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目指すは“不動産のメルカリ”、CFO江藤がNOT A HOTEL2nd CEO就任

2024年1月16日、NOT A HOTELはリゾート会員権や別荘のセカンダリー(中古)取引プラットフォームを展開するNOT A HOTEL2ndを立ち上げた。それに合わせて、創業メンバーのひとりとして経営の一翼を担ってきた江藤大宗がCFOを杉本拓也(ENECHANGE株式会社 元執行役員CFO)へと後継し、NOT A HOTEL2ndのCEOに就任する。

◆NOT A HOTEL、グループ会社「NOT A HOTEL2nd」を立ち上げ

◆NOT A HOTEL、杉本拓也を執行役員CFOに選任

以前、江藤にインタビューした際には、NOT A HOTEL創業からの3年間を振り返りながら、“起業家ではない創業者”という立場から経営に関わる難しさや覚悟、“マスターアプリ化”構想をはじめとした今後の事業展開など、さまざまなトピックについて語ってもらった。

そんな江藤が次のチャレンジとして選んだのが、セカンダリー取引プラットフォームの構築だ。江藤自ら挑戦を志願した背景に迫ると、NOT A HOTELの未来の輪郭、そして日本の将来像が見えてきた。


“負”動産から“富”動産へーー日本の価値を顕在化するために


ーまずは、NOT A HOTEL2ndを立ち上げた背景について伺えますか。

江藤:前回のインタビューで、NOT A HOTEL創業時からCFOとして挑戦してきたビジネス、"起業家ではない創業者としての葛藤、人生を懸けて取り組もうとしている「第二次日本列島改造計画」について話をさせていただきました。記事を通じて、わたし自身の考えを多くの方に知っていただけたと同時に、前回のnoteにいただいた反響をベースに社内でも議論することができました。いずれ記事に書かれてあるすべてを実現するつもりですが、同時に優先度をあげるべき事業も浮かび上がり、それが今回発表した「セカンダリー取引プラットフォームの構築」です。

ー何を目指すための、セカンダリー取引プラットフォームなのでしょうか。

江藤:シンプルに言うとNOT A HOTELをはじめとした不動産をスムーズに売り買いできるプラットフォームです。ですが、目指すところはそれだけではありません。

ーというと?

江藤:たとえばバブル期に、リゾート地を中心に建てられた不動産は耐用年数よりも短い期間で役割を終え、今なお放置され続けている現状があります。要因はさまざまあると思いますが、プライマリー(初期の販売)の売りやすさを中心に市場が形成されていて、長期的な価値の維持、向上を見据えた2次流通以降への意識が希薄だったことが大きな要因だったのではないかと考えています。

江藤 大宗:慶應義塾大学卒。JPモルガン証券にて投資銀行業務に従事。M&A、株式引受業務の実務を経て、エグゼクティブ・ディレクターとしてインフラセクター企業を担当。2020年8月NOT A HOTELに参画。執行役員CFOを経て、2024年1月、NOT A HOTEL2nd CEOに就任。

ー市場での評価基準、買い手の目線の置き所が変わると、価値の付き方も変わってくると?

江藤:そうです。地方の不動産の価値の付き方が変わってくると、日本全体の価値の測り方もGDP(国内総生産)の規模や成長率という短い期間での損得を見るP/L(損益計算書)ベースから、これまで積み上げてきたものを評価するB/S(貸借対照表)目線に変わっていくのではないかと。単なる“不動産”ではなく、それ以上の価値を市場から得ているNOT A HOTELを軸に評価基準を明確化することで、価値が低く見積もられている“負”動産が、”富”動産になっていくための土壌を整えたいーー評価基準をつくることは、決して容易いことではありませんが、不動産やその土地、人、そして地域に根付く文化など、さまざまな要素が溶け合うことで、より価値が高まるはずだと考えています。

ーその土地に根付く、人や文化を含めた“価値”を大切にすることで、地方の価値を残すだけではなく、高めることが狙いなんですね。

江藤:NOT A HOTELが全国に広がることで、地域の臍(ヘソ)の役割を果たし、周囲が活気に満ちた状態になることーーこれは目指したい姿ですね。もちろん、わたしたちが地域を大きく変えられるとは思っていないですし、そもそも変えたいとも思っていません。その地域には、すでに長く住んでいる方々が居て、その方々の暮らしがあり、文化があります。わたしたちのビジネスは、人が地域を訪れるきっかけづくりに過ぎないんです。

ただ、一般的に開発後の地域は時間の経過とともに劣化が進み、土地が持つ魅力が弱まっていくことが多いのが現状です。だからこそ、NOT A HOTELを各地につくることで拠点と拠点、地域と地域をつなぐことがポイントになる。そうすることで地域を孤立させず人やお金が回り続けるサイクルをつくることができますし、この流れこそ“正のチェーンリアクション(連鎖反応)”を起こし、日本中のさまざまな地域が再び活気に満ちていくはずだと考えています。

不動産の価値を適切に評価するーー世界観の追求とフェアなプラットフォームへ


ー先ほど、「NOT A HOTELを軸に評価基準を明確化する」とありましたが、セカンダリー取引プラットフォームに“今”挑戦する理由は?

