオフィスなどでは要注意です。
寒いぐらいに冷房した環境で長時間過ごしていると、ヒトの身体は体温を維持するために発汗しなくなります。毛細血管への血流も減少するので、体の熱は逃げにくくなります。

寒冷馴化に近い状態のまま、暑い環境に出たらどうなるでしょうか?


昨今では家庭環境においても冷房が完備され、真夏でなくとも、少しでも暑いと冷房をする機会が増えています。
暑熱順化が出来ておらず温度の低い環境で過ごす事が習慣化してしまうと、いざ暑い環境で過ごさなければならない場合に、身体からの熱放散がうまくいかず、体調を崩したり、最悪の場合熱中症になってしまうのです。
熱中症は暑いからなるのではなく、環境にうまく順応できない時に起きます。したがって『暑熱馴化』が出来ていれば本来熱中症にはなりません。熱中症が高齢者や子供に多いのは、この馴化が生理的に上手くいかないからです。高齢者は身体機能の衰えから発症しやすく、子供は身体機能の未熟から発症しやすくなります。

では、暑熱馴化を妨げずに夏を快適に過ごす方法にはどんなものがあるでしょうか?


5月6月頃であれば、暑くてもまだ冷房をするほどではありません。家が暑くなっている場合、大抵は日差しによる暑さです。カーテンやブラインド、すだれ等を活用して、日差しが入ってこないようにすれば防げます。
特に朝の日差しは斜めに入射するので、家の奥まで届きますから、これを防げば家が暑くなるのを回避できます。
窓の外にすだれを掛ければ、ガラスが日光で暑くなるのを防げますし、更に室内側はカーテンをすれば、風を通しながらさらに日差しを抑えられます。
日照りのときに山や林に入っても涼しいのは、木々が日差しを和らげるからです。

扇風機を使って風を送るのも効果的です。例えば2階建ての一軒家の場合、1階2階とも開けられる窓の全てを開けます。次に、階段から2階へ向けて扇風機で風を送ります。これで外から風が入ってきやすくなりますので、かなり効果的に家を涼しくできます。なお、この方法は真夏でも効果的で、室温自体を下げることは難しくても、家の中で空気が動いていればそれだけで快適に過ごすことが可能です。


冷房をするときは設定温度ではなく室温を意識する。


エアコンの性能に依存しますが、冷房をする際に部屋の温度はリモコンに表示される温度より低くなります。例えば26度に設定している場合、筆者の家のエアコンであれば、23度から24度ぐらいまで室温が下がります。30度に設定していても、27度ぐらいになります。
室内外の温度差が大きすぎると、身体が環境の変化についていけませんので、温度差は2度から3度程度に抑えておくのが身体に負担がかからず快適に過ごせます。
ですので、設定温度は正常に作動するエアコンであれば、30度でも十分部屋を涼しく保てます。
もちろん環境によりますので、例えば作業場など、動くことが多かったり、店舗など人の出入りが激しく、室温維持が難しい環境では、それに見合った設定が必要ですが、家の部屋でゴロゴロする場合、ほとんど動かないので、温度はなるべく室内外の温度差が小さくなるように設定するのが理想です。
冷房の温度を低く設定しても部屋が暑いなどといった場合は、フィルターを清掃したり、故障がないか最寄りの電気店に調査してもらうのもありです。
日差しなど室温を上げる要因が明確な場合は、すだれやカーテン、ブラインドなどで対策します。たいていの場合はこれで解決します。
夜は、建物が昼の間に吸収した熱を放出するので、家を閉め切っていれば当然室内は蒸し風呂のようになります。夜に帰宅して、家が暑いときは窓を開けて、温まった空気を外へ逃がします。ある程度熱気が逃げてから冷房をすれば早く温度を下げられますし、快適に過ごせます。

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