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17回目 "The Bellarosa Connection" を読む Part 2。 Saul Bellow のこの作品ではイサム・ノグチが顔を出します。作品のテーマの一つはアメリカに辿り着いたユダヤ人がアメリカ化せざるを得ない苦悩です。

  前回の記事 "The Bellarosa Connection" (Part 1) では語り手の男が第二次世界大戦中には兵士としてアリューシャン列島にいた旨記載されていて日本がベローの頭の隅に居続けていることをにおわせていました。今回の Part 2では禅僧を思わせる男として彫刻家のイサム・ノグチがチラッと姿を見せます。ニュー・ヨークの歓楽街の成功者に雇われ旗振り役している芸術家といった扱われ方が何とも意味深長です。これに限らず Saul Bellow のこのコレクション中の他の作品や「ラベルスタイン」には日本が、何時も少しだけ顔を出します。いつも軽んじられた存在としてですが。

  Bellow の作品を読む時の私の楽しみの一つは、こね廻されて鎖のように長々と続く理屈・屁理屈です。Part 2 として今回読み進める部分にも次の文章が現れました。以下に引用し、和訳も添えておきます。

Then there was Sorella. No ordinary woman, she broke with every sign of ordinariness. Her obesity, assuming she had some psychic choice in the matter, was a sign of this. She might have willed herself to be thinner, for she had the strength of character to do it. Instead she accepted the challenge of size as a Houdini might have asked for tighter knots, more locks on the trunk, deeper rivers to escape from.

from:  Page 51, Saul Bellow Collected Stories, a Penguin Book

  ソレッラの存在がありました。外から彼女を見ているとこの女性には普通の女性には必ずありそうな外観的特徴がないことに唖然とさせられます。事実、彼女は並の女性ではありません。そんな彼女の特徴の一つが肥満した身体なのです。この肥満体形は敢えてそうして置こうと、彼女の風変わりな気質故に彼女自身で選んだのです。彼女は大変に意志の強い人間であるからして、もっとほっそりとした体つきでいようを決心してさえいたらほっそりとした体形を維持できたであろうと思えます。それにも拘らず、このような大きな身体の持ち主であることを、その重みを背負って生きることを敢えて希求したのでした。それはあのホーディニと称した「束縛すり抜け技」の芸人がもっと固くロープを結べだの、閉じ込めたトランクの鍵の数を多くしろだの、更にはそれを川に沈めるに当たりもっと深い処に沈めろなどと要求したようなものでした。  (以上)

  このような物書きの技に嵌まって楽しんでいる内にこの物語の何人もの登場人物、そのそれぞれが、私の近所に住まっていて、三日にあげく顔を合わせ言葉を交わした人の如く現実味を持って私の頭に入り込みます。

<Study Notes の無償公開>
  今回は "The Bellarosa Connection" Part 2、原書 Pages 51 - 65 に対応する Study Notes です。