江藤:NOT A HOTELでは物件をお引き渡ししてから、セカンダリー・マーケットを開放するまでに3年の期間を設けています、これはプライマリーとセカンダリーの需給バランス調整という側面もありますが、それ以上にキャピタル・ゲイン(資産の値上がりによって得られる利得)狙いの投資商品としてでなく、オーナーの方々にNOT A HOTELをできる限りご利用いただきたいという想いがあります。NOT A HOTELの最初の拠点であるNASUAOSHIMAの開業から1年以上が経過し、初期のオーナーのみなさんと約束した「3年後」まで2年を切りました。このタイミングでNOT A HOTEL、そしてセカンダリーの新たな領域を切り拓いてみようと決心したんです。

ーNOT A HOTEL以外の商品も豊富に揃えていくイメージなのでしょうか?

江藤:まずはNOT A HOTELの取引から始めていこうと思っていますが、将来的には他のリゾート会員権や別荘も取り扱えるようにしていきます。NOT A HOTELの累積契約高は142億円、オーナー数は402名(2023年12月末時点)と、日本のリゾート会員権、別荘市場の規模においては、ごくごく限られたものです。そのため、取引プラットフォームを構築していくには自社以外の商品を巻き込み、取引量を増やしていく必要があります。そこでポイントになるのが「NOT A HOTEL独自の世界観の追求」と「周囲を巻き込んでいくプラットフォームの確立」をいかに同時並行で実現するか、という点です。


人と人、地域と地域を結ぶ“結び目”、それによって生まれる連鎖反応(チェーン・リアクション)という意味がNOT A HOTEL2ndのロゴに込められている

ーあえて会社を分けて経営する理由はそこにある?

江藤:そうですね。NOT A HOTEL以外の商品を取り扱っていく前提として、第三者としてフェアな立場を取りやすくする点が大きいです。プラットフォームのうえで商品はフェアな基準で比較されるべきで、プラットフォームが整備されると良い商品が、適切に評価される環境がつくられると考えています。初期のNOT A HOTEL2ndでは、社名の通りNOT A HOTELを中心とする商品を扱いますが、徐々にグループ外の資源(商品のみならず人材や資金を含む)を取り込んでいく会社として、幅広いプラットフォーム構築にチャレンジする予定です。

2022年11月に青島、同年12月に那須が開業。2023年11月には福岡が開業し、今後も北軽井沢やみなかみ、石垣、瀬戸内など、新たな拠点の開業も控えている

目指すは“不動産のメルカリ”ーー圧倒的なUXと新たな価値基準

ー従来のセカンダリー取引プラットフォームには、どんな改善点やポテンシャルがあるのでしょうか。

江藤:まず現状、取り扱う商品が1棟/1室単位よりも更に小口化された不動産の取引プラットフォームは存在していないと認識しています。共有持分(複数人で1棟、1室を保有する形態)として小口化された商品は担保価値を見出しづらく「事業者が買い戻す」もしくは「関係間で取引される」ことがほとんどです。

加えて、リゾート地に多い別荘は、(特定の地域を除いて)都市部と比較すると極端に流動性が低くなります。市場、プラットフォームが存在しないことで、日本のリゾート会員権や別荘(一部を除く)は購入した瞬間から値崩れが始まり、10年も経過するとあまり値段がつかないものがほとんどです…わたしたちはこの常識を超えてみたいと本気で考えています。

一部、別荘が活発に取引される地域は、キャピタル・ゲインへの期待値で市場が形成されていると感じています。特定のオーナーが購入価格よりも高い価格で売却できる可能性があっても、その高い価格で購入した誰かが損をするかもしれません。従来通りのマーケットのモデルは、いわば“ババ抜き”に近い状態かなと…このモデルを続けていても、新たな価値は生まれないのではないかなと考えています。

ーNOT A HOTEL2ndのマーケット設計に、その思想はどのように反映していくイメージですか?

