お城のお猫さま


*幻
    ある国のお城に、王様から大変かわいがられた「アシュベル」という名前のオスのお猫様がおりました。
目は透き通った緑色、なめらかで艶のある毛はアッシュグレー。
    アシュベルは、宝石がちりばめられたネックレスをして生まれてきました。
でも、生まれてほんの少しの間にネックレスは、アシュベルの首もとでスッと消えてしまいました。
    アシュベルが、宝石のちりばめられたネックレスをつけて生まれてきたことを家臣からお聞きになった 王様は、アシュベルが普通のねこと同じようになんら変わりなく育ち、無邪気に遊ぶ姿をご覧になって
「一向にそのネックレスとやらがアシュベルに出てこぬ。またアシュベルに、特別な才も見られぬ。きっと家臣が私を喜ばそうとして、空言を申したのであろう」と、次第に思うようになられました。
    そして王様は、 王家の家紋が刻印されたベル(鈴)付きの純金製のネックレスをアシュベルの首もとにおかけになられたのでした。

ここから先は

11,536字

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?