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ぼっち在宅介護 父のリハビリより大好きな嚥下訓練③完結編

父の大好きな言語聴覚士のNさん。
昨年の夏の終わりからのお付き合いです。
週に一度の嚥下訓練は、7ヶ月を越えました。

初月から、この二人は相性がいいなぁ…とは思っていましたが、父がそこまで若い方に全福の信頼を寄せるのは、身体リハビリをはじめたころにきてくださった理学療法士の男性依頼でした。

嚥下の日までソワソワまではしませんが、
「今日は、嚥下の先生がくる日だからね」というと、昼夜逆転中でも頑張って訓練を受けようと起きて待っていて、たとえ寝てしまっていても口では訓練を続けたりと、彼なりのひたむきな頑張りが見受けられます。
そして、それをNさんは、細かく理解してくださっていました。

「こんにちは〜。〇〇病院のNです〜」

「すみません…30分前まで起きてたんですけど、眠ってしまってます。オヤジ〜、N先生来てくれはったでー」私

ピクピクッ

「あ、起きるかも?」私

「Fさーん、〇〇病院のNですぅ。眠かったら寝ててくださってもいいですからねー」

声がけも優しい。
でも、その声で起きなきゃとわかる父。他のことでは頑張らないこともあるけれど、嚥下訓練は頑張ります。

その週の体調や状況を先生に報告、嚥下の訓練を楽しみにしていたことを伝え、そっと二人にして部屋を出ると、先生の声だけが聞こえてきます。

「あー、そうです、そうです、いいですよー。頑張ってくれてはりますねー、いい感じです!」
とか…

「入れ歯、ちょっと洗いましょうか?」
とか…

とにかく、言葉使いや声色がですね、
よくある介護を受ける高齢者に対する感じとはちがうのです。

なんといいますが、伝えづらいです。
年長者に対する尊敬と、頑張る利用者さんへの思いやり、おじいさん扱いをしないカジュアルな心使いに、全く喋らないジジイを可愛らしいと捉えてくれる気持ちの余裕、そんなのがサラッと香るくらいのえ〜感じなんです。

そして、笑顔。

写真は、Nさんの表情を出せないのが残念なくらい、Nさんは自然に微笑みながら楽しそうにお仕事されます。
顎周りのマッサージをされていて、思わずオヤジが寝てしまったという素敵な訓練のワンシーンです。


毎度毎度、ちゃんと先生をお見送りしたい父ですが、半分の確率くらい寝落ちしてしまいます。


父の場合、眠っていてもうっすら起きていると私は思っています。熟睡ができないのです。なので眠ってしまってる時も周りの動きとか、音とか、雰囲気は察知しているようなんです。(高齢者は実は感じてる気がします、私は)


なので、父の場合は、眠ってしまっている時に、される行為や声がけなんかで、その人への信頼度を測ってるっぽいのです。

Nさんは、本当に笑顔で訓練を続けてくださいます。

「先程から、目を閉じられちゃったんですけど…舌のトレーニング、眠いのにめっちゃ頑張ってくださいましたー」

そう、Nさんが笑顔で声がけしながら訓練してくれているので、目が開かなくても頑張るんです(笑)


そんなこんなで半年が経ちまして…

何年も続くほかのリハビリに比べて、心を開く嚥下訓練のN先生なんですが…

5月で、移動でお別れになります。
本来、病棟の言語聴覚士さんでした。
が、ピンチヒッターで来てくださっていたそうで本業に戻られます。

私は会うかもしれませんが、父が会うことはまずもうないと思います。


3月末でお会いできなくなるかも!と勘違いしていたアホな親子は、5月と聞いて安堵しました。

父は、今回も相変わらず眠ってしまっていましたが、父の代わりに先生に熱い感謝の気持ちと父が他の方よりとても心を開いていたことをお伝えしました。

「え〜、そうなんですか?嬉しいです。Fさん、こう言ったら失礼ですが、可愛らしいというか、お茶目なところあるじゃないですか?うふふ」とNさん。

(そう、強面ですけど、そうなんですぅ!わかってらっしゃる!)

「喋らないし、仏頂面でしょ?塩対応ですみません。なかなか他の方々だと気持ちが伝わりにくいようでして…」

「そんなことないですよ。すごいわかりますよ」

「みなさん、もっと声を聞きたいと言われるんですけどね。たまにしか喋んないじゃないですかー」

。。。。


あー!わかったかも…

「先生、声を聞きたがらないですよね?」

「あー、そうですね。お顔の表情とか目とかでもお気持ちわかりますし。言語聴覚士だからかな。おしゃべりされない方多いのでそれでかもですね。特別、声に出してほしいとかはないですね。大体わかります。」


これだ…
これだったんだ…


父は、無理に意見を聞かれたくないのです。
言葉がうまく出そうな時は話すこともありますが、頭に浮かんだイメージが必ず上手に言葉にして出るとは限らないし。もともとおしゃべりではないし。グダグダ自分の話を聞かせるのも聞かせられるのも嫌いなんです。
まだ、沈黙の方がいいのです。


他の訪問の方々は、社交的な方もお相手されていますし、父はしゃべれない訳ではないので、希望や意見を聞きたい!と思ってくださるのです。

が、父にしたら、文句があったら受けてない!というくらい勝手もんなんで、話さないわけです。(なのでいつも私が通訳をしています)


だんだん後期も後期の高齢者になりますと、言葉がうまく出てきません。声がでないこともありますが、キーワードがひらめかないのが多いように思います。


質問する時に、
YES NO で答えられるようにしてもらえると、うなづきや瞬きで答えられますし、その積み重ねで信頼関係ができると、辿々しくても声に出したしはじめます。


何色がすきですか?
どれがいいですか?

など、2択以上や細かに質問されると父は困惑します。質問の意味がわからない時もあるのです。


私は、基本、
首振りで反応を見ますので、声を聞きたい!と思うことを考えもしていませんでした。


賑やかに喋りながらリラックスしたリハビリが必要な方もいるかと思いますが、、、

トークを要求されないリハビリを心地よく思う高齢者もいたりするのです。


なぜ、
Nさんは、父が気を許せる心地良い空気感を作りだせるのか?

は、

『喋らなくても、わかってくれている。』
という安心感からくる空気感だったんですねー

5月からは、新しい先生の同伴がはじまります。なかなかいい方との出会いの後なんで、新しい先生はプレッシャーだろうなぁとは思いますが、、、また、いいご縁だと嬉しいです。

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