江藤:「一時的な価格の上昇のしやすさ」ではなく「長期的な価格の底抜けしづらいこと」を意識しようとしています。NOT A HOTELのビジネスをつくり始めた当初から意識してきたのはプライマリーの売りやすさではなく、2次流通以降をベースに長い時間軸を見据えたモデルづくりです

NOT A HOTELの契約は30年間を基本とし、借地期間の50年間を見据えています。わたしたちは50年間、NOT A HOTELを使ってもらった後に価値が残るモデルを構築し、次の世代にバトンを繋いでいくことを目指しているんです。つまり建物だけではなく、その土地の価値を高め続けることが重要になります。なので、わたしたちのモデルでは利回りをはじめに返しすぎず、物件側に再投資していくことがポイントになるわけです。

ー人から人へモノが渡っていったとしても流動性があることで価値が継続的に生まれ続けるわけですね。

江藤:たとえるなら、“不動産のメルカリ”のようなイメージです。メルカリの凄さのポイントは二つあると感じています。まずは「モノの売り買いを滑らかにした」という点。メルカリは他のサービスと比べ、これまで面倒とされていた出品・購買から配送まで、すべて“圧倒的簡単”に実現できるようになりました。NOT A HOTEL2ndも、“ワンタップで売り買いできる別荘”のようなUXーーこれを目指したいんですね。

そしてもう一つが「モノに新たな価値を生み出した」という点です。メルカリでは、これまで価値が測りにくかったモノ、あるいは捨てられてしまっていたかもしれないモノが「新たな価値」として高額で取引されることもあります…まさにメルカリというマーケットプレイス(新たな市場)が価格を決めているんですよね。NOT A HOTEL2ndが描いているセカンダリー・プラットフォームの“価値基準”もこれに近いと考えています。

ーメルカリでの“値付け”も市場との写し鏡とも言えますよね。

江藤:そこで重要になるのが、マーケットプレイスとしての“透明性”です。自分たちの物件が底抜けしていないことをみなさんが知ることは信頼を得るうえで一番大切なので、そのためにも売りたい人と買いたい人が、それぞれの希望価格を提示し、常に市場動向が可視化される“ビッド・オファー形式”で取引したいと考えています。NOT A HOTEL2ndでは、より安心して取引できる状態を目指したいですね。すでに、「NASUの「MASTERPIECE」を定価以上で買い取りたい」というお問い合わせもいただいていて、セカンダリーの可能性を沸々と感じているところです

100年間メンテナンスフリーのサステイナブルなコールテン鋼を外装材に採用した、NOT A HOTEL NASU MASTERPIECE

CFOからCEOへーー変わる覚悟と変わらぬミッション

ー最後に、NOT A HOTEL2ndへの意気込みを聞かせてください。

江藤:前回のインタビューを受け、初期からの事業を応援してくださっているオーナーや投資家の方々から数多くの温かいメッセージをいただきました。創業からまもなく4年。創業当時は数人で立ち上げた事業も、今では多くの仲間がNOT A HOTELに参画し、徐々に自分たちだけの夢や事業ではなくなっていると感じています。同時に、NOT A HOTELが広がった後の世界に対して、想像以上に多くの方が期待を寄せてくださっていることにも気付きました。

NOT A HOTEL2ndの立ち上げに関して「タイミングとして今か?」という問いは最後まで自分の中に残りましたが、CFOを引き継いでくれる杉本さんの参画や、卒業生を含めたNOT A HOTELのメンバーが、最後は次のチャレンジをあと押ししてくれました。NOT A HOTELは今後、より勢いを加速しながら拠点を広げていきます。プロダクトができていくペースに遅れを取らないよう、全速力でセカンダリー・プラットフォームを創っていきたいと思います。

ーNOT A HOTEL2ndのCEOとして江藤さんがどんな世界をつくるのか、楽しみです。

江藤:NOT A HOTELのCFOとして考えてきたこと、そしてNOT A HOTEL2ndのCEOとして考えていること…たとえ役回りが変わったとしても、掲げる構想は一貫しています。むしろ構想をより早く実現するために、役回りを変えたと思ってもいいくらいです。

NOT A HOTELが築いてきた信頼や実績を、NOT A HOTEL2ndで構築するセカンダリー・マーケットによって、より広げていくーー最終的には“すべての人にNOT A HOTELを”というグループミッションにつながるので、まずはその一点だけに向かい突っ走りたいと思います。

採用情報


現在、NOT A HOTELでは多方面で採用強化中です。採用サイトにてカジュアル面談も受け付けておりますので、気軽にご連絡ください。

イベント情報


コーポレート部門の採用強化の取り組みとして、採用イベントを1月31日(水)に開催します。これまでのコーポレート部門のチャレンジから、今後の新規ビジネスまで、多様なトピックについてお話しさせていただきます。


STAFF
EDIT/PHOTO:Ryo Saimaru


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