2020/01/31 晴れときどき雨

 雪特有の煙ったような空から霰が落ちてきた。風も冷たい。そんなきょうは定時きっかりにダッシュして「AI崩壊」観てきた。以下感想。

 「AI崩壊」。面白かったかと問われると、普通だった。
 AIが人類を攻撃し始めるという使いに使い古された設定をどのように料理するのか? 「AIが人類の要不要を判定して淘汰するよパターン」と「実はテロリストが暴走を仕組んだんだよパターン」以外でどのように? という一点にのみ興味があって観ることにしたんだが、結果としては後者で第三の道は見せてもらえなかった。テロリストが国家だったという捻りは加えてあったけど。このタネも序盤の総理が倒れるところで見えてしまって驚きはなかったな。医療AIを警察AIがどうにかした先に警察AIが暴走して……という捻り(?)があってもよいのではと思った。でもやっぱり新しい「AIの暴走」は思いつかんのよねえ。大枠は同じでも描き方の問題なのかね。AIがなんらかの宗教に乗っ取って確信犯的に革命を始めるみたいなのとかでも、大枠はAIの暴走だがなんか少しちがう景色がありそう。まぁアイロボットのころからAIは確信犯なんだけどね。ということはむしろ悪意を持って、人間が嫌がることを分かっていて暴走するAIのほうが新しいのか? AI自身がどう考えていようと人間の擬人化能力を持ってすれば確信犯だろうがなんだろうがAIに悪意を感じるんだけども。その辺が歯がゆい。AIのAIらしい思考とはなんなのかって話。まぁそれは置いといて。
 事件としては警察AIを作るのに先行の医療AIのビッグデータが欲しいから警察の悪いやつが医療AIを暴走させたというもの。でも暴走に乗じてビッグデータを横取りするという描写はなかったような。むしろ暴走に乗じて「生産性の低い人間を淘汰する」という主犯の思想が優先されていたな。そんなのと手を組む副総理もどうなんだ。ついでに反警察AI派の総理まで始末してるし。AIの前に人倫が崩壊している。まぁそれはいいんだけど。総理といえば、防衛大臣(シンゴジラ)が総理になってたのは笑った。巨災対の人も出てたね。
 序盤、わりと唐突に「このAIがリリースされれば人間を軽んじるようになる」ってセリフが入るのはどうかなって思った。開発バージョンはそういう危険性があったけどリリースまでに主人公が手を入れたよってことなのかな。そういうこととしても、セリフがあらすじに対して暗示(明示?)的過ぎて浮いて見えるな。主犯の逮捕前演説と取調室カメラ目線語りも言いたいことはそうなんだろうけど……って感じだったな。とくに取調室のやつはくどい。
 くどいと言えば、回想がちょいちょい挟まってうーんって感じだったんだけど、クライマックスの伏線になってるところは「おっ」と思った。思ったんだけど必要だったかどうかはよく分からない。事件解決の鍵になったような、なってなかったようなって感じだったし。んで結局オチはなんだったんですかね。人間愛を学習したAIが自らデバッグしたんですかね? あるいは開発者のひとりである主人公の妻(鬼籍)の魂が乗り移ってたとかなんですかね? それなら主人公がプログラム書いたくだりはなんだったんだってなるんだけど。それは娘を救うために何かしないとっていうのはあって、その辺、娘を人質にするのはうまいなって思った。不特定多数の国民の命より愛娘ひとりの命のために奔走する父親という方が動機付けが強いし。うまい、というか教科書的やな。こういうことはできるようにならないといけない。
 あとセリフと言えば、ラストに「AIは人間を幸せにするか、という問いは、親は子を幸せにできるか、に言い換えることができる」というのが出てくるんだが、あれ逆じゃない? AIは人の子と考えると。いや、これはやはり医療AIに母親の魂が乗り移ってたということの暗示なのだろうか。それだと「AI」を描けていないことになるような……。べつに亡き妻の思考パターンをプログラム化したって設定でもなかったし。私個人の感覚としてはAIも娘もふたりの子供だよっていう方がいいかな。それはただの好みの問題だけど。主人公もAIに特別な感情を持ってるわけでもなさそうだったしな。
 あとはなんだろうな。サーバルームに滝があって「おいおいおい」って思ったけど、そこは「特殊な冷却液です」ってセリフでカバーされてて安心した。最大冷却時は南極くらい冷えるらしいけど結露とか大丈夫なんかな。コードチェック中に何かに気付いてディスプレイを指さす演技は身に覚えがあり過ぎて良かった。
 しかしまさにこのAIブーム時期じゃないとできない映画ではあったんだろうね。こういうのもエクスプロイテーション映画というのだろうか。AIが進化したらこんな衝撃的な未来が~っていうセンセーショナルさが前に出た内容だった。エンタメだからそうならざるを得ないんだろうけど。劇中、AIはいろんな肉体的、社会的パラメータを参考にして人間の仕分けをするんだけど、例えばその仕分けアルゴリズムひとつに注目して「どのようなパラメータを持っていれば生きるべき人間と判定できるか」というのを突き詰めてみる映画というのも面白そうである。天才的ハッカーなり工科大学の学生仲間たちなりが、あるときそんなアルゴリズムは作成可能かと思い立ち、世界中のデータを紐付けて実験的にAIを立ち上げる。実際の仕分けはせずに、判定だけを行っていく。そんな中でいい人っぽいのに裏の顔が、とか、悪人だけどいいところもある、とか、いろんな人の顔を見ていくことになる。そして最終的にAIは、主人公たちはなにを学習するのか、みたいな。……おー、なんか面白そう? こういう思考が出てきた分、観た甲斐があったと言えるかもね。

 それはそうと今月の読書数は2冊だった。うーん。

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