ロレッタ
ついに欲しかったシャンプーを買った。
絵本の世界、夢の中のようなパッケージは何度でもうっとりしてしまう。
始めてロレッタを手にとった時は確か中学生で、「ママ、これかわいいね」
の一言で、内に秘めた「これ欲しいな~」が見え隠れするだけだった。
当時の私には到底手の出せる金額ではなく、ドラッグストアでその姿を見つ
けると、ちらちらと熱い視線を向けては「大人になったら買うんだ」と思っ
ていた。
ついに、ついに買ってしまった。
部屋の掃除をして、空気を入れ替えた。
何もかも今なら変えられる気がして、スッキリできる気がしていた。
お風呂に入るのが楽しみで、バイトが終わるのを心待ちにして何度も
時計に目をやった。
ついに使う時が来た。
テクスチャーはこれまでのシャンプーと何ら変わりない。
コンディショナーも同様だった。
あれ?あれれ??
匂いはもちろん悪くない。ローズの優しい香りだ。
あれ?
乾かすときになっても、昨日との違いはまるでない。
おかしい。もっと、なんかあるだろう、その、もっと…ね?
何を期待していたのか私自身もわかっていないが、
勝手に期待して残念がっている私がいた。
でも、全然悪い気は全然していなくて。
私は私が思っている以上に夢見がちで女の子だった。
かわいいものにキュンキュンしただけの、20歳。
ちょっと高いけど、過去の私がきっと喜んでくれるから
過去の私の夢をかなえてあげたいから
かわいいパッケージにビビッときたから
それだけで十分、ちょっとお高いシャンプーを買う理由なんて。
。
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