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熱意が人とプロジェクトを動かす、建築PMの創造力

建築が難しい土地に、これまでにない建物を、圧倒的に短いスケジュールでつくる。この3つは、これまでにない興奮や感動を生み出そうとするNOT A HOTELにとって欠かせない要素だ。それらを実現しようとすれば常識を超えなければ立ちゆかない場面が、幾度となく押し寄せる。

隈研吾建築都市設計事務所に15年勤め、さまざまな建物の意匠設計に従事してきた須磨哲生。NOT A HOTELでは設計士かつプロジェクトマネージャー(以下、PM)として、 KITAKARUIZAWA「IRORI」や、 2023年12月に販売したISHIGAKI「EARTH」 をリードしている。これまで手がけたプロジェクトを振り返り、NOT A HOTELの設計士でありPMでもある須磨の仕事の本質に迫っていく。

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一つの手段ですべての課題を解決するアイディア


ーKITAKARUIZAWA「IRORI」の建設予定地を初めて訪れたときの感想を教えてください。

須磨:映画『もののけ姫』の舞台のような世界で、未開の土地そのものでした。でも、ごつごつした大きな岩の上にあえて建物をつくったら、別荘地全体を見下ろせる絶景が手に入る。これはいままでにないものができるだろうなと、ワクワクしたのを覚えています。周りに広がる原始の森を360度見渡せるように、どうにかしてガラスの箱のような建物をつくれないか…とアイデアを詰めていきました。

須磨 哲生:プロジェクトマネージャー / 一級建築士。慶應義塾大学大学院修了。隈研吾建築都市設計事務所にてホテル、別荘、市庁舎、道の駅などの意匠設計に従事。22年5月NOT A HOTEL参画。

ー未開の土地だからこその難しさがあった?

須磨:印象的だったのが、建物へ飛んできた鳥がガラスに気づかずに衝突してしまう「バードストライク」問題です。深く思い悩んでいたとき「ガラスの奥に木の壁を立てたらどうだろう」というアイデアが浮かんできて。眺望はしっかり保ちつつ、木が入ることでデザイン的にも機能的にもあたたかみが増す…。さらに全面ガラスよりコストも下げられて、視認性は上がりバードストライクにも配慮できる。すべての課題が一気に解決できるぞと、非常にゾクゾクしましたね。

NOT A HOTEL KITAKARUIZAWA「IRORI」

常識を超える、思いもよらない発想


ー2023年12月に販売開始したISHIGAKI「EARTH」のプロジェクトも、同様の難しさがありましたか。

須磨:ISHIGAKIの敷地には、これまで住んでいた方が丁寧に管理してきた庭や木々があったんです。美しい海と、そこに面する広大な庭、そしてその方達の想いを引き継いで、新たな未来につながる建物をつくりたいと考えました。いい意味で手つかずの森だったKITAKARUIZAWAとは別の難しさがありましたね。初期計画のコストも予算の2倍で…頭を抱えました。

ー常識的に考えれば、コストを削るためには建物を小さくするのがセオリーですよね。

須磨:でも、そうするとメインコンセプトである「EARTH」を体現し、地主さんの想いをつないでいる中庭も小さくなってしまうんです。そんな時、濵渦さん(NOT A HOTEL CEO)から「この建物のコンセプトはEARTHなんだから、建物も中庭も大きくしよう」という逆のアイデアをいただいて。「そんなことしたら建築費がさらに増えちゃいますよ」と思ったけれど、建物の外形を1.5倍にしつつ、すり鉢状に中心部には大きな穴を開けて中庭をつくってみたら、工事をする面積が逆に減ったんです。

NOT A HOTEL ISHIGAKI「EARTH」

ーまさに逆転の発想ですね。

須磨:コストを下げるだけでなく、時には大きな方向転換もしながら設計サイドと一緒につくり上げていく。NOT A HOTELらしいスタイルです。あくまで僕らの仕事は「NOT A HOTELをつくること」なので、プロジェクトをスケジュール通りに進めながらも、妥協せず納得のいくものをつくることが何よりも大事。そのためには、担当者同士が自分の領域を決めつけず、お互いのスペシャリティを持ち寄って仕事をする必要がある。最後には、(設計を依頼した)藤本壮介建築設計事務所とNOT A HOTELの世界観がうまく溶け合い、“EARTH”という建築が生まれたんだと思います。

プロジェクトにもっとも熱意を持った存在でいたい


ーこうしたプロジェクトを、須磨さんはどうして達成できたと思いますか。

須磨:プロジェクトへの「熱意」は意識していますね。関係者にはそれぞれスケジュールや事情があるから、もっとも熱意を持っている人間だけが状況を変えられるんじゃないかなと。たとえば施工者さんの「前例がないから、このスケジュールではできない」などと言う気持ちも痛いほどわかるんですよ。そこで僕らは無理強いをするんじゃなくて、相手の立場に寄り添って考える。お互いの言い分をクリアできるところまで深掘りしていく進め方は、強く意識しました。ただ、入社当時は不慣れで、かなり苦労しましたよ。

ーターニングポイントになった機会があったのでしょうか。

須磨:濵渦さんに「PMの仕事は“調整役”じゃなくて“終わらせる役”なんですよ」と言われたことがあって。「関係者の意見をすり合わせ、最大公約数を導く役割」と捉えていた僕にとって、ハッとした瞬間でした。それ以降、たとえ「嫌われ役」になってもいいから、すべてを意思決定しにいくくらいの意識でやらないと、プロジェクトをやり遂げられないと考えるようになったんです。

ーPMとしての覚悟を決めた瞬間でもあったんですね。では最後に、2024年の“超えていきたい常識”を教えてください。

須磨:“チームの常識を超えていく”ですかね。建築を考える前段階からコミットしていくような仕事をしたいです。誰かに土地を見つけてもらってから考える受動的な仕事だけじゃなく、土地を自分たちで探したり、土地がなくてもいい企画を生み出したりできるような建築チームにしていきたい。多様なバックグラウンドを持つメンバーがどんどん増えているから、全員が一体となればすごいものが生まれるんじゃないかと感じているところです。ワンチームで、これからも常識を超えつづけていきたいですね。


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TEXT:Sakura Sugawara
EDIT/PHOTO:Ryo Saimaru

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