夏の鉄塔(からだなし)
上手にいなくなりたいのに
いることが下手くそな自分が
少し先の未来で折れた電柱みたいに
くしゃっと地面に刺さっている
いなくなる練習をすると、
むこうでひぐらしのなく声がして
どうしようもなくここにいるのが
わかってしまった
いなくなる練習をしたいのに
いつか起こる邂逅のかずかずを
頼りにしてしまう うーん、
なかなかいなくなれなかった
白く 夕方の明るい月、水門があく
満潮のみなもに月がうつる
折れた電柱はじめんから引っこ抜けて
ただの周波数になる
水面に浮かぶとき、電柱は
からだを失った電波塔で 純粋な運動だ
月、
待宵草が、開くのを待ち
ふしぎにもっともそこにいた
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