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忘れられない人

忘れられない人がいる。

正確に言えば、忘れたつもりでも顔を見れば、ちゃんと大切にしていた時の気持ちが思い出せる人がいる。

「女は上書き保存で、男は名前を付けて保存」

恋愛においては、よく言われるフレーズ。女じゃないし、僕自身が一般的な男かどうかもわからないから、これがあってるかどうかわからない。でも、僕に関しては当てはまる。とは言っても、名前を付けてもどこに格納したかわからなくなる人もいるから、なんとなく当てはまってるレベル。

先日も久々に忘れられない人のひとりと会った。いまや二人では会える関係性じゃないから、グループのあつまりの中で。

ふと顔を合わせた途端、その時の気持ちを思い出した。遠い昔の話のはずなのに、思い出してしまった。鏡は見てないけど、おそらく比喩じゃなしに目が変わってると思う。きらきらしていたはず。そわそわするあの感覚があった。相手にとっては迷惑な話。でも、僕だって思い出したくて思い出してるわけじゃないんだから許してよ。

そんなくだらない言い訳をする僕は彼氏にするには完全に事故物件。事故物件としての自覚さえある。大事なことが決められないし、なあなあにしがち。自分のことは棚に上げるくせに独占欲が強い。ちょっとしたことにも嫉妬して、おじさんになっても甘えがちだし、ホスピタリティーも弱い。それを直そうとしないのが一番の欠点なのはお気づきでしょ?それでもそんなダメな空気や、個性の強い容姿を好きになってくれる物好きがたまにいるから申し訳なさで潰されそうになる。付き合ったら、大変だよ、ダメンズウォーカー。やめといたほうがいい。メンヘラおじさんほど面倒なものはないよ。仲良かった友人の結婚報告を聞くだけで、嬉しいはずなのに、自分から何かが抜ける気がして、すこし悲しむようなメンヘラおじさんに成り下がってる自分が本当に嫌い。いつからこんな格好悪くなったんだろう。

そんなくだらない自分語りは置いておいて。

彼女はいつも笑顔がすてきな歳下の女性。彼女が笑ってくれると途端に幸せな気持ちに包まれて、色んな悩みがその場では吹っ飛ぶの。すごいよね。笑顔の下には巧妙な顔があるに決まってるんだけど、それでもいいなって思えるほど。ニコっとしてくれるだけで、もう一度見たいと目で追ってしまう。昔、恋人がいるときに知り合って、僕に恋人がいることを知って離れていった。あんなに毎日連絡を取り、毎週のようにあっていたのにぷつんと切れてしまった。すこしでも好意をもってくれていたのかな。お互い彼氏彼女がいる話もしなかったし、僕も彼女には彼氏ないしは彼氏っぽい人がいることを想像しながら会っていた。お互いに都合がいい存在だった。

だからこそ、いまは連絡を取らないようにしてるし、取ってもすぐ終わらせるようにしている。ぷつんと切れる手前から彼女の言葉に生気がなくなってしまったからだ。どんな言葉もどこか虚しくて、その字面をみるだけで悲しさが溜まっていった。すぐについていた既読も、今は時間が空いてからしかつかず。空気が読めない人間でもないので、そのあたりから連絡を取ることをやめた。

それでもコミュニティが近いので、年に2〜3度は顔を合わせる。彼女は顔を合わせる度に、ふと近づいて来て、一言僕に言う。

「元気してる?」

答えはどうだっていいんだと思う。彼女の中の定例文かもしれない。でも、必ず聞いてくれるその一言が楽しみで、その一言がうれしくて、僕は顔を、目を合わせるんだと思う。

その子は周りの男を虜にするようなマドンナ的存在のくせに、気さくで、気遣いも出来る。容姿だって、透明感があって、胃下垂で、申し分ない。それは恋に勝手に落ちる男が多いハズだよ。でも、そこが怖くて一歩が踏み出せなかった。たぶん、彼女が“恋人”になった途端、僕は必要のない嫉妬と延々と戦うことがわかっていたからだ。先述の通り、嫉妬に狂いがちのメンヘラおじさんには彼女は重かった。彼女のキャリアを考えると、絶対に多くの人に会った方がいいし、積極的に売っていく必要がある。止めちゃいけないのもわかっていた。

だけど、それを支えるほどの精神力を持ち合わせてない子どもな僕は怖じ気ついてしまった。だからこそ、お互い、恋人の存在を聞かない都合の良い存在でいたんだと思う。

人は「まずは付き合ってから考えろ」などとよく言うが、そんな簡単に片付けられるんならとっくにそうしてる。その一歩の踏み出し方がわからないから困ってたんだ。後ろを向くと、色んなものがついてくる世代なのは間違いない。

すこしの時間だけど彼女に会えて、彼女といつものやりとりができて、そんなことを思い出してしまった。

忘れられない人は、色んなことを思い出させる人だった。本当は昔みたいに気軽に冗談を言い合いたいし、笑いあいたい。連絡を取るのをためらうような関係なんて本当は嫌だ。だけど、今をしっかり受け止めたつもりの僕と彼女との関係はもう近づくこともないし、ましてや付き合うなんてこともないと思う。

だからこそ、彼女が「いい人と出会って、付き合って、結婚して、いい人生を送ること」をメンヘラおじさんは純粋に祈っています。きれいごとでもないし、気持ち悪いと思われてもいいから純粋に祈っています。

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たぶんこれを見る人たちは「くだらない」とか「気持ち悪い」とか言うと思うんだよね。でも、今まで何層にも壁を重ねて秘めてたこと。外にでてこなかっただけでずっと思ってたことだから、近しい気持ちを持ったメンヘラおじさんも実はたくさんいると思う。

そんな秘めてた気持ちをすこしでも外に出すこと(自分のための発散)がここでできればいいなと思います。アウトプットは精神衛生上いいと思ってるのでお暇な方はお付き合いください。

それでは


#エッセイ #コラム  #恋 #メンヘラおじさん #ひと夏の